――難しい役どころだったと思いますが、特に苦労した点を教えてください。
1日の撮影の中で最初に登場する時の銀、復讐前、復讐後など、全く違うタイプの銀を演じないといけないこともあったので、そのグラデーションをどう表現していくか事前に監督と綿密に打ち合わせを行いました。そして、衣装やヘアメイクも手助けしてくれて、気持ちの変化を表現しやすくなった気がします。
――衣装やメイクに関して印象に残っていることをお聞かせください。
最初はメイクもすっぴんに近い雰囲気で、無垢そうでどこにでもいそうだけど美しさがある女性を表現しました。そこから紅を入れることで、銀が山で生活を始めてからは口元が血のような色になり、そして後藤家の当主になってからはまたさらにきれいに紅を入れました。髪型も、山にいるときは邪魔にならないように三つ編みにしていて、後半は倍賞さんの銀を彷彿とさせるような髪型にしていただきました。衣装も妖艶な感じのときは蝶がデザインされた紫の着物を着ていて、羽ばたけない銀というか、その村から出られないというのを表しているようにも感じて、すごく気に入っていました。
――蝶の衣装は恒松さんご自身で決めたのでしょうか。
蝶のデザインだけでなく色も素敵だなと思って、衣装合わせの際にみなさんと話し合って決めました。山で生活を始めるシーンではいろんな人からはぎ取ったお着物をレイヤーして重ね着していて、その衣装もお洒落で本当にかわいいんです。いろんな工夫がされていて、小道具にもこだわっているので、衣装、髪、メイクの変化にも注目していただきたいです。
――妖艶さと狂気さに満ちた演技で見事に銀を表現されていましたが、新しい挑戦になったのでは?
映画『タイトル、拒絶』など、女性ならではの悲しみややるせなさを爆発させる役は何回か演じたことがありましたが、銀のように村の全員から嫌悪感を抱かれ、誰も味方がいないという役は経験がなかったので、とても難しかったです。銀は倉(悠貴)さん演じる正宗を惑わしていく役柄ですが、惑わす芝居もあまり演じたことがなくて。漫画だと正宗を操るときにニヤリとわかりやすく笑っていましたが、ドラマでは生身の人間が演じるので、実際はちょっとしたラブロマンスがあるのではないかという話になり、正宗の純粋さに心が動いているのか、どちらかわからない絶妙な具合を監督と相談しながら演じました。
――完成した作品を見て、どのように感じましたか?
山奥で撮影していたので現場ではモニターチェックがあまりできるような環境ではなくて、完成した映像を観てとても美しく撮っていただいていたんだなと改めて感じました。2~3月頃に雪山で撮影していて、お着物だったのでとても寒かったのですが、着物の黒と雪の白、雪の白とリップの赤が映えていて、映像を観て感動しました。
――雪山で着物というのは、相当薄着ですよね?
そうなんです。でもとても美しい映像になっていたのでうれしかったです。
1998年10月9日生まれ、東京都出身。2005年にドラマ『瑠璃の島』で子役としてデビューし、2009年『キラー・ヴァージンロード』で映画デビュー。2019年公開の映画『凪待ち』で『おおさかシネマフェスティバル2020』新人女優賞を受賞。代表作は、ドラマ『おかえりモネ』『泣くな研修医』(21)、『ザ・トラベルナース』(22)、『リバーサルオーケストラ』(23)、『わたしの宝物』(24)、映画『きさらぎ駅』(22)、『Gメン』(23)、Netflix『全裸監督 シーズン2』(21)『今際の国のアリスシーズン2』(22)、『御手洗家、炎上する』(23)など。『きさらぎ駅 Re:』が6月13日公開予定。
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