東京2025デフリンピックの開催を目前に控えた11月11日、東京ミッドタウン日比谷で「〜スポーツの力を、街づくりに〜東京2025デフリンピック応援イベント」のプレス向け内覧会が開催された。

三井不動産が「東京2025デフリンピック」のトータルサポートメンバーとして協賛するこのイベントは、11月15日から開催されるデフリンピックに先立ち、スポーツの魅力を広く伝えることを目的としている。

スポーツの魅力とは? ゲストたちが語る「感動」と「共有」

デフリンピックとは「Deaf(=耳がきこえない)」と「オリンピック」を足した造語で、国際的な「きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック」として4年ごとに開催されている。1924年にフランス・パリで第1回大会が行われ、日本初開催となる「東京2025デフリンピック」は100周年の記念すべき大会にあたる。

内覧会で開催されたトークショーは、「スポーツの力」をテーマに進行。冒頭、「スポーツの魅力とは何か」という問いに対し、サッカー界を代表するレジェンドの北澤さんは「やっぱり見ている人が感動してくれる瞬間がある。それが自分にとってもモチベーションになる」と話し、プレーヤーとしての原点を振り返った。

さらに、「応援されることで、自分でも信じられないようなプレーが生まれる。よく“持っているものしか出せない”って言われるけど、それは違う。応援の力が選手をもう一段階上に引き上げてくれる」と語り、当時の7万人規模のスタジアムを包む一体感のすごさを強調した。

北澤さんは現在、日本障がい者サッカー連盟で活動し、デフサッカー(聴覚障がい者によるサッカー)をはじめ、さまざまな障がい者サッカーの支援にも携わっている。

デフサッカーの魅力について問われると、「音でのコミュニケーションが取れない分、プレーが接近戦になる。だからこそ、フィジカルとテクニックの高さが要求される」と解説。「彼らの試合では、見た目にもわかりやすい力強さや美しい技術がある。(日本はデフサッカーで)すでにアジアチャンピオンだし、自国開催での金メダルも十分手が届く」と期待を込めた。

  • 左から北澤豪さん、朝原宣治さん

    左から北澤豪さん、朝原宣治さん

陸上男子短距離の第一人者である朝原さんは「スポーツの魅力を一言で表すなら“感動の共有”ですね」と切り出す。「現地でもテレビでも、同じ瞬間を見てみんなが『すごい』『悔しい』と感じる。言葉がなくても気持ちが共有できるのがスポーツの素晴らしさ。音楽と同じように、感情を超えて人をつなげてくれる」と語った。

デフリンピック応援アンバサダーに就任した経緯については、「正直、最初はデフリンピックの存在を知らなかった」と明かしつつ、「パラリンピックの活動には関わっていたけれど、デフリンピックが東京で開催されると聞いて、世界陸上で感じたあの感動を次につなげたいと思った」と想いを述べた。

注目競技について尋ねられた朝原さんは、「私は陸上出身なので、やはりデフ陸上に注目しています」とコメント。「スタートの合図が光だったり、フライングを旗で知らせたり、音が使えない分、選手たちは感覚でレースを作っている。特にリレーでは“阿吽の呼吸”でバトンを渡していると聞いて本当に驚いた」と話した。

  • 太田祥子さん

    太田祥子さん

パラリンピック元日本代表の太田祥子さんは、ノルディックスキーヤーとして2006年トリノ大会で銅、2010年バンクーバー大会で銀メダルを獲得したのち、東京2020大会ではなんとパラテコンドーに競技転向して再び出場を果たした異色のアスリートだ。

「転向のきっかけは東京パラリンピックでした。地元開催という特別な大会に、もう一度挑戦したいという想いが強くて決意しました」と太田さん。スキーから格闘技への転向という大きなチャレンジではあったが、「全く違う世界ですが、どちらも自分と向き合うスポーツだということに、やっていくうちに気付いた。どうすれば昨日の自分をを超えられるか、どうすれば成長できるかというその点では、どちらの競技も同じだと思う」と共通点を挙げた。

さらに太田さんは、まもなく始まる東京2025デフリンピックについて、「自分を信じて仲間とともに臨むアスリートの姿を、ぜひ皆さんに見ていただきたい。目で見て、感じて、心に刻む。そこには言葉を超えた繋がりがある」と語り、「この大会をもっと多くの人に知ってもらいたい。
聞こえない人たちの大会ではなく、心が動く大会ということを感じていただきたい。
そして選手の皆さんたちには、思いっきり挑戦できる環境であってほしいなと思っています」と、選手へのエールとともに大会への期待を述べた。

自転車競技・田中選手、金メダル誓う! 会場は“サイン”でエール

  • 内覧会では「サインエール」のレクチャー会も実施

    内覧会では「サインエール」のレクチャー会も実施

会場ではこの日、観客に“目で見る応援”と呼ばれる「サインエール」の体験レクチャーが行われた。サインエールとは、日本の手話言語をベースに複数の動きを組み合わせたサインのことで、観客らは「拍手」「行け」「大丈夫、勝つ」「日本、メダルを掴み取れ」などのパターンを学習した。

  • デフリンピック自転車ロード競技・田中航太選手

    デフリンピック自転車ロード競技・田中航太選手

その後、デフリンピック自転車ロード競技の田中航太選手がステージに登場。もともとトライアスロンの選手だったが、デフリンピックの種目にはトライアスロンがないため、もっとも得意な自転車競技に転向したという経緯を持つ。

デフリンピックの自転車競技について田中選手は、「耳が聞こえる人たちの場合、レース中も後ろの選手のギア音が聞こえるので、そろそろ抜かれるかどうかといった判断ができるらしいのですが、我々にはそれがない。視覚から得る情報で雰囲気を掴み、空気感で判断をしています」とその魅力を語った。

大会本番に向け、会場に集まった観客から覚えたてのサインエールが送られると、「熱い気持ちの籠もったエール、本当にありがとうございます。デフリンピック本番、ここでいただいたこの想いを背負って全力で戦いたい。金メダルを目指していきたいと思います」と誓った。

「〜スポーツの力を、街づくりに〜東京 2025 デフリンピック応援イベント」は11月12日まで東京ミッドタウン日比谷1階、アトリウムで開催中。会場では東京2025デフリンピック日本選手団公式ユ ニフォームやデフ陸上日本代表選手のウェアの展示、AI手話翻訳ツール「Sure Talk」の体験、手話教室、パラスポーツの紹介など、多彩な展示物も用意されている。