テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、20日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第16話「さらば源内、見立は蓬莱」の視聴分析をまとめた。
血塗られた刀と変わり果てた久五郎の姿
最も注目されたのは20時23分で、注目度69.6%。いわくつきの自宅で錯乱した平賀源内(安田顕)が背後から襲われるシーンだ。
源内は正気ではなかった。久五郎(齊藤友暁)が持ってくる煙草に手を付けるようになってから、次第に幻覚を見るようになった。源内は真夜中、弥七(片桐仁)に持ち去られた図面を探そうと、不吉の家と呼ばれるおのれの住処を徘徊した。そこに丈右衛門(矢野聖人)を見送りに外に出た久五郎が戻ってきたが、源内には久五郎が弥七に見えた。弥七は源内の評判を地に落とした張本人である。源内はエレキテルの図面を返せと久五郎に詰め寄ると、突如背後から何者かに刀で打ち据えられ、その場に崩れ落ち気を失った。源内を襲ったのは帰ったはずの丈右衛門だった。
「いい具合に効きましたねぇ。話も煙草も」「正気であるとは思えんな」源内の奇行の数々は、久五郎と丈右衛門の2人が仕組んだものらしい。「あとは自害にみせかけるだけにございますねぇ」久五郎がそう口にした瞬間、丈右衛門は久五郎を斬り捨てた。「すまぬなぁ。そろそろそなたも始末せよとの命でな」死体となった久五郎に丈右衛門は冷たく言い放つ。翌朝、気が付いた源内が目にしたのは血塗られた刀と変わり果てた姿の久五郎だった。「ああー!」昨夜の真相を知る由もない源内の絶叫はむなしく屋敷中に響いた。
今作でも1、2を争う鬱展開にコメント続出
注目された理由は、源内の身に降りかかる災禍に、視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。
エレキテルの不評から長屋を追い出された源内に手を差し伸べた久五郎と丈右衛門だが、2人の真の狙いは源内を排除することだった。優れた本草学者である源内だが、よほど追い詰められていたのか、久五郎に勧められるがまま怪しい煙草を吸いつづけ、とうとう幻聴が聞こえるまでに症状は悪化してしまった。そして久五郎も捨て駒でしかなく、あっさり丈右衛門に斬られる。
SNSでは、「明るかった源内先生があそこまで追いつめられるなんて…」「源内先生が生きてるとそこまで都合が悪いのかな」「穏やかな口調で源内さんを追いつめ、あっさり久五郎を斬った丈右衛門が底知れない感じで怖い」といった、今作でも1、2を争う鬱展開に視聴者のコメントが集まった。
物語では源内は久五郎と丈右衛門の2人と知り合ったばかりだったが、史実では久五郎は源内の門人であり、丈右衛門は仲の良い友人だったようだ。1779(安永8)年、神田の源内宅で3人は過ごしていたが、明け方に口論となり源内が抜刀したと言われている。2人は手傷を負い、久五郎はこの傷がもとで死去。源内は殺人犯として連行される。また、物語のように武家屋敷の普請の依頼を受けた源内が、酒に酔って修理の図面を盗まれたと勘違いして大工の棟梁を斬り殺したという説もある。いずれにせよ、源内が刀を抜いたというのは事実のようだ。
久五郎が用意した煙草だが、おそらくアヘンだと思われる。アヘンは材料のケシの種が室町時代に南蛮貿易によってインドから津軽地方にもたらされ、江戸時代には山梨県、和歌山県、大阪府付近などで栽培されていたようだ。しかし少量かつ高価であり、麻酔などの医療用や投獄者への自白剤など用途は限られていた。本件の黒幕はそんな高価なアヘンを惜しみなく使うことができる有力者であると推察されるが、やはり御三卿のあのお方なのだろうか。