コスモエネルギーホールディングスのグループ会社であるコスモ石油マーケティングと岩谷産業が出資する岩谷コスモ水素ステーションは、「岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所」(東京都江東区)を開設した。バスの営業所内に水素ステーションを開設するのは日本初とのことだが、いったい何がすごいのか。現地に行ってきた。
燃料電池バスの普及を後押し
東京都交通局有明自動車営業所内にオープンした「岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所」は、バス営業所内で運営する日本初の水素ステーションだ。
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3月27日の開所式にはコスモエネルギーホールディングス社長の山田茂さん、岩谷産業会長兼CEOの牧野明次さん、岩谷コスモ水素ステーション代表職務執行者の喜村博さんに加え、東京都副知事の松本明子さん、資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長の伊藤禎則さんらが参加した
本ステーションは東京都内における水素供給インフラのさらなる拡充を目的とし、燃料電池バスの水素供給拠点としての役割を果たす。
現在、都営バスでは80台の燃料電池バスを運行しているが、東京都では本ステーションの開設を機に、令和9年度までに台数を100台まで拡大する方針。水素ステーションの整備と燃料電池バスの導入拡大を一体で推し進める相乗効果によって、脱炭素社会実現を一気に加速させる狙いだ。
1時間に8台以上の充填が可能!
ステーションの敷地面積は約1,000㎡。供給方式は液化水素貯蔵(オフサイト型)だ。
貯蔵エリアには液化水素タンクと水素ガスホルダーの2つのタンクを完備。液化水素タンクは魔法瓶のような二重構造となっていて、液化水素をマイナス253度の状態で約3,000kg(バス200台分)貯蔵できる。
一方、液化水素は低温保存すると、一部の液が蒸発してしまう。通常のケースでは、蒸発して圧力が上昇した水素ガスは大気中に放出するそうだが、本ステーションではロスを防ぐため、併設した水素ガスホルダーに蒸発した水素ガスを貯蔵。これを再利用して燃料電池バスに充填することで、ロスを極力防ぐ仕組みになっている。
本ステーションでは、心臓部となる液化水素ポンプに、初の国産となる三菱重工業製の液化水素ポンプを採用しているところもポイントといえる。
この液化水素ポンプは、液化水素を液体のまま82Mpaまで昇圧可能。高圧状態のまま蓄圧器に溜めて燃料電池バスに充填する。供給能力は120kg/h以上で、1時間に8台以上の燃料電池バスに充填できるという。
「岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所 開所式」に登壇したコスモエネルギーホールディングス社長の山田茂さんは、「本ステーションを持続可能な社会の実現に向けた現実解のひとつ、かつサプライチェーンの充実という点において非常に重要なプロジェクト」と位置付ける。
その上で、「まだまだスタートしたばかりの事業ですが、脱炭素社会を目指し、今後さらなる水素ステーションの普及に向けて、一層の取り組みを重ねてまいります」と将来への意気込みを語っていた。