ある編集部から「2025年を代表する俳優をあげてほしい」と言われて真っ先に思い浮かんだのは妻夫木聡。朝ドラ『あんぱん』(NHK)でサンリオ創業者がモデルと言われる八木信之介を演じて強烈なインパクトを放ったあと、今秋は日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)で主演を務めている。
そんな妻夫木の出演作で「今、もう一度見たい」と思ったのが、2005年放送の『スローダンス』(フジテレビ系、FODで配信中)。同作は月9で放送されたラブストーリーであり、近年ドラマではなかなかお目にかかれない深津絵里が相手役を務めたほか、今年さまざまな形で話題を集めた俳優たちが数多く集結していた。
あらためてどんな作品だったのか、ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。
ブレーキを踏む男と踏まない女
物語は主人公の芹沢理一(妻夫木)と牧野衣咲(深津)がカフェで口論をはじめるところからスタート。細かいところにこだわる器の小さそうな男と、口論相手だけでなく店員にも説教する面倒くさそうな女……「美男美女ながら魅力を感じない」というマイナスの状態で幕を開けた。
ほどなく衣咲は理一が教官として勤務する自動車学校に通う生徒であることが発覚。加えて高校時代に教育実習生として彼の人生に影響を与えたことも明らかになる。まったく恋愛感情がなく、時に傷つけ合うことすらある2人の恋心はどのように芽生え、育っていくのか。視聴者はタイトル通り「スロー」な恋の行方を見守る楽しみがあった。
当作を見る上でのベースとなるのは、2人の対照的なキャラクター。理一は「ゲーム、サッカー、映画監督の夢など、常に出来のいい兄のマネをして過ごしてきた」「大学時代の恋人・広瀬歩美(小林麻央)を振られるの怖くて、他に好きな人がいるのか確かめずに自分から振ってしまう」などの受け身で臆病な人柄が描かれた。
そんな人柄だからこそ心に響いたのが、教育実習性の衣咲が最後に訴えかけた言葉。理一は「最後まで希望を捨てないで。あきらめたらそこで試合終了。あきらめたらその瞬間に夢は終わってしまう」という言葉で初めて映画監督という夢を追いかけることを決意していた。
一方、衣咲は自分にも周りにも本音をズバズバ話す率直な人柄。自分の言葉が理一に影響を与えたことを知ると、「『スラムダンク』だわ。漫画からパクったんだった。余計なこと言ったんだね」。さらに失恋後に「昔は失恋すると食欲なくなって、しばらく喉元何も通らなかったんだよ。でも今は泣いてるとお腹へってきちゃって。それに涙の量が減ってきて気づくと涙出てないの」と話すシーンもあった。
ブレーキを踏んでばかりの理一と、ノーブレーキで走りがちな衣咲。真逆の人柄だからこそ互いへの言葉は踏み込んだものになりやすく、ボロボロになりながらも距離を近づけていく。いつしか「それって私のこと口説いている?」「口説いていません」という軽いやり取りは消え、言葉にならない思いが育まれていった。
