東京商工リサーチは4月10日、「トランプ関税」に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は2025年4月1日~8日、企業5,372社を対象にインターネットで行われた。
「トランプ関税」業績への影響は
4月2日、トランプ米大統領が「相互関税」の導入を発表し、9日午後に発動されたが、翌10日未明に一時停止が明らかになった。不透明感を増す中、日本への税率はすべての国に対する一律10%の基本税率と国別に課される追加関税を合計した24%、自動車関税25%で、自動車産業などの製造業を中心に影響が懸念されている。
関税引き上げの影響について企業に質問したところ、「影響は生じていない」が46.2%(5,314社中、2,457社)でトップだった。規模別では、比較的内需型の企業が多い中小企業が46.9%(4,896社中、2,300社)で、大企業の37.5%(418社中、157社)を9.4ポイント上回った。次いで、「少しマイナス」が30.3%(1,610社)、「大いにマイナス」が22.0%(1,173社)で続き、「マイナス」回答を合算すると52.3%(2,783社)で半数を超えた。一方、「大いにプラス」の0.3%(19社)と「少しプラス」1.0%(55社)を合算した「プラス」回答は1.3%(74社)にとどまった。
産業別:「マイナス」が最も高い産業は製造業
「マイナス」が最も高い産業は、製造業で64.4%(1,424社中、918社)だった。製造業は輸出企業も多く、自動車産業などを中心に関税上昇の影響が深刻だ。規模の大きい企業では、アジア諸国など他国に生産拠点を持つ企業も多く、高い関税が課せられる国についてはサプライチェーンの見直しを迫られる懸念も高い。
次いで、卸売業が56.4%(1,045社中、590社)、運輸業が51.5%(227社中、117社)、農・林・漁・鉱業が51.2%(41社中、21社)と続き、上位4産業で「マイナス」が半数を超えた。「プラス」が最も高かった産業は、小売業で3.6%(273社中、10社)。次いで、不動産業(165社中、3社)と卸売業(1,045社中、19社)が各1.8%と続く。「プラス」が5%を超える産業は見られなかった。
業種別:「マイナス」上位10業種のうち8業種を製造業が占める
産業を細分化した業種別(回答母数10以上)では、「マイナス」の最高が、非鉄金属製造業の83.3%(24社中、20社)。次いで、鉄鋼業が79.4%(39社中、31社)、ゴム製品製造業が79.1%(24社中、19社)で続く。上位9業種で「マイナス」が7割を超えた。なお、上位10業種のうち、8業種を製造業が占めた。「プラス」の最高は、飲食料品小売業の5.5%(36社中、2社)だった。次いで、その他の小売業5.4%(129社中、7社)、映像・音声・文字情報制作業5.2%(19社中、1社)、繊維工業4.1%(48社中、2社)が続く。「プラス」の割合が1割を超えた業種はなかった。
「トランプ関税」にどう対応する?
トランプ大統領の相互関税への対応について聞き、951社から回答を得た。構成比の最高は、「特になし」の65.1%(620社)だった。10産業すべてで構成比が最高となった。導入の発表直後のため、自社への影響を精査している企業が多く、現時点では対応を決めかねている企業が多いようだ。
何らかの対応を行うとした企業では、「保有する原材料、仕掛品、在庫の量を減らす」が9.7%(93社)、「設備投資、拠点開設を取りやめる(または規模を縮小する)」が9.0%(86社)で構成比が高い。為替に関しては、社内の想定為替レートを「円高方向に見直す」とした企業が5.3%(51社)で、「円安方向に見直す」の1.0%(10社)を4.3ポイント上回った。金融機関からの借り入れは、「減らす」が5.6%(54社)で、「増やす」の3.5%(34社)を2.1ポイント上回った。借入を増やして資金繰りを維持したい企業よりも、過剰債務や返済不能リスクを軽減する意向の企業が多いようだ。このほか、「今年度の賃上げを取りやめる」2.7%(26社)、「来年度の賃上げを見送る」4.8%(46社)と、賃上げの実施に弊害が出るとした企業もある。
政策の注目点は「関税政策の在り方」がトップ
トランプ大統領の政策で注目することを聞き、5,372社から回答を得た。米国大統領の政策については2024年8月、10月、12月に続いて4回目のアンケートとなる。構成比の最高は、「関税政策の在り方」の54.7%(2,942社)だった。産業別では建設業、製造業、金融・保険業、不動産業、運輸業、サービス業他の6産業で構成比が最高となった。次いで、「通貨・為替政策の在り方」が52.4%(2,816社)、「台湾有事を含めた中国との関係性」が46.0%(2,476社)と続く。上位2項目で構成比が50%を超えた。
4月3日にトランプ大統領が「相互関税」の導入を発表したことが大きな話題となっており、12月調査と同様に、関税政策や通貨への関心が高かった。次いで、地政学リスクに関連した、中国やロシアとの関係性への関心が高い。今回新たに項目に追加した「日本独自の規制など非関税障壁への対応方針」は28.3%(1,524社)と、約3割の企業が関心を示した。「その他」では、「トランプ氏の政策実施による目まぐるしい環境変化に適応できるか」や「関税などが日本の消費税に影響を与えるか」、「USスチールの動向」などに関心を寄せる意見があった。