潰瘍性大腸炎は、大腸にびらんや潰瘍ができる原因不明の病気です。発症数は年々増加しており、働き盛りの年代の患者さんも多くいます。完治することはなく日常生活にも影響が及ぶものの、症状が軽いと痔や胃腸炎などと思い込んで放置されがちです。ここでは、潰瘍性大腸炎の初期に現れるサインと受診の目安を紹介します。
潰瘍性大腸炎とはどんな病気?
大腸の粘膜に炎症が生じてびらん(粘膜がはがれた状態)や潰瘍(粘膜の下までえぐれている状態)ができます。炎症は持続性があり、直腸から起こることが多く、やがて口側へ広がっていきます。大腸の中で過剰な免疫反応が起こり、本来外敵を攻撃するはずの免疫細胞が大腸の細胞を攻撃してしまう自己免疫性疾患です。原因ははっきりとわかっておらず、遺伝的要因と環境要因が重なって発症すると考えられています。
難治性で、いったん発症すると完治することはなく、生涯にわたり経過をみていく必要があります。ただし、炎症が続くばかりではなく、一時的に良くなる「寛解」と再び悪化する「再燃」を繰り返すのが特徴です。長期にわたる療養が必要となり、国の指定難病となっています。治療は薬剤による内科治療が基本で、重症の場合は手術を行うこともあります。手術が必要となるほどの重症例を除けば、大半の人で生命予後は健常者と変わりません。
日本では1980年代から患者数が増加しており、2023年時点では約31.7万人と推計されています。これは2015年の約1.4倍にあたります。男女差はほとんどなく、乳幼児から高齢者まで幅広い年代で発症が見られます。
初期にみられる症状
初期症状は血便・下痢・腹痛が代表的です。特に血便や粘血便が続くときは注意が必要です。
血便
腸管が傷ついて出血するために血便が見られます。直腸から起こることが多く、鮮やかな赤い血が便に混ざるのが特徴です。軽い場合は紙に血がつく程度のこともあります。血液と粘液が混ざって赤いゼリー状になる粘血便が出ることもあります。
下痢
大腸の粘膜が炎症を起こすと、水分を吸収できなくなったり浸出液が出たりして便の水分量が増えます。また、腸の蠕動運動が活発になることで下痢を起こします。
腹痛
炎症が起こる直腸付近や肛門の内側に痛みが出ることがあります。腹部全体が痛む場合もあり、腸がけいれんするように収縮して激しい痛みが起こることもあります。
その他の症状
便意があるのに便が出ない「しぶり腹」も特徴のひとつです。便が溜まっているわけではなく、炎症の刺激で腸が便を出そうとするために起こります。
潰瘍性大腸炎は見逃されやすい
潰瘍性大腸炎の初期症状である血便は痔、下痢や腹痛は胃腸炎や過敏性腸症候群、しぶり腹は便秘と誤解されやすいものです。特に軽症の場合は、こうしたありふれた消化器の不調と思い込んで見逃されることがあります。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すため、一時的なものだと勘違いされるケースも少なくありません。
早期に受診すべきサイン
診断が遅れて重症化すると、発熱・体重減少・貧血などが現れます。さらに合併症として皮膚・関節・眼などに炎症が起こることもあります。
受診の目安として、「血便を伴う下痢」がある場合は消化器内科を早めに受診しましょう。特に、数日経っても改善しないとき、症状が悪化するとき、または繰り返すときは放置せず受診してください。
早期診断・治療のメリット
潰瘍性大腸炎は一度発症すると長く付き合う必要がある病気です。日常生活への影響も大きいため、早い段階で病気の性質や治療方針を理解しておくことが大切です。
治療の目的は、まず炎症を抑えること、そして炎症が治まった状態(寛解)をできるだけ長く維持することです。治療を受けても完治はしませんが、早期の治療開始によって重症化や合併症を防ぐことができます。また、潰瘍性大腸炎は将来的に大腸がんのリスクが高まることが知られていますが、炎症を適切にコントロールすることでそのリスクを低減できます。炎症がない状態を維持できれば、健康な人とほぼ変わらない生活を送ることも可能です。
気になる症状は早めの受診で重症化を防ごう
潰瘍性大腸炎は、初期症状の段階ではほかの病気と勘違いされやすい病気です。診断には時間がかかることもありますが、早期に受診することで症状の悪化を防ぎ、生活への影響を小さくできます。
この病気でなかったとしても、血便を伴う下痢は何らかの治療が必要なサインである可能性があります。気になる症状が続くときは、早めに消化器内科を受診しましょう。
最後に潰瘍性大腸炎の初期症状に関して、消化器内科の専門医に聞いてみました。
潰瘍性大腸炎は若年成人(20~40歳代)で発症しやすいですが、近年高齢発症の方も増えつつあります。一等親に潰瘍性大腸炎の患者さんがいると、発症リスクが2~4倍になるといわれています。珍しいことに「非喫煙者」や「禁煙した人」で発症しやすいです。
痔核出血は鮮紅色で便に血液が混入することは少ないですが、潰瘍性大腸炎は鮮紅色から暗赤色便で、性状は軟便から下痢便、しばしば粘液や膿が混入します。また、血便や下痢が2週間以上続く場合は、胃腸炎ではない可能性があるため医療機関受診をおすすめします。
腸の健康を守るためには、十分な睡眠、適度な運動、規則正しい食生活、バランスの良い食事が重要です。特に、赤身肉や加工肉、脂っこい料理を控え、魚や野菜、果物を多めに摂取することを心がけましょう。

