日本テレビ系ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(毎週水曜22:00~)の第6話が、12日に放送。マイナビビュースでも様々なドラマの取材を行う「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏がレビューした。
本作は、誘拐事件をきっかけに、人質の結以(桜田ひより)と誘拐犯の大介(佐野勇斗)が、なぜか2人で逃避行を続けることになるというヒューマンミステリー。
2人が逃げる理由を“誰かを救うため”と繰り返してきたが、物語も折り返し、後半に向かう今回の第6話は、それが単なる劇中での救済にとどまらず、視聴者、さらには“今を生きる社会”そのものにも向けられた壮大なメッセージを放った回となった。
これまで結以と大介は、ネグレクトに苦しむ少年・星(阿部来叶)を、本当の愛を求める孤独な女性・莉里(影山優佳)を、人並みの青春を知らずに生きてきた犯罪者・ガン(志田未来)を、“救う”存在として描かれてきた。
では、今回救われたのは誰だったのだろうか。
第6話では、結以が高熱で倒れたことで、大介が身元を隠したまま病院へ連れていくことになる。だが、事情を知った医師(堀部圭亮)は、本来なら通報すべき立場でありながら、警察への連絡をとどまった。この結果だけを見れば、今回救われたのは結以と大介の2人だ。しかし、それだけではない、もっと壮大な“救い”が描かれていたのではないだろうか。
今回登場した医師の岩瀬は、2人の真実を知るはずもなく、また濃密な時間を過ごしたわけでもない。にもかかわらず、大介の懸命な姿に触れ、“通報という正義”ではなく、“理解し解決へ導く可能性を選ぶ”という行動を示して見せた。それは、状況を表面だけで判断し、一方的な正しさで断罪できてしまう現代社会へ向けて、「本当の“知る”とは?」「“真っ当”に生きることとは?」を問いかけているような描写に思えたのだ。
ドラマはフィクションである。ましてや今作は逃亡劇を描いたエンタテインメントだ。2人に訪れた危機が、つかの間の人情によって回避されるというオチではいささかチープにもなりかねない。しかし、医師のあの姿、あの描写は、現実にも確かに存在し得る――世の中捨てたものじゃないという“希望”をまとわせることに成功させたのだ。
さらに、2人を追いかけてきた自称インフルエンサーの真咲(加藤千尋)と岬(高塚大夢)の変化も象徴的だ。好機を目前にしながら、2人は結以と大介の“真っ当さ”に触れ、目先の欲をあっさりと手放した(“6話のあの時点”では、だが…)。虚実入り乱れるSNSの世界にいる者でさえ、本物の“真っ当さ”に出会えば変わることができるという、希望の連鎖を第6話では描いてみせたのだ。
ただし、本作は単純な善悪や救いだけを描く物語ではない。これまで画一的な悪の人物として映っていた結以の父・慶志(北村一輝)にも、別の“真っ当さ”が潜んでいることが分かった。そこには、結以の“さとり”の能力にまつわる“何か”が関係しているようだ。
誰かにとっての“真っ当”は、別の誰かにとっては“真っ当ではない”。価値観が交錯し合い、救いの形すら揺らぐ。そんな複雑さを物語は包含しながら、なお希望も見せる。それが今作なのだ。
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