LASSICが運営するテレワーク・リモートワーク総合研究所は7月14日、「リモートワークと求められる能力」というテーマで実施されたアンケート調査の結果を発表した。調査は2025年4月8日~4月16日、20歳~65歳のテレワーク/リモートワークを経験したことがあるワーキングパーソン男女1003名を対象にインターネットで行われた。
リモート or フル出社で変わる仕事力
「勤務形態がリモートワークの場合、成果を出すために必要なことはなんだと考えますか?」という質問をしたところ、以下のような結果となった。
また「勤務形態がフル出社の場合、成果を出すために必要なことはなんだと考えますか?」という質問をした結果は以下の通り。
調査の結果、リモートワーカーとオフィス勤務者では「成果を出すために必要だと感じる能力」が明確に異なることがわかった。
リモートワークでは「スケジュール管理力」「情報収集力」「自己管理力」など、「自律的に仕事を遂行するためのスキル」が上位に並んだ。対してフル出社では「コミュニケーション力」「チームワーク力」「交渉・調整力」といった「対人スキル」が重視されている。
調査では以下のように分析している。
この違いの背景には、それぞれの勤務環境の「人との距離感」が大きく関係していると考えられる。リモートワークでは、上司や同僚と物理的に離れているため、「たまたま出会ったから進捗を確認される」「同僚が移動し始めたから会議の時間だと気づく』といったことは起こらない。自分で自分を律し、予定や進捗を管理し、情報も主体的に取りに行くなどの「セルフマネジメント力」が不可欠となる。人目がないためサボることもできるので、集中して生産性高く仕事を進められるかどうかは自分自身にかかっている。
一方、フル出社勤務では、常に周囲に人がいますので、「対人スキル」が重視されるのは当然と言えるかもしれない。周囲の集中や積極的な姿勢などに促されることも多いため、リモートワークに比べて「自己管理力」のポイントが低いこともうなずける。この結果は、働き方の違いが、「どんな方法で成果を出すのか」という仕事観にまで影響を与えていることを映し出しているのかもしれない。
「コミュ力」と「チームワーク力」は出社組の強み?
「コミュニケーション力」と「チームワーク力」における、勤務形態によるポイントの差にも注目できる。「コミュニケーション力」は17.4ポイント、「チームワーク力」は16.6ポイントも、リモートワークよりフル出社勤務において重視されている。働き方の違いが、必要とされるスキルの違いに直結していることが読み取れる。
出社勤務では、会議の空気感や、同僚の動きなどに気を配る必要があり、「何となく察する」「合わせる」「一緒に動く」といった、言語化しにくい「場のコミュニケーション」が発生する。また、エレベーター前やトイレ、カフェスペースなどで人に出くわせば、アドリブでの雑談や表情、声色などが信頼関係の構築や、根回しなどに役立つこともある。
「チームワーク力」についても同様で、チャットやビデオ会議が中心のリモートワークに比べ、士気の高低も伝わりやすいため、「全員が一体となっている空気感を作る」「本気度が伝わるように話す」なども求められるのかもしれない。このように、一口に「コミュニケーション力」「チームワーク力」と言っても様々なものがあり、出社勤務の場合には、より幅広い、もっと言うと"難易度の高い"「コミュニケーション力」が、日々の業務に深く組み込まれているのかもしれない。
ストレス管理力が出社で重要になる理由
「ストレス管理力」が、フル出社勤務のほうが重視されているという傾向にも注目できる。対面での人間関係では、相手の反応がポジティブであってもネガティブであっても、その影響は直接的かつ大きな刺激となる。また、出社することで満員電車での通勤や、たまたま居合わせたからやらなくてはならないことなど、自分ではコントロールしきれないストレス要因に晒される機会も多くなる。その"自分ではコントロールしきれない状況"の中で、前述の通り「より幅広く」「より難易度の高い」力が求められるとすれば、ストレスを管理する力が重要だと感じるのも無理はない。
これらの結果を踏まえると、出社勤務は、「対人スキル」や「ストレス管理力」鍛えられる働き方だと言える。一方、「パソコンスキル」がランクインするリモートワークでは、加速度的に進化していく様々なデジタルツールを素早く使いこなす、といった、柔軟で高度なデジタルスキルを磨いていけそうだ。