
世界14カ国/地域の編集部が選ぶローリングストーン誌の「Future 25」。日本版が独自にピックアップした2025年の"日本代表"25組を一挙紹介する。
「Future of Music」はローリングストーン誌が展開する、”未来の音楽のあり方”をテーマとした特集プラットフォーム。その中心コンテンツ「Future 25」では、ジャンルやルーツの垣根を超えて25組の新進気鋭アーティストを毎年選出し、次世代のキーパーソンを紹介してきた。2023年に本国USでスタートした本特集は、翌年から世界各地の編集部が独自にアーティストを推薦するグローバル・プロジェクトへと発展。国際化が進む音楽シーンの最前線を捉えている。
Rolling Stone Japanでも昨年刊行のvol.26にて、同号の表紙を飾ったMAZZEL、最新号vol.30カバーのME:Iなど「Gacha Pop」時代の多様性を反映した"日本代表"を選出し、大きな反響を集めた。2度目の「Future 25」となる今回も、勢いが止まらない3人組・Chevonを筆頭に、トランス・レイヴクルー、オルタナの新鋭、バーチャルバンド、サイバーラウドロック、フューチャーソウル