ファミリーマートと伊藤忠商事は、2024年よりエチオピアの子どもたちの教育環境改善に役立てられる寄付の取り組みを実施している。その背景には「コーヒーの2050年問題」があるという。同社の山田みちる氏、松田香織氏にお話を伺った。

  • ファミリーマート マーケティング本部 サステナビリティ推進部 環境推進グループの山田みちる氏と商品本部 FF部 カフェ・スチーマーグループ カウンターコーヒー リーダーの松田香織氏

    ファミリーマート マーケティング本部 サステナビリティ推進部 環境推進グループの山田みちる氏と商品本部 FF部 カフェ・スチーマーグループ カウンターコーヒー リーダーの松田香織氏

モカ豆の持続的な生産に向けて

「コーヒーの2050年問題」という言葉を聞いたことはあるだろうか。コーヒー豆の生産地は、気候変動、病害や虫害による生産量の低下、加えて経済的苦境による生産者の減少などさまざまな課題を抱えている。これらの問題によって、コーヒーの2大品種のひとつであるアラビカ種の収穫量は、2050年ごろに大幅に減少すると予測されている。

この問題の片鱗はすでに表れており、2025年産のコーヒー豆は収量が例年の半分程度になった。当然、コーヒー豆の価格も高騰している。2025年現在、まだコンビニのコーヒーが100円台から飲めるのは、コンビニ各社の努力のたまものと言えるだろう。

この「コーヒーの2050年問題」を回避すべく、さまざまな取り組みが行われている中、ファミリーマートと伊藤忠商事は2024年から、FAMIMA CAFÉで「モカブレンド」「アイスモカブレンド」の販売数に応じて、エチオピアの子どもたちの教育環境改善に役立てられる寄付の取り組みを実施している。2025年度は10月14日~12月15日にかけて行われ、モカブレンド1杯につき1円を、エチオピアの子どもたちへの教育環境の改善などに役立てるという。

だがその道のりは簡単なものではなかった。ファミリーマート 商品本部 FF部 カフェ・スチーマーグループ カウンターコーヒー リーダーの松田香織氏、同 マーケティング本部 サステナビリティ推進部 環境推進グループの山田みちる氏に話を伺った。

子どもたちの教育から持続可能な農業を支援

エチオピアは、コーヒー発祥の地といわれ、コーヒー豆の一大生産地だ。エチオピアモカ豆は、その華やかな香りから「コーヒーの女王」とも称され、その中でもイルガチェフェ地方でとれるモカ豆は世界的にも品質が高いことで有名だ。

ファミリーマートは、2019年からこのイルガチェフェ産の希少なモカ豆の最高等級豆を配合したコーヒーを店頭で販売し、好評を得てきた。

「こだわりすぎて困ってしまうくらい、すべてにこだわったのが『モカブレンド』と『アイスモカブレンド』です。イルガチェフェ産のモカ豆の香りと味わいを最大限に引き出せるよう、『香る焙煎』というモカブレンド専用の焙煎を行っています」(松田氏)

エチオピアのコーヒー豆農家の多くは小規模で、昔ながらの伝統的な農法と既存の農地を守りながら、過剰な農薬に頼らず農業をされている方が非常に多い。エチオピアは情勢が不安定で内戦が起こることもあるが、そのような時でもファミリーマートと伊藤忠商事はイルガチェフェ産のコーヒー豆を買い付け続けてきた。その関係はすでに5年以上に及び、両社と現地との間には信頼関係が築かれている。

松田氏と山田氏は、そんなエチオピアを実際に訪れ、現地の様子をその目で見てきたという。

「エチオピアの首都アジス・アベバは、急成長している大都会です。しかしコーヒー農園までいくと、風景が一変します。土壁の家でたくさんの子どもたちが暮らしています。非常にたくさんの生きるパワーに溢れていました」(松田氏)

一方、アフリカの多くの国々に共通する問題として、エチオピアでもやはり子どもたちの教育環境はまだまだ行き届いていない。子どもたちは「勉強したい」「学校に行きたい」という思いが強いが、子どもの数に対して圧倒的に教室やトイレなどが足りないといった状況にある。

