恐るべし日本ハムの”再生工場”!ファイターズ移籍で復活・躍進を果たした…

プロ野球 最新情報

 プロ野球の世界では、環境の変化によって苦しんでいた選手が復活、覚醒した例が少なくない。野村克也監督が選手を復活させた際には、「野村再生工場」という言葉が使われた。近年では、新庄剛志監督率いる北海道日本ハムファイターズに移籍した選手が復活、覚醒を果たしている。今回は、日本ハムに移籍して飛躍した選手を紹介する。(文・シモ)

田中正義

投打:右投右打

身長/体重:188cm/96kg

生年月日:1994年7月19日

経歴:創価高 - 創価大

ドラフト:2016年ドラフト1位


 

 最速157キロの直球で、創価大学時代から注目を集めた田中正義。だが、福岡ソフトバンクホークスではケガの影響で、満足な登板ができなかった。

 

 ソフトバンク時代での最多登板数は、プロ5年目の18試合。ソフトバンク時代の6年間はその実力と裏腹に、くすぶり続けていたのである。

 

 

 そんな田中の飛躍のきっかけは、プロ7年目の2023年、日本ハムへの移籍だろう。

 

 移籍1年目は抑えの石川直也の離脱にともない、抑えとして活躍。この年の田中は、47試合の登板で2勝3敗、25セーブ、防御率3.50と過去最高の成績を残した。

 

 昨季は、53試合の登板で4勝4敗、20セーブ、防御率2.17とさらに登板数を増やし、2年連続のオールスターにも選出された。


 

 時には笑顔を見せながら楽しそうに投げる姿、150キロを超えるストレートの威力に磨きがかかったところが、ソフトバンク時代との違いである。

 

 田中の例は、一歩間違えば引退までちらついた野球人生が、環境の変化と配置転換で輝いた好例だろう。

郡司裕也

投打:右投右打

身長/体重:180cm/89kg

生年月日:1997年12月27日

経歴:仙台育英高 - 慶応大

ドラフト:2019年ドラフト4位

 

 郡司裕也は、2023年に中日ドラゴンズから北海道日本ハムファイターズに移籍し、覚醒した1人である。

 

 強打の捕手として、2019年ドラフト4位で中日ドラゴンズに入団。プロ1年目から開幕一軍入りを果たしたが、なかなか定着とはならず。同年は30試合の出場で、打率.156、4打点の成績に終わった。

 

 

 プロ2年目は夏場に一軍昇格し、打率.462の成績を残すも、わずか9試合の出場で後半戦は二軍落ち。

 

 プロ3年目は、捕手以外に外野や一塁の守備にも挑戦。しかし、同年は33試合の出場で、打率.190と思うような成績を残せずに埋もれていく。

 

 なかなか芽が出ない郡司に転機が訪れたのは、プロ4年目の2003年6月のことだ。2対2のトレードによる、日本ハムへの移籍である。

 

 同年の日本ハム移籍後は、キャリアハイの55試合に出場し、打率.254、3本塁打、19打点と過去最高の成績を残す。

 

 そして、プロ入り5年目の昨季はさらに飛躍。127試合の出場で打率.256、12本塁打本、49打点をマークし、キャリアハイのシーズンを過ごした。

 

 パンチ力のある打撃を活かすために本来の捕手だけでなく、内外野と幅広く守り、出場機会を得たことが覚醒につながったのだろうか。

 

 ”再生工場”の異名を取る新庄剛志監督の慧眼が、郡司の再生に一役買っているのは間違いないだろう。

水谷瞬

投打:右投右打

身長/体重:193cm/100kg

生年月日:2001年3月9日

経歴:石見智翠館高

ドラフト:2018年ドラフト5位

 

 水谷瞬も、北海道日本ハムファイターズに移籍して花開いた選手の1人である。

 


 恵まれた体格から繰り出される長打力、俊足などが特徴の水谷。しかし、福岡ソフトバンクホークスでは厚い選手層の壁に阻まれ、一軍出場の機会が遠のいていた。

 

 

 ソフトバンクに入団後、5年もの間、二軍や三軍での出場機会しか得られずにくすぶっていたことになる。

 

 そんな水谷に、チャンスが訪れる。2023年オフの現役ドラフトでの、日本ハム移籍である。


 

 迎えた2024年、プロ入り後はじめて一軍に登録された水谷は、4月11日のソフトバンク戦で「6番・左翼」で出場し、プロ初安打・初打点を記録。

 

 同年のセ・パ交流戦では全18試合出場で28安打を放ち、交流戦最高打率.438、3本塁打、13打点の成績を挙げ、交流戦MVPに輝いたのである。

 

 9月4日のソフトバンク戦では、5-5の場面で逆転のタイムリーヒットを放った。その際、感極まって塁上で涙を流す場面には、胸を打たれた。

 

 同年は97試合の出場で打率.287、9本塁打、39打点とキャリアハイの成績をマークした。水谷の覚醒は、首脳陣の指導もさることながら、環境の変化、選手に公平に機会を与える新庄剛志監督の方針も要因だろう。

