女優としての覚悟を固めた中で挑んだ『地震のあとで』も、とても大切な作品になったと言い、プライベートで親交があり今回初共演となった岡田将生と対峙して芝居の楽しさを改めて感じたという。
唐田は『寝ても覚めても』、岡田は『ドライブ・マイ・カー』で濱口竜介監督の作品を経験。唐田は「岡田さんは私にとって大先輩ですが、同じ濱口組を通っているということで感覚がどこか似ているなと感じるところがあって、本読みのときからお互いどうやってくるんだろうと探り合いをしている感じがして、昔の作品を超えていきたいという思いもありますし、そのぶつかり合いができてすごく楽しかったです」と振り返る。
さらに、「岡田さんと対峙するシーンで悔しいと感じた瞬間があって」と打ち明け、「自分はシマオとして、小村をわかり切って、どこか操っているような芝居をしていたのに、岡田さんの顔を見たときに、今まで先にいたはずなのに引き戻されたような感覚になって、自分の想像してないところに連れていかれたというのが悔しいという気持ちになりました」と説明。「そういった感覚になったのは初めてで、相手の芝居を受けて自分の想像してないところに行けたというのがすごく楽しくて、役者として新しい経験をさせてもらえてありがたいなと思いました」と語る。
本作の制作統括は、唐田が初めてヒロインを務めた映画『寝ても覚めても』でプロデューサーを務めた山本晃久氏。唐田は山本氏と再び仕事ができたことも「とてもうれしかった」と笑顔を見せ、山本氏の言葉がきっかけでほかにも新しい挑戦ができたと明かす。
「私はプランを固めず感覚的にお芝居することが多く、ずっとそういう風にやってきたのですが、今回山本さんから『考えた演技にも挑戦してほしい』と言われて、シーンごとに山本さんから『考えてみて』と導いてもらいながら演じました。だからこそ、今まで以上にみんなで作ったという感覚があって、現場の楽しさを改めて感じました」
挑戦してみて、感覚ではなく考えた演技は「私には向いてないかも」と感じたものの、新しい芝居のやり方を学べたことはとてもいい経験になったという。
「どういう風に演じようか考えてみましたが、現場に入るとそれが飛んでしまって、結局考えられないなと思ったのですが、違うやり方を知る機会になりました。そういう風に言ってくださる方がいることのありがたさも感じましたし、刺激になる部分がたくさんあったので、日々勉強という感じで。これからも自分の幅を広げていけるように勉強していきたいです」
カンヌ映画祭に参加して芽生えた目標「世界三大映画祭に行くこと」
2023年に韓国との2拠点生活を送る意向との報道もあった唐田。現状を聞いてみると、「2拠点で生活しているわけではなく、韓国の事務所にも入っているのでうまく2つでやっていけたらという思いです」と答え、「今は日本で頑張りたいという気持ちですが、時間があるときに韓国のお芝居のワークショップを受けたり、韓国でも活動していけるように時間を使っていけたら」と語った。
女優としての目標は「世界三大映画祭に行くこと」だという。
「カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの映画祭に行ってみたいなと。20歳のときに『寝ても覚めても』でカンヌ映画祭に立たせていただいたときに、うれしさももちろんありましたが、濱口監督の力でしか自分がここに立ってないという悔しさや焦りも同じぐらい感じて、いつかここに堂々と立てるような役者になりたいとあの時に思い、それを目標にしています」
連れて行ってもらうのではなく、自分もしっかり貢献できたと胸を張って参加できるように。
「作品はいろんな人の力によって成り立っているものだと思うので、自分が引っ張っていくというよりも、この作品に自分はちゃんと力を注げて、作品の一部になれたという自信を持って立ちたいなと思います」
最後にファンに向けて、「今後もいろいろと楽しんでいただける作品をお届けしていきたいと思っているので、ぜひ見ていただきたいです」とメッセージを送った。
1997年9月19日生まれ、千葉県出身。2014年、高校生のときにマザー牧場でスカウトされ、同年、少女時代のミュージックビデオ「DIVINE(Story ver.)」に出演して芸能活動を開始。2015年、フジテレビ系ドラマ『恋仲』で女優デビュー。2018年、映画『寝ても覚めても』で初ヒロインを務め、山路ふみ子映画賞新人女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2024年、Netflix『極悪女王』で長与千種を演じて注目を集め、第77回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』にも出演。今年は『死に損なった男』が2月21日に公開され、4月11日に『Page30』、晩夏に『海辺へ行く道』が公開予定。