女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、漫画家・やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を演じている北村匠海にインタビュー。「運命を感じざるを得なかった」という柳井嵩役への思いや役作りについて話を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛ける。
朝ドラ初出演の北村は、オファーを受けたときの率直な心境を「びっくりしました」と告白。「朝ドラや大河は役者人生の指標になるもの」と捉えていたものの、映画『東京リベンジャーズ』シリーズやNetflix『幽☆遊☆白書』など激しいバトルを描いた作品への出演も多く、“朝の顔”というイメージがなかったという。
「最近、血だらけな役が多く、自分が朝を彩る朝ドラに出ていいのだろうか、務まるのだろうかという思いがありました」
DISH//として音楽活動もしており、撮影期間が長い朝ドラに参加できるのかという物理的な問題も考えたと言い、その上で「人生の一つのチャレンジとして挑戦したい」と出演を決めた。
制作統括の倉崎憲氏から、自身の死生観とやなせさんの哲学がハマるという話を聞き、「あなたしかいない」と言われたことにも心を打たれたという。
「やなせさんを演じるということにやりがいも感じますし、今だからこそちゃんと伝えなきゃいけないメッセージが非常に多くあると思っています。そのきっかけを僕に任せていただいたならば、精一杯やらせてもらいたいという気持ちでした」
やなせさんのインタビュー動画を役作りの参考に
昨年9月にクランクインしてから約半年。ちょうど半分程度撮影し、戦争シーンを撮っている最中だと明かす。
「のぶと別々の世界で、お互い人生でつまずいたり起き上がったりという段階。僕は戦争に行っていて、なかなか会えていない状況なので寂しいです。さっきは朝田家のシーンを撮影し、久々に軍服を脱いで朝田家にやってきたんですけど、しみじみしてしまいました」
役作りとしては、やなせさんのインタビュー動画がとても参考になったという。
「声と表情から見る情報がすごく助けになりました。戦争だったり、逆転しない正義ということへの思いを動画から学び、それを見ているうちに自分の中でいろんなことが腑に落ちて、やなせさんという偉大な方をモデルにした役を演じる上でパーツがやっとそろったなと思いました」
一般的に知られているのは、『アンパンマン』が知れ渡った後のやなせさん。その姿を見て、「ゴールを見たイメージだった」と語る。
「年齢を重ねて人生経験を踏んだやなせさんは、すごくユーモアもあるし、物腰も柔らかいですし。自分は最終的にここに行き着かないといけない、ここに至るまでの人生経験を柳井嵩として歩まなければならないという道筋が見えました」
そして、やなせさんに大きな影響を与えたのが戦争であり、「戦争を経てから、正義というものを嵩がのぶに対して言語化して伝えるシーンがあるのですが、そこに至る達観を戦争中に経験しなければならないという思いで今戦争シーンを撮影しています」と語った。