池田隆英

投打:右投右打

身長/体重:181cm/87kg

生年月日:1994年10月1日

経歴:創価高 - 創価大

ドラフト:2016年ドラフト2位

 


 力のある速球とスライダー、フォークなどを武器とする池田隆英も、北海道日本ハムファイターズに移籍して成績を伸ばした。

 

 東北楽天ゴールデンイーグルスでは、プロ2年目に15試合に登板。しかし、その後はケガなどもあり、二軍生活を送っていた。

 

 

 池田の転機は、プロ5年目の日本ハムへのトレードだ。移籍年の2021年には主に先発として18試合に登板し、好投するも援護に恵まれないなどして、3勝10敗の成績だった。

 

 移籍2年目には、7月10日の福岡ソフトバンクホークス戦に先発して6回3安打無失点でシーズン初勝利を挙げるも、わずか4試合の一軍登板と、思うような成績を挙げられずにいた。

 

 そんな中、翌2023年に、ソフトバンクにFA移籍した近藤健介の人的補償として田中正義が加入。高校・大学時代の同級生だった田中の加入は、池田にとって刺激になったのだろうか。

 

 同年、池田は新たに「8回の男」の地位を確立。この年の池田は抑えの田中とともに、試合終盤を締める役割を果たし、51試合の登板で26ホールドポイント(1勝5敗25ホールド)、防御率2.86の成績を残した。

 

 池田の覚醒は球速アップが実を結び、多彩な変化球が生きるようになったのも要因の1つだろう。田中とともに、今後も日本ハムを支える存在になりたいところだ。

齋藤友貴哉

投打:右投左打

身長/体重:184cm/92kg

生年月日:1995年1月5日

経歴:山形中央高 - 桐蔭横浜大 - ホンダ

ドラフト:2018年ドラフト4位

 

 150キロを超える重い直球とフォーク、スライダーなどを武器にする齋藤友貴哉。阪神タイガースでの4年間では、四球から自滅するパターンが多く不安定な投球が目立った。

 

 そんな中、なかなか一皮向けない齋藤に、転機が訪れる。2022年オフの、北海道日本ハムファイターズへの移籍である。

 

 

 移籍初年度の2023年は、右膝前十字靱帯断裂の影響で一軍・二軍の実戦登板はなしに終わるも、昨季に覚醒を果たす。

 

 2024年シーズン後半にブルペンの一角を担うと、レギュラーシーズン終了までに13試合連続無失点を記録したのである。

 


 同年9月23日の西武戦では自己最速の160キロをマークし、10月5日の楽天戦ではプロ初セーブを記録。同年はキャリアハイの25試合に登板し、1勝1敗、1セーブ、防御率1.71の成績を残した。

 


 なんと言っても、阪神時代に7点台、4点台、5点台と高かった防御率が、1点台に改善したのは素晴らしい限りである。

 


 齋藤の覚醒は、技術面の向上だけでなくメンタル面の強化も要因と思われる。四球を怖がらず、思い切り投げ込む感覚を掴んだことで、本来のストレートの強さが活かされるようになったのだろう。

 

 今季もリリーフの一角として、安定感のある投球を見せている。今後のさらなる飛躍に、期待せずにはいられない。

杉浦稔大

投打:右投右打

身長/体重:190cm/90kg

生年月日:1992年2月25日

経歴:帯広大谷高 - 国学院大

ドラフト:2013年ドラフト1位

 

 最速150キロの伸びのある直球とスライダー、フォークなどが持ち味の杉浦稔大。東京ヤクルトスワローズでは主に先発として投げていたが、ケガの影響もあり、なかなか一軍定着とまではいかずにいた。

 

 ヤクルト時代の登板数は、2016年の17試合が最高。先発としては11試合に登板し、3勝2敗、防御率7.14の成績であった。

 

 

 杉浦が日本ハムにトレード移籍したのは、2017年7月のシーズン途中である。

 

 すると、移籍4年目の2020年に飛躍。主に先発として17試合に登板し、7勝5敗、1セーブ、防御率3.13の成績を挙げたのである。

 

 移籍5年目の2021年には当時の栗山英樹監督のもと、抑えとして活躍。同年は56試合の登板で3勝3敗、28セーブ、防御率2.96の成績を挙げた。

 

 新たに就任した新庄剛志監督のもとでは先発としての登板もあったが、中継ぎでの役割が中心になった。

 

 昨季は40試合の登板で、17ホールドポイント(2勝0敗3セーブ、15ホールド)、防御率1.56とより安定感が増している。

 


 一端、制止する投球フォームをさらに二段モーション気味にしたことで球離れが遅くなり、直球の伸びと変化球のタイミングが取りづらくなったのが、飛躍の要因だろうか。

 

 今季はファームを主戦場としているが、チームのリーグ優勝・日本一を果たすためには、必要な戦力だ。

 

 

【了】