第84期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は5回戦が進行中。11月13日(木)には永瀬拓矢九段―近藤誠也八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀のねじり合いから抜け出した永瀬九段が103手で勝利。一度も形勢の針を譲らない快勝で開幕5連勝としています。

全勝者はただ一人

今期のA級はただ一人無敗の永瀬九段を、近藤八段含む3名の1敗者が追いかけるレース展開。上位陣の直接対決となった本局は後手となった近藤八段が受けて立つ形で角換わり腰掛け銀の滑り出しとなりました。旧式とされる△5二金型で待ったのが近藤八段用意の作戦。ともに想定の範囲内か、歩がぶつかってからもかなりのペースで指し手を進めます。

対局開始から1時間にして手数は50手を数えます。盤上は飛金交換で後手駒得ながら、近藤玉も危険な状態となっており形勢は互角。昼食休憩後、順位戦らしい長考合戦のなかでようやく形勢の針が動き始めました。近藤八段がじっと玉を引いて桂の両取りを避けたのは先手の長考に呼応する形でひねり出した一手(83分)でしたが、結果的にこの手が疑問手に。

攻め切って快勝

手番を握った永瀬九段の反撃が冴えわたります。4筋のタダのところに銀を差し出したのが遊んでいる銀を活用する絶品の一手。飛車こそ持っていないものの、すべての攻め駒をさばいて切れない攻めが実現しました。永瀬玉は薄いようでも左辺の空間のおかげで詰み筋がなく、思い切った攻めが可能になっています。以降は素早い収束を見るばかりとなりました。

終局時刻は22時51分、自玉の必死と敵玉の詰みなしを認めた近藤八段が投了。近藤八段としては終盤の入口で選んだ消極策が裏目に出た格好で、代えては4筋を制圧するため攻防の香を打つのが正着とされました。良い内容で大一番を制した永瀬九段は5勝0敗で名人挑戦に大きく前進、次局では千田翔太八段と対戦します。敗れた近藤八段は3勝2敗と一歩後退です。

水留啓(将棋情報局)

  • 昨年は6勝3敗の好成績でプレーオフ進出・名人挑戦を果たしている永瀬九段、連続挑戦に向けてファンの期待も高まる(写真は第66期伊藤園お~いお茶杯王位戦第5局のもの 提供:日本将棋連盟)

    昨年は6勝3敗の好成績でプレーオフ進出・名人挑戦を果たしている永瀬九段、連続挑戦に向けてファンの期待も高まる(写真は第66期伊藤園お~いお茶杯王位戦第5局のもの 提供:日本将棋連盟)