梅毒が急激に増えているとニュースなどで聞いたことはありませんか?

梅毒は性感染症の1つで、放置しても治らない病気です。梅毒を含む性感染症について知って、かかったときの悪化を防ぐとともに、大切な人に感染させてしまわないように予防・治療を進めましょう。

  • のどに梅毒の症状が出ている女性のイメージ

    ※画像はイメージです

■梅毒は性感染症のひとつ

性的に接触することで感染する可能性がある感染症は「性感染症(Sexually-transmitted Infections:STI)」と呼ばれます。

代表的な性感染症としては、「梅毒」「性器クラミジア感染症」「性器ヘルペスウイルス感染症」「尖圭コンジローマ」「淋菌感染症」などがあります。

かゆみや痛みだけでなく、病気によっては神経や心臓に合併症や後遺症を引き起こすことがあります。また、不妊の原因にもなります。この記事では、中でも急増がたびたび話題になっている梅毒についてお伝えします。

■急増する梅毒、身近な人からの感染も

1967年以降、梅毒の報告数は減りましたが、2011年頃から増加し、2019~2020年にいったん減ったものの2021年以降、急激に増え始めました。

2024年の年代別報告数を見ると、男性は20代~50代、女性は20代に特に増加しています。

<主な感染経路は性行為>

梅毒は主に性的接触によって「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染して起こります。この細菌は感染者の血液、精液、腟分泌液などに含まれています。

「梅毒によってできたできものや傷などに粘膜や皮膚が直接触れる」ことで感染するため、通常の性交だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などからも感染します。相手や自分の口の中に傷があると、ディープキスでも感染する可能性があります。

また、妊娠中に梅毒に感染すると胎児も感染して「先天梅毒」となる可能性があります。その場合、流産や死産、先天性障害のリスクリスクが生じるため、速やかに治療を行う必要があります。

<感染リスクは身近な場所に>

不特定多数の人との性的接触が感染リスクを高めることは事実であるものの、そうでない人が性感染症にかかることも少なくありません。これは梅毒に限ったことではなく、性感染症になった・感染の不安があったときの性行為の相手について、女性のおよそ7割が「特定のパートナー」であったというデータもあります。

■梅毒の症状

では、梅毒の代表的な症状を知っておきましょう。梅毒は感染から経過した時間によって出やすい症状が異なります。

<梅毒の始まり:早期顕症梅毒1期>

感染後して3週間ほど経つと、唇、口の中や喉の粘膜、陰部・肛門とその周りなどに「しこり、びらん、潰瘍」などができます。また、鼠径部のリンパ節が腫れることもあります。こうした症状は、約3~6週間で自然になくなります。

<再び症状が目立つように:早期顕症梅毒2期>

1期の症状が出た後に4~10週間程経つと、全身にさまざまな症状が出ます。手のひらや手の背、下腿、腕、背中などに痛みがない赤い斑点(バラ疹)が出ます。またしこり、丘疹(梅毒疹)、脱毛斑、発熱や倦怠感、全身のリンパ節の腫れなどの症状も見られます。こうした症状も1期と同じく自然になくなります。

<命に関わる状態に:晩期顕症梅毒>

感染して数年~数十年経つと、心血管症状、進行麻痺、ゴム腫、脊髄癆などが起こり、放置すると命に関わることがあります。ただし、現在では適切な治療を受けることで、ここまで悪化せずに済むことが増えました。

他にも、「神経梅毒」はどの発症時期でも起こるもので、精神症状や認知症のような症状が出ます。

■「もしかして」と思ったら、まず検査

梅毒は症状が消える時期がありますが、症状がなくても性交渉のパートナーに感染させる可能性があります。心当たりのある症状が今または過去にあったり、不特定の相手と性交渉したり、リスクのある性行為をしてしまったりした後は、パートナーとともに検査を受けましょう。

<検査を受けるにはどうする?>

医師が診察するとともに、血液検査(抗体検査)を行います。この検査はほとんどの医療機関で受けられます。地域によっては、匿名や無料で保健所などで検査を受けられることもあります。

<薬で治療可能>

梅毒は、早く治療を開始すれば、1カ月程度の内服もしくは1回の注射で治ります。

「梅毒だという結果が出るが怖い」と検査を避けるのではなく、速やかに診断・治療を受ける行動をとりましょう。そうすることで、自分自身も相手も守ることにつながります

■梅毒を予防するには

残念ながら現時点では梅毒に有効なワクチンはありません。まずは感染リスクを下げるためにも、オーラルセックスを含む性交渉の際にコンドームを適切に使いましょう。また、コンドームで覆われない箇所から感染することもあるので、皮膚や粘膜に症状があったら検査を受け、性交渉や性的な接触を控えることも大切です。

最後に梅毒に関して、産婦人科の専門医に聞いてみました。

梅毒は全数把握対象の5類感染症であり、医療機関からの届け出数が公表されています。届出数は、2010年は621人でしたが、2013年には1,228人と急増しています。その後も増加傾向が続き、2023年は14,906人でした。中でも20代女性が2,926人と非常に多いことが指摘されています。

梅毒の感染初期(感染後、10~90日)の症状(第1期梅毒)は、外陰部や口腔内にできる無痛性の潰瘍とされていますが、治療なしでも自然に消失します。ついで感染成立後15~90日の間に全身性の激しい免疫反応によって、バラ疹と呼ばれる皮疹、咽頭痛、筋肉痛、全身リンパ節腫脹、が生じるとされています(第2期梅毒)。未治療の場合、神経梅毒や心血管梅毒など第3期梅毒に至る可能性があります。

重要な点は、潰瘍や皮疹などの症状が自然に改善した場合でも梅毒が治癒したわけではなく、潜伏感染した状態にあることです。したがって、感染を疑う性的接触や症状が一度でもあった場合には、たとえ症状が改善していたとしても積極的に血液検査を行い、感染状態を確認することが非常に重要となります。症状が消失していても検査で梅毒と診断できる可能性があります。

手石方 康宏(ていしかた やすひろ)先生

一宮西病院 産婦人科/医長
資格:日本専門医機構認定 産婦人科専門医