(左から)広島の新井貴浩監督、中日の井上一樹監督、ヤクルトの池山隆寛監督(写真:産経新聞社)

 2025年のレギュラーシーズンが終わり、12球団の“通信簿”は出そろった。勝者も敗者も、いま求められているのは“次の一手”――ドラフト戦略だ。明確になった課題、埋まらないポジション、そして獲りに行くべき逸材。セ・リーグ6球団はどんな青写真を描いているのか。本対談では、各球団ファンのライター・編集者と今季を振り返りつつ、ドラフト戦力について議論した。(文・Shuya)【実地日:10月16日】

 

 司会:Taki(編集)

 

 ヤクルト:野島広崇(ライター)

 広島:わたまる(編集)

 中日:チャッピー加藤(ライター)

 

東京ヤクルトスワローズ(リーグ6位・57勝79敗7分)

[caption id="attachment_235592" align="alignnone" width="530"] 東京ヤクルトスワローズの池山隆寛監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:主力離脱・村上流出リスク・長打力不足

 

・チーム打率.234 (リーグ5位)

・チーム防御率3.59(リーグ6位)

・先発防御率3.89 (リーグ6位)

・救援防御率3.12 (リーグ5位)

・失策72     (リーグ4位)

・盗塁数61    (リーグ4位)

 

 ■Taki:今季のヤクルトは、投打ともに低い数字となりました。野島さんから見て、今季のヤクルトはどう映りましたか?

 

 ■野島:結果が物語っていると思います。毎年ケガ人は多いんですが、今季は特に深刻でした。野手で言えばホセ・オスナ選手以外の主力は全員一度は離脱しましたし、村上宗隆選手も開幕から不在でした。良くも悪くも「村上選手のチーム」だったと感じさせられるシーズンでしたね。

 

 ■Taki:長岡秀樹選手の離脱も痛かったのでは?

 

 ■野島:そうですね。開幕時は状態があまり良くなかったんですが、調子が上がってきたタイミングで離脱してしまいました。そこも大きな痛手でした。

 

 ■Taki:投手陣を見ると、ドラフト1位の中村優人投手が1勝止まりでした。

 

 ■野島:今はコンディション不良でフェニックスリーグにも参加していません。ただ、今のプロ野球はレベルが高いので、プロ1年目から活躍するのは難しいと思っていました。今季はケガもありましたが、来季は規定投球回まではいかなくても5~6勝は期待したいです。

 

 ■Taki:FA権を取得した高梨裕稔投手の残留が決まりました。チームにとって大きいのでは?

 

 

 ■野島:大きいと思います。高梨投手は故障も少なく、一軍でも二軍でも安定して投げてくれるタイプです。非常に助かる存在ですね。

 

 ■Taki:ペドロ・アビラ投手の去就も気になりますよね。

 

 ■野島:そうですね。ピーター・ランバート投手やマイク・バウマン投手がすでに自由契約となり、アビラ投手は交渉中だと思います。成績的には残ってほしいですが、年俸面で折り合わない可能性もある。その場合は新外国人投手の補強になるでしょう。

 

 ■Taki:来季の不安要素としては、やはり村上選手のメジャー挑戦が一番大きいですよね。その代役は北村恵吾選手になるのでしょうか。

 

 ■野島:そうですね。ドラフトでも内野手を補強すると思いますが、まずは北村恵吾選手が一番手だと思います。また、今季は外野で起用されていた内山壮真選手も高校時代は内野手。実は一軍で三塁を守ったこともあって、来季は内野コンバートの可能性もあると思います。

 

 ■Taki:来季に向けて、ファン目線から見て明るい材料はありましたか?

 

 ■野島:後半戦は若手が台頭してきた印象ですし、後半戦だけ見れば貯金を作っています。村上選手の復帰も大きかったですが、北村恵吾選手の活躍、古賀優大捕手が打率.280、盗塁阻止率も5割近く記録して存在感を示しました。次期正捕手の座を掴みつつあると思います。

 

 ■Taki:今季、浮き彫りになったチームの課題はどこだと思いますか?

 

 ■野島:村上選手以外に長打を打てる打者が少ないこと。そして一軍レベルの選手層の薄さですね。ケガ人が出た時に代わりを担える選手が不在で、それで前半は負けが込んでいました。これが最大の課題です。

 

 ■Taki:その上で、ドラフトではどんな選手を指名してほしいですか?

 

 ■野島:やはり創価大の立石正広選手(創価大)ですね。ありきたりですが、彼が最適だと思います。村上選手が抜けて三塁が空く状況ですから、プロ1年目から打席に立てる大学生の強打者が必要です。

 

 ■Taki:現状だと、長打力のあるのはドミンゴ・サンタナ選手、オスナ選手、山田哲人選手あたり。若手では少なくなっていますね。

 

 ■野島:そうですね。外野の澤井廉選手は長打を打てますが、内野には若い長距離砲がいません。

 

 ■Taki:投手陣で見ると、左のリリーフや先発が手薄に感じますが、その点はいかがでしょう?

