コスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの3社が設立した合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア スカイ エナジー)は、国内初となる「SAF」(Sustainable Aviation Fuel)の量産を開始した。そもそもSAFとは何なのか。初の量産の何がスゴいのか。説明会で聞いてきた。

  • コスモ石油らのSAF製造に関する会見

    記者説明会に登壇したコスモ石油 次世代プロジェクト推進部プロジェクト推進グループ長の山本哲さん(写真左)、次世代プロジェクト推進部長の髙田岳志さん(写真中)、 サステナビリティ協創ユニット プログラムマネージャーの日揮ホールディングスの西村勇毅さん。山本さんと西村さんはサファイアスカイエナジーのCOOも兼任している

CO2削減効果に加えコスト面のメリットも

廃食用油を原料にした持続可能な次世代航空燃料であるSAFの製造事業を3月6日に開始したコスモエネルギーグループ。2025年度は年間3万キロリットルのSAF供給を目標とし、2030年には年間30万キロリットルまで増産する計画だという。

2023年3月に「Vision2030」を公表したコスモエネルギーグループ。「未来を変えるエネルギー、社会を支えるエネルギー、新たな価値を創造する」のスローガンの下、「グリーン電力サプライチェーン強化」「次世代エネルギー拡大」「石油事業の競争力強化・低炭素化」の3つのカテゴリーに取り組んでいる。SAF製造事業は「次世代エネルギー拡大」に関する取り組みだ。

SAFのメリットは大きくわけて2つある。ひとつは、生産から消費までのライフサイクルでのCO2排出量を従来の原油由来の航空燃料と比べて大幅に削減できること。もうひとつは、貯蔵設備や燃料供給などの既存インフラがそのまま使用できることだ。そのため、新たな投資を必要とせず、コストをかけずに利用することができる。

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    廃食用油を原料にするSAFは、従来の原油由来の航空燃料と比べてライフサイクルベースでCO2排出量の84%を削減できるという

SAFのサプライチェーンは?

まさにサステナブル燃料といえるSAFは現在、世界的に需要が高まっている。日本は2030年にエアラインによる国内使用燃料の10%(約171万キロリットル)をSAFに置き換えるという目標を設定している。

コスモ石油は「廃食用油原料のSAF事業」「バイオエタノール原料のSAF事業」「海外で製造されたSAFの輸入検討」の三本柱を軸に、2030年に年間30万キロリットルの供給を目指す方針だ。

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    「バイオエタノール原料のSAF事業」は2029年以降の設備完工と運転開始を目指して検討中。実現すれば年間15万キロリットル規模での供給が可能になる。SAFは国内での製造を基本とするが、設備の定期点検や予期せぬトラブル時のバックアップとして「海外で製造されたSAFの輸入検討」も進めていく

今回スタートした「廃食用油原料のSAF事業」は、国内初のSAF量産化事業となる。2025年度は年間3万キロリットルの供給が目標だ。

原料の調達から需要者である航空会社への供給までのサプライチェーンは、2022年11月にサファイアスカイエナジーを設立したコスモ石油、日揮HD、レボインターナショナルの3社が連携して取り組む。

具体的には、コスモ石油大阪堺製油所構内に新設した設備の建設を日揮が、原料の調達は従来から廃食用油を原料としたバイオディーゼルの生産を手がけてきたレボインターナショナルが担当。コスモ石油とコスモ石油マーケティングは製造・販売および輸送を受け持つ。

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    SAF製造事業のサプライチェーン

「廃食用油原料のSAF事業」では、国際民間航空機関(ICAO)の「CEF」に加え、廃食用油の回収から製造・輸送、需要家までの全サプライチェーンで国際持続可能性カーボン認証(ISCC)である「ISCC CORSIA」「ISCC EU」「ISCC PLUS」を取得している点もポイントだ。

これにより、製造される3万キロリットルのSAFは、国際基準を満たしていることが保証されるとともに、国際航空においてもSAFによる温室効果ガス(GHG)の削減効果を主張できるそうだ。

家庭から出る廃食用油も飛行機の燃料に?

コスモ石油は製造したSAFをJALやANA、海外エアラインのDHLなどに供給する。その他にも供給が決まったエアラインがあるとのことだ。

今後の生産量増加と供給安定化に向けては、原料となる廃食用油をいかに回収するかが課題となる。この点についてコスモ石油 次世代プロジェクト推進部長の髙田岳志さんは、事業系と家庭系の2系統から原料回収にアプローチしていくと説明する。

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    「SAFをしっかり生産をして、無事に供給できるよう頑張っていきたい」と意気込みを語った髙田さん

事業系については大手排出元企業と提携する。すでに、スシローなどを展開するFOOD & LIFE COMPANIESや丸亀製麺などを展開するトリドール、東京メトロなど多くの企業との間で基本合意書の締結を進めており、今後は多くの廃食用油の回収が見込めるという。

家庭系の回収も重要だと髙田さん。東京都のイベントや堺市との連携協定などを通じて、従来は廃棄されていた家庭から排出される廃食用油も資源循環につなげていきたい考えだ。

記者説明会の最後に髙田さんは、「原料調達からエアラインへの供給までの一連のネットワークを作り上げ、本事業をしっかりと進めていく所存です」と力強く宣言していた。