「農業に直接寄付することもできるのですが、いまある農業だけでなく、未来を担う子どもたちの教育環境をできるだけ充実させ、コーヒー農園の未来につながるような形で支援を行いたいと思いました」(松田氏)

だが、エチオピアのイルガチェフェ地方に支援を届けるのは簡単ではなかったという。

「実際にエチオピアの子どもたちに支援を届けるのはとても大変で、準備が必要でした。さまざまな団体に声をかけ、最終的に辿り着いたのが、在エチオピア日本大使館が現地NGOへ支援する取り組みである「草の根・人間の安全保障無償資金協力」でした」(松田氏)

こうして約一年をかけ、2024年にようやくエチオピアの子どもたちへの寄付の取り組みが実現された。

森林を伐採せずに収量を増やす苗木寄付の取り組み

ファミリーマートの活動は、教育改善に役立てられる寄付だけに留まらない。2025年からは、生産地への苗木寄付の取り組みも開始された。

「イルガチェフェ地方の農園は、奥まで行くと自然の山の中にコーヒーの木が自生しているような環境です。小規模農家が中心となっており、コーヒー豆は手摘みされて、幹線道路以外は舗装もされていません。機械化された大規模農園が広がるブラジルとは真逆なんです」(山田氏)

コーヒーに適した土壌を持つイルガチェフェ地方は、自然と共生しながらコーヒー豆を栽培しているという。現地の方が収入を増やすために収量を増やしたいのは当然だが、農地を広げるには森を伐採する必要がある。そこでファミリーマートは、既存の農地を活かしながら収量を増やすという生産地支援をスタートさせた。

「2024年の9月に、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示をしました。コーヒー豆の持続的な調達を行うために、伝統的な農法の継続、農事指導の対応を現地の輸出会社を通じて行っていくことにしています。コーヒーの木は、古くなると収量もだんだん落ちてくるんですね。その老木を刷新することで、再び収量を復活させることができるんです」(山田氏)

さらに、3月8日の国際女性デーに合わせて発売されたコンビニエンスウェアの「吸水サニタリーショーツ」を女子生徒に贈るという取り組みも行ったという。現地では生理用品が充実しておらず、女子生徒が生理になると学校を休まなければならないという状況があったからだそうだ。

「1枚だけですべての問題を解決できるわけではありませんが、生理になったときに着用していただくことで数時間は持ちますし、繰り返し使えるので買い続ける必要もありません。この取り組みは『HAPPY WOMAN AWARD 2025』の女性応援ブランド賞をいただきました」(山田氏)

数量限定でエチオピア人画家とのコラボカップが登場

11月4日から、これらの寄付の取り組みの一環として、エチオピア人画家であるワークネ べズ・カッサ氏オリジナルデザインの「モカブレンド」Sカップが登場している。

ワークネ べズ・カッサ氏がこのコラボカップに描いているのは、エチオピア人が来訪者をもてなすために行う「カリオモン」の様子だという。コーヒー豆をフライパンで煎り、潰してポットに入れ、沸かしてその上澄みを飲むという、エチオピアの伝統的なコーヒーを振る舞うセレモニーだ。

「アフリカのコーヒー豆には、華やかな味わいという共通した魅力があります。それはこの土地の土が育んだ味わいなんです。エチオピアのコーヒー文化を感じていただきながら、私たちのサステナビリティへの取り組みやコーヒーの2050年問題について知っていただけると嬉しいです。コラボカップは数量限定となります」(松田氏)

なお、ファミリーマートは6月から、モカをはじめとしたコーヒーの味わいをさらに引き出す新型コーヒーマシンの導入を進めている。業界初となる「挽き方調整グラインダ」の導入や、バリスタのハンドドリップを再現した抽出を実現しているという。10月末時点で約6,000店舗の導入が完了しており、2026年6月までに全1万6,000店舗への導入が完了する見込みだ。

  • ファミリーマートが今年6月から順次導入している新型コーヒーマシン

    ファミリーマートが今年6月から順次導入している新型コーヒーマシン