柴咲コウ主演の映画『兄を持ち運べるサイズに』(11月28日公開)の特報映像が25日、公開された。

11月28日公開の映画『兄を持ち運べるサイズに 』
2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

本作は、柴咲コウ演じる主人公・理子が、兄の死をきっかけにもう一度家族と向き合うことになる4日間を描いたヒューマンドラマ。監督を務めるのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』や『浅田家!』で高い評価を得た中野量太。5年ぶりの監督作となる本作に寄せる注目度は高い。

物語の中心は、マイペースで自分勝手な兄に幼い頃から振り回されてきた妹・村井理子。そんな理子を柴咲が繊細かつ力強く演じる。映画史上でも類を見ない"ダメ兄ちゃん"を演じるのはオダギリジョー。理子と兄、そして周囲の人々が織りなす人間模様は、滑稽さと哀しみを同時に孕んでいる。兄の元妻・加奈子を演じるのは満島ひかり。兄と加奈子の間に生まれた娘・満里奈には青山姫乃、兄と最期まで一緒に暮らしていた息子・良一には味元耀大が扮している。彼らがひとつ屋根の下に集まり、故人となった兄の後始末を通じて過去と向き合っていく。

公開された特報映像は、母の葬儀で泣き叫ぶ兄を冷ややかに見つめる理子の姿からスタート。「兄は身勝手で、1人では生きられない人だった」という理子のモノローグが、その関係性の複雑さを端的に示している。葬儀の最中に「この葬式でいったい幾ら稼いだんだ」と問を放つ兄に、理子は「心の底から軽蔑した」と言い放つ。2人の間に横たわる深い溝が、重く印象的に描かれている。兄の死後、しばらく疎遠だった親族たちが再び顔を合わせる。「お兄様のご遺体が発見されました」という突然の連絡が、理子を新たな物語へと導く。

集まったのは、兄に振り回されてきた妹、別れた元妻、その娘と息子。兄の遺品整理を進めながら、それぞれが家族としての記憶と向き合い、知らなかった一面に気づいていく。「自分たちはちゃんと見ていたのか」「家族だからこそ、伝えられなかったことがあるのではないか」――そんな問いを胸に、4人は兄の人生をなぞり直す。そしてこの4日間が、理子の内面に大きな変化をもたらしていくことになる。

柴咲は、「家族の物語を撮る監督に集うスタッフの皆さんもアットホームだった」と撮影を振り返り、「それぞれの家族があると思うが、自分の家族を顧みる瞬間が散りばめられていて、いい映画になるだろうなという予感がしています」と手応えを。役作りについては、監督から「理子は頑張り屋さん」と言われたことを受け、毎日自分で弁当を作ることから始めたという。人に頼らず、自分でやるという姿勢が、理子という人物に重なって見える。中野監督も、「初めての柴咲コウを撮りたい」という強い思いから、本作に臨んだとコメント。「過去の作品をたくさん見て、思いが強すぎて不躾なことも言ってしまったが、撮れた気がします」と語るその口ぶりから、作品への自信と柴咲への信頼がにじみ出ていた。

【編集部MEMO】

中野量太監督は、1973年7月27日生まれ。51歳。京都府出身。大学卒業後に日本映画学校(現日本映画大学)に進学し、卒業製作の『バンザイ人生まっ赤っ赤。』が日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞して注目を集める。卒業後は映画の助監督やテレビのディレクターを経て、6年ぶりに監督を務めた『ロケットパンチを君に!』がひろしま映像展グランプリに輝くなど7つの賞を獲得。2016年に『湯を沸かすほどの熱い愛』で商業映画デビューを果たし、『浅田家!』(2020年公開)など話題作を世に送り出している。