赤ちゃんをあやすときに激しく揺さぶり過ぎると、赤ちゃんの目や脳などに影響を及ぼすことがあることをご存じですか?

通常のあやし方なら問題はないと言われていますが、どの程度ならいいのか気になりますね。「揺さぶられっ子症候群」になるとどんなことが起こるのか、また危ないあやし方と安全なあやし方の目安などをご紹介します。

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■揺さぶられっ子症候群とは?

揺さぶられっ子症候群は、「乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome:SBS)」とも呼ばれ、特に生後2~6カ月ごろに多いとされています。また、乳児期を過ぎても頭の構造的に2歳ぐらいまでは注意が必要です。

なお、揺さぶり以外で起こる頭部損傷を含めた医学用語として「虐待による乳幼児頭部外傷(Abusive Head Trauma in Infants and Children:AHT)」があります。

この記事では揺さぶられっ子症候群の呼び方で解説します。

<強く揺らされることで脳などにダメージが>

揺さぶられっ子症候群は、「乳幼児が非常に激しく揺さぶられたり、揺さぶられた前後に頭を強くぶつけたりすることで、脳や目などに起こるケガや障害など」を指します。

赤ちゃんは頭が重い上に首の筋肉がまだ弱いので、揺さぶる力が加えられても、自力で頭を支えられません。また、赤ちゃんの頭は、頭蓋骨の中に脳が浮いているような状態です。そのため、強く早く揺さぶられると頭も大きく揺れ、頭蓋骨の中で脳が何度もぶつかって、神経や周囲の血管が引きちぎれてしまいます。また目の網膜が引っ張られて出血することもあります。

その結果、脳や目などに深刻なダメージが残ることとなり、中には命を落としたり、生涯後遺症に苦しんだりする子もいます。

■どんな行動が危険? 危ないあやし方、安全なあやし方

赤ちゃんの頭が揺れて首が前後にしなるほど揺さぶるのは大変危険です。絶対にやめましょう。また、赤ちゃんを空中に放り投げてキャッチするような「高い高い」については、落下の危険はもちろん、脳や眼球などに強い衝撃を与える可能性があります。

なお、赤ちゃんを横向きの抱っこであやす程度は問題ありません。

■揺さぶられっ子症候群の症状

<揺さぶられっ子症候群になった直後の様子>

激しく揺さぶられると、脳細胞が破壊されて脳が低酸素状態になります。そのため揺さぶられっ子症候群の子は次のような様子を見せます。

・元気がなくなる
・機嫌が悪くなる
・不自然なほどすぐ眠ってしまう
・嘔吐する
・けいれんを起こす
・呼びかけても反応しない(意識障害)
・呼吸困難
・昏睡状態

また、最悪の場合は死にいたることもあります。

<揺さぶられっ子症候群になって残る症状>

赤ちゃんの命が助かったとしても、次のような症状が続くことがあります。

・脳の周りや脳の中の出血
・言葉の発達の遅れ、学習障害、知的障害
・失明や視力障害
・後遺症として、けいれん発作
・脳損傷や知的障害、脳性麻痺となる
・うまく歩けなくなる(歩行困難)

■なぜ強く揺さぶってしまう? 危ういとき、できること

親や乳幼児の世話をしている人が、赤ちゃんにイライラしたり腹を立てたりして、激しく揺さぶってしまうケースが多く見られます。

<「泣き止まないとき」に多発>

よくあるのが「赤ちゃんが泣き止まないとき」です。

赤ちゃんは生後2~3週くらいから、特に理由がないのに泣くことがあります。そのため、この時期は一般的に「魔の3週目」と言われています。この泣きは生後3~4カ月でピークを迎え、だんだん落ち着いていきながら生後半年くらいまで続きます。

これは赤ちゃんの正常な発達の段階ですが、赤ちゃんが泣き止まないために大人がイライラして、つい激しく赤ちゃんを揺さぶってしまうことがあるのです。

<赤ちゃん泣き止まないときの行動>

特に体調も悪くないのに、授乳してもおむつを替えてもなかなか泣き止まず、優しくあやしても効果がないときがあります。そうすると、不安や焦りから心がざわざわイライラしてくることもあるでしょう。

赤ちゃんと二人きりのときにイライラしてきたら、まずは次のようにして気持ちを落ち着けましょう。

・深呼吸をして10数えます
・柵のついたベビーベッドなど、安全なところに赤ちゃんを仰向けに寝かせたら、部屋を出ます(5~10分ごとに呼吸の状態だけはチェックしましょう)
・家族や友人など気の置けない人、頼れる人に電話して心を落ち着けましょう

なお、赤ちゃんの体調が心配な場合は一人で悩まず、かかりつけの小児科や子ども医療電話相談、救急安心センター(電話番号♯7119)などに電話してみるのもおすすめです。

■強く揺さぶってしまった……どうすればいい?

<揺さぶってしまったときの対応方法>

赤ちゃんを激しく揺さぶってしまったら、今すぐ医療機関で診察を受けましょう。

かかりつけの小児科へ電話で相談する、もしくは「小児救急診療」や「応急診療所」に向かいます。どの医療機関に行ったらいいかわからない場合は、「小児救急電話相談(電話番号#8000)」に連絡しましょう。

脳が損傷を受けたり、頭蓋骨の中で出血が起こったりしたのを放置すると、赤ちゃんの状態は悪化してしまいます。頭部CTやMRIなどの検査をして、必要に応じて一刻も早く適切な処置を受け、症状の悪化を防ぐことが重要です。

最後に揺さぶられっ子症候群に関して、小児科の専門医に聞いてみました。

揺さぶられっ子症候群は、5歳未満の子どもの頭部に鈍的な力が加わったり激しく揺さぶられたときに、硬膜下血腫や網膜出血、脳浮腫などを引き起こしてしまう、転帰がきわめて不良な症候群です。脳に急激な回転加速減速外力が加わることが原因とされますが、揺さぶられる以外にも同様の症状を引き起こすため、「虐待による乳幼児頭部外傷」という言葉が用いられることも多いです。

虐待による乳幼児頭部外傷に対する特有な治療法は存在せず、主に急性硬膜下血腫に対して処置を行うしか手段がなく、脳障害の程度によっては、重度の後遺症を残したり命を失うこともあります。効果的な治療法がないため、最も有効な対策は、虐待が生じないよう予防に努めることだと思います。何の罪もない子どもたちに、無慈悲に肉体的、精神的虐待を加える保護者がいるのは事実ですが、その一方で、育児に悩みながらも、誰からの助けや協力も得られず、一人孤立し、子どもに手をかけてしまったという悲しい保護者の姿を何度も見てきました。

子育てで悩んだときに、周りの人や行政へ助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。虐待を予防する手段として、子どもを取り巻く保護者へのサポートも重要だと感じています。

元野 憲作(もとの けんさく)先生

一宮西病院 小児科/部長
資格:日本専門医機構認定 小児科専門医