潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる指定難病です。

発症のピークは20代とされていますが、治癒しにくい病気であるため、発症後に年齢を重ねた患者も多く、現在は40代以降の患者数も増えています。そのため働き盛り世代にも身近な病気となり、「ストレスが関係しているのでは?」と心配する人も少なくないようです。

実際にストレスとどのような関連があるのか、最新の知見を踏まえて解説します。

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潰瘍性大腸炎とはどんな病気?

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気です。おもな症状は血便と下痢、腹痛。悪化すると貧血や体重減少、発熱が起こることもあります。

難治性の病気で、一度発症すると、症状が治まる「寛解」と再び悪化する「再燃」を繰り返しながら、生涯にわたり付き合っていくことになります。治療は炎症を抑え、寛解の期間を長くすることを目的に行われます。

潰瘍性大腸炎は、大腸に慢性的な炎症が起こる指定難病です。かつては欧米に多く、日本では珍しい病気とされていましたが、1980年代以降、国内の患者数は年々増加しています。2023年時点で約30万人と推計されており、乳幼児から高齢者まで幅広い年代で発症がみられます。

発症のピークは20代とされていますが、近年は40代以降の患者も増加傾向にあり、働き盛り世代にも身近な病気となっています。

ストレスと潰瘍性大腸炎は関係ある?

働き盛り世代は仕事のストレスもたまりやすい年代です。また、現役世代の著名人が潰瘍性大腸炎の闘病中であることを公表する例も多いことから、ストレスとの関連性を考える人も多いようです。実際にストレスの影響はあるのでしょうか。

潰瘍性大腸炎は、免疫機能の異常により、本来はウイルスや細菌などの外敵を攻撃する免疫細胞が、自分自身の腸の粘膜を攻撃してしまう自己免疫性疾患です。なぜそうなってしまうのか、その原因ははっきりとわかっていません。遺伝的な要因と環境の影響が重なって起こると考えられています。

そのため、精神的なストレスは直接的な原因にはなりません。ただし、ストレスはさまざまな病気を悪化させることが知られており、潰瘍性大腸炎も肉体的・精神的なストレスによって再燃する可能性があるとされています。

また、近年の研究では生活習慣の中で「不眠」がこの病気の発症・再燃リスクとなる可能性が指摘されています。ストレスは不眠の一因にもなるため、まったく無関係とはいえません。

ストレスと消化器症状の関連

ストレスがあるとき、胃もたれや腹痛、下痢を経験する人は少なくありません。ストレスと消化器にはどのような関係があるのでしょうか。

腸管は消化器のひとつですが、単に食べ物を消化・吸収するだけの器官ではありません。体内の免疫細胞の約7割が集まっている免疫器官でもあり、神経細胞の数も脳に次いで多いため「第二の脳」とも呼ばれています。

脳と腸は相互に影響しあう関係にあり、この関係は「脳腸相関」と呼ばれます。情報伝達を担うのはホルモンや自律神経。脳がストレスを感じるとそのバランスが乱れ、腸の動きが早くなったり遅くなったりして、腹痛や下痢といった症状が起こります。ストレスが原因で発症する代表的な腸の病気として、腹痛や下痢、便秘を繰り返す過敏性腸症候群があります。

逆に、腸内環境の変化など腸の不調が脳に影響し、ストレス反応を引き起こすこともわかっています。

ストレスを減らす工夫

ストレス対策の第一歩は、まずストレスのサインに気づくことです。ストレスが多い現代社会では、気づかないうちにストレスが蓄積していることもあります。

お腹の症状が出やすい人は、食欲不振や過食、腹痛、下痢、便秘が起こったとき、「ストレスサインかもしれない」と考えて早めに休むことを心がけましょう。体を動かす、音楽を聴くといったセルフケアはもちろん、友人や家族、相談できる人に話を聞いてもらうのも効果的です。仕事に関するストレスは、職場に相談窓口や産業医が設けられていることもあります。ひとりで抱え込まず、そうしたサポートを活用してみましょう。

また腸の健康が脳に影響することもあるため、お腹の調子を整えることも意識してみましょう。栄養バランスのよい食事、適度な運動、しっかりとした水分補給は腸内細菌のバランスを整える助けになります。香辛料やアルコールなど腸を刺激する飲食物を控え、十分な睡眠をとることも、潰瘍性大腸炎の寛解期に大切です。

ストレスとの上手な付き合い方を考えよう

ストレスは潰瘍性大腸炎の直接の原因ではありませんが、寛解期からの再燃を誘発する要因になることがあります。
ストレスを完全に避けるのは難しいものの、うまく付き合っていくことはできます。心配しすぎず、自分なりのリフレッシュ方法を見つけて、病気と共存していきましょう。

最後に潰瘍性大腸炎と働き盛り世代に関して、消化器科の専門医に聞いてみました。

潰瘍性大腸炎は根治が難しく一生かかわることとなる病気です。ストレスにより潰瘍性大腸炎が再燃する場合がありますので、ストレスとうまく付き合っていく自分なりの方法を見つける必要があります。

また、ストレスは機能性胃腸症や過敏性腸症候群、胃食道逆流症、胃・十二指腸潰瘍などとの関連が指摘されています。その症状は腹痛や下痢、便秘、胃もたれ、胸やけなどですが、胃がんや大腸がんによる症状と見分けがつかないこともありますので、不調が続く場合には自己判断せず医療機関を受診してください。

ストレスが多い働き盛り世代は、ストレスにより自律神経が乱される機会が多いため、規則正しい生活、バランスの良い食事、良質な睡眠、適度な運動を意識して生活することで、自律神経が乱されにくくなります。

東 玲治(ひがし れいじ)先生

一宮西病院 消化器内科部長、消化器内視鏡センター長
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医