マクラーレン「750Sスパイダー」「アルトゥーラ」「GTS」のキャラクターの違いを体感!

9月、軽井沢でマクラーレン・フルラインナップ試乗会が開催された。現在のマクラーレンの主たるラインナップは、フラッグシップスーパーカーの「750S」とそのオープン版である「750Sスパイダー」、ハイブリッドスーパーカーの「アルトゥーラ」と「アルトゥーラスパイダー」、グランツーリスモスーパーカーの「GTS」で構成されている。

【画像】現在のマクラーレン主要ラインナップ3モデルを乗り比べてみる(写真18点)

ここであらためてマクラーレンのロードカーに共通する特長を挙げてみる。まずすべてのモデルの骨格に、軽量、高剛性なカーボンモノコックを採用している。また750SとGTSに関しては、ピュアなV8エンジンを搭載する。そしてハイパフォーマンスカーは4WD化が顕著な時代にあって、すべてのモデルを後輪駆動の2WDで成立させている。これらによってマクラーレンはライバルと一線を画す独自の乗り味を実現している。

今回は「750Sスパイダー」、「アルトゥーラ」、「GTS」の順に試乗することができ、それぞれのキャラクターの違いを体感することができた。

750Sは、マクラーレン史上、最も軽量で最もパワフルなシリーズモデルをうたう。4リッター V8 ツインターボ・エンジンは、理想的な重量配分を実現するためドライバーの背後にミッドマウントされ、最高出力750PS、最大トルク800Nmを発揮。スイッチ1つで獰猛な音とともにエンジンが目覚める。しかし、扱いにくさのようなものは感じない。ゆっくりとしたアクセル操作にもギクシャクすることなく、スムーズに応えてくれる。

この日は軽井沢から碓氷バイパスへと向かう。右足に力をこめれば、回転数の表示が鋭く反応する。このエンジンはとても刺激的なもので。音、振動、加速のすべての面において、ピュアなV8エンジンゆえの高揚感が味わえる。走行モードはメーターパネルの上部に左右に配置されたスイッチで、それぞれハンドリングとパワートレインの特性を、コンフォート、スポーツ、トラックと切り替えが可能だが、公道走行が前提ならいずれもコンフォートがいい。前輪は接地感がしっかりとあってノーズの入りもよく、計算されたエアロダイナミクス性能の効果もあって後輪のトラクション性能も高い。

またカーボンファイバー製のシェル「モノケージII」は、バスタブ形状で剛性を確保しているため、オープン化によるボディ剛性の低下を感じることはほとんどない。リトラクタブル・ハードトップ(RHT)は、走行時も50 km/h以下であればわずか11秒で開閉可能。スパイダーでも車両重量は1438 kgとクーペ比で+49kgに抑えられている。

これほどのパワーをもってオープンボディで2WDで走っているにも関わらず、荒々しさはなく、安心感を抱いてしまうほどに洗練されている。これぞマクラーレンという乗り味を見事に体現しているのだ。サーキットでコンマ数秒を削りたいならクーペだが、ドライブ旅を楽しみたいならやはりスパイダーがいいと思った。

次にマクラーレン初のハイブリッドスーパーカー「アルトゥーラ」に乗る。「MCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー)」という新世代のカーボンシェルを採用。シート背後に7.4 kWhのリチウムイオンバッテリーコンパートメントを配置し、それはクロスメンバーとしても機能する設計となっている。

パワートレインには新開発の3リッターV6ツインターボを搭載。これに8速DCTと統合するかたちで最高出力95PS、最大トルク225Nmを発揮する電気モーターを組み合わせている。最高出力700PS、最大トルク720Nm。0-100km/h加速3.0秒、最高速度は330km/hと、まさにスーパーなスペックを誇る。

それでいてバッテリー残量が十分であれば無音で走り出すことができる。上信越道にのって速度をあげていくと、するするとあっという間に制限速度に到達した。以前クローズドコースで試した際には時速130kmくらいまでは電動走行が可能だった。大容量バッテリーではないが満充電であれば約30kmの電動走行が可能という。ハイブリッドシステムを搭載するため車両重量は1498kgと、先に乗った750Sスパイダーと比べて60kgほど重い。750Sほどのシャープさや刺激はない。けれども音もなく走り出し、振動もなく加速していくさまは、この車がスーパーカーであることの心理的負担を圧倒的に軽くしてくれる。深夜早朝であっても近隣住民に気兼ねすることなく使える。サーキットにはめったに行かないという人なら、こちらのほうがいいだろう。

最後はスーパーカー界きってのグランドツアラー、「GTS」に乗る。カーボンタブには「モノセルII-T」を採用。これに連続可変電子制御デュアルバルブ・ダンパーを備えたプロアクティブ・ダンピング・コントロール・サスペンションを組み合わせることで、スーパーカーばなれした快適な乗り味を実現している。

フロントスポイラーの位置が高めに設計されており、段差へのアプローチもそれほど気を使わなくていいし、いざというときにはリフトシステムも備わっている。後方視界もいいし、リアにはキャディバックが収まるスペースもある。

4リッターV8ツインターボエンジンは、先代のGT比で15PSアップの最高出力635PSを発生。最大トルクは630Nmで変更はない。0-100km/h加速3.2秒、最高速度は326km/hと、スペックは先の2台にも何ら遜色ない。それでいて日常の使いやすさや快適性を備えている、まさに類をみないスーパ−カーだ。

あらためてこの3モデルを乗り比べてみると、それぞれにしっかりとキャラクター分けがなされていることが伝わってくる。たとえ同じコンフォートモードを選択していたとしても、750SとアルトゥーラとGTSでは、750Sがもっともパフォーマンス志向であり、イメージとしては1段階ずつ差があるように感じた。

正式な発表があったわけではないが、規制対応などの問題があり、どうやらピュアなV8エンジンを搭載している750SとGTSの日本市場向けの生産は来年にも終了と噂される。最終モデルを新車で欲しいという人はお急ぎを。

文:藤野太一 写真:マクラーレン・オートモーティブ

Words: Taichi FUJINO Photography: McLaren Automotive