 

 ■野島:正直、右も左も言っていられない状況です。なので特に「左を補強しなければ」という意識はあまりないのかなと思います。

 

 ■Taki:となると、最優先は「内野で長打を打てる選手」ということですね。

 

 ■野島:そうなりますね。

広島東洋カープ(リーグ5位・59勝79敗5分)

[caption id="attachment_235589" align="alignnone" width="530"] 広島東洋カープの新井貴浩監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:夏の失速・長打力不足・捕手

 

・チーム打率.246 (リーグ3位)

・チーム防御率3.20(リーグ5位)

・先発防御率3.42 (リーグ5位)

・救援防御率2.76 (リーグ4位)

・失策75     (リーグ5位)

・盗塁数57    (リーグ5位)

 

 ■Taki:今季のカープは、先発投手陣が苦しんだように感じます。ファンとして、今季の戦いぶりをどうご覧になりましたか?

 

 ■わたまる:毎年のように序盤は調子が良いんですけど、夏場以降に失速するという「いつものパターン」が今季も出てしまった印象が強いです。個人的には森下暢仁投手にエースとして大きく飛躍してほしいシーズンでした。開幕投手も務めましたが、他球団のエース級との投げ合いで勝ちきれない試合が多かったです。来季はもう一段階上に成長してほしいですね。

 

 ■Taki:昨季は9月に失速しましたが、今季は7月に4勝16敗3分と大きく負け越しました。2年続けて、急失速が順位を落とす要因になっていますね。

 

 ■わたまる:一度負け始めると、流れを断ち切れないですね。エースが連敗を止めてくれるような柱が、今季は足りなかったと感じます。

 

 ■Taki:床田寛樹投手、大瀬良大地投手、森下投手といった柱を見ても、貯金を作れた投手はいませんでしたね。

 

 

 ■わたまる:床田選手は前半は勝ち越していたんですが、後半でその貯金を吐き出してしまいました。

 

 ■Taki:得点力の部分は、ファン目線から見てどう映りましたか?

 

 ■わたまる:打撃陣も課題が残りましたね。サンドロ・ファビアン選手とエリフレス・モンテロ選手の助っ人2人は頑張ってくれましたが、長打力が不足していました。セ・リーグで最も本塁打が少なかったですし、ここは明確な課題です。

 

 ■Taki:投手陣で貯金を作ったのは、森翔平投手と髙太一投手だけです。やはり投打ともに厳しいシーズンでしたか。

 

 ■わたまる:そうですね。ただ、髙投手や佐藤柳之介投手、玉村昇悟投手など若い投手が出てきたのはプラス材料だと思います。

 

 ■Taki:野手を見ると、主力が30代に差しかかってきています。若手内野手では小園海斗選手がチームを引っ張りましたね。

 

 ■わたまる:小園選手はタイトルも取り、チームの顔として成長してきました。一方、矢野雅哉選手は打撃面で不振が続きました。守備では貢献していますが、打撃面でもう一段階成長してくれないと厳しいと思います。

 

 ■Taki:その中でも、中村奨成選手が“ブレイク”しました。来季は打線の鍵を握る存在になるのでは?

 

 ■わたまる:本当にそうですね。今季の活躍が一過性で終わるのか、それとも成長の証なのか。ここでカープ打線の組み立てや補強方針も大きく変わってきます。ファンとしては、「あれは夢ではなかった」と思わせてほしいです。

 

 ■Taki:今季、浮き彫りになったチームの課題はどこだと思いますか?

 

 ■わたまる:やはり打線ですね。特に長打力不足の部分で、左打ちの長距離砲が不在です。それに加えて先発陣、中継ぎ陣も含めて全体的に層が薄く、課題は多いです。

 

 ■Taki:カープは立石正広選手(創価大)を1位指名すると公言しました。ファン目線で妥当だと思いますか?

 

 ■わたまる:良いと思います。長打力不足を補えますし、内野手の三塁も競争が必要です。立石選手は無論、明治大の小島大河捕手も候補になるでしょう。坂倉将吾捕手が来季FAで移籍の可能性もあるので、捕手の後継も見据える必要があります。立石選手を外した場合は小島選手に行ってほしいですね。

 

 ■Taki:外野手に目を向けると、一番若いのが田村俊介選手ですよね。田村選手から上は少し間が空いているので、外野手も欲しいところですか?

 

 ■わたまる:そうですね。中村奨成選手が外野で結果を出しましたが、その下の世代がいません。将来の主軸を担える和製大砲タイプを獲ってほしいですね。

●中日ドラゴンズ(リーグ4位・63勝78敗2分)

[caption id="attachment_235593" align="alignnone" width="530"] 中日ドラゴンズの井上一樹監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:貧打・三塁レギュラー不確定・先発投手の枚数

 

・チーム打率.232 (リーグ6位)

・チーム防御率2.97(リーグ4位)

・先発防御率3.13 (リーグ3位)

・救援防御率2.65 (リーグ3位)

・失策数65    (リーグ2位)

・盗塁数80    (リーグ2位)

 

 ■Taki:3年連続最下位から、井上一樹監督就任1年目で4位に浮上しました。これは復調の兆しと見ていいのでしょうか。

 

 ■チャッピー加藤:僕は村上宗隆選手(ヤクルト)のおかげだと思っています。ヤクルトが村上選手を欠いた状態で半分以上戦ったこと、そしてカープが夏以降に失速したこと。この2つの要因で順位が上がった形ですね。村上選手がいて、カープが普通に戦っていたら、ドラゴンズは最下位だったと思います。

 

 ■Taki:井上監督の采配はどのように映りましたか?

 

 ■チャッピー加藤:オーソドックスな采配でした。立浪和義監督時代が苦しかったので、4位まで持ってきたのは評価できると思います。

 

 その一方、勝負勘はない印象がありました。例えば藤浪晋太郎投手(DeNA)に左打者を並べた采配は疑問でしたね。そうした不可解な采配はいくつかありましたが、それでも全体としては「よくやった」と思います。ただ、Aクラス入りできる力はまだなかったという印象ですね。

 

 ■Taki:今季、浮かび上がったチームの課題点はどこでしたか?

 

 ■チャッピー加藤:結局「打てなかった」に尽きますし、完封負けも多かったです。得点力不足が深刻で、今季は403点。昨年の300点台に比べて少し増えたものの、それでも最下位レベルです。1試合あたり3点取れないのでは投手陣は報われません。

 

 ルーキーの金丸夢斗投手が象徴的で、もし阪神に入っていれば2桁勝利、新人王も取れた可能性があります。ドラゴンズだったために2勝止まりで、彼には申し訳ないとすら思いますね。それでも彼はよくやったと思います。

 

 ■Taki:打線が苦しい中、松山晋也投手の存在は大きかったですね。

 

 

 ■チャッピー加藤:46セーブで、ライデル・マルティネス投手(巨人)と並びました。1か月以上不在だったのに同じセーブ数というのは驚異的です。松山投手がいなかったらと思うと、ゾッとします。

 

 ■Taki:野手でも奮闘を見せた選手がいましたね。

 

 ■チャッピー加藤:上林誠知選手がフルシーズン活躍し、ホームランも2桁打ちました。盗塁増加も、上林選手の加入と岡林勇希選手との相乗効果が大きかったですね。

 

 細川成也選手が1か月ほど離脱しましたが、それでも戦力になりました。ただ全体的には「つながり」に欠け、代打層の薄さも課題です。

 

 ■Taki:ドラフトで補強すべき最優先ポジションはどこだと思いますか?

 

 ■チャッピー加藤:難しいところで、先発の頭数が足りないのは事実です。松葉貴大投手、大野雄大投手、涌井秀章投手は30代後半で、来季も計算できるかは怪しいです。柳裕也投手もFAで出ていく可能性がありますし、先発補強は不可欠です。

 

 ■Taki:野手の補強も欠かせないですか?

 

 ■チャッピー加藤:来季からバンテリンドームにホームランテラスが設置され、狭くなります。そうなると打てる野手、特に三塁手は獲得したほうが良いとも言えます。

 

 石川昂弥選手を信じて起用しましたが打てず、高橋周平選手も出てこず、福永裕基選手はケガ。佐藤龍世選手を獲得しましたが打てず、外国人のマイケル・チェイビス選手も不発。三塁が穴のまま終わってしまいました。

 

 だからおそらくドラフトでは野手、特に三塁手を狙うと思います。立石正広選手(創価大)に行く可能性が高いでしょう。外したら先発投手を取りにいくと見ています。

 

 ■Taki:確かに三塁は全く固定できませんでしたね。

 

 ■チャッピー加藤:森駿太選手に期待したいですが、来季はまだ高卒2年目です。素材は良いですが、育つまでには時間がかかるでしょう。やはり即戦力の三塁手を補強する必要があります。

 

 ■Taki:難しいドラフトとなりそうですね。

 

 ■チャッピー加藤:ただ今年のドラフトは投手が豊作なので、2位以下で取れると思います。中継ぎも不足しているので、下位で補強するでしょう。

 

 さらに捕手も足りません。今季は石伊雄太捕手が出場機会を得て、大野投手とのバッテリーで結果を出しました。正捕手を任せられる存在ですが、彼がケガをした場合に備えて厚みが必要です。宇佐見真吾捕手や石橋康太捕手が一軍で結果を残せていないので、新たな捕手を獲得するのもありだと思います。

 

 ■Taki:なるほど。つまり中日は全体的に補強が必要だということですね。

 

 ■チャッピー加藤:そうです。全て足りていません。

 

 ■Taki:その中でドラフトでどんな指名をするのか、当日が楽しみですね。

 

 

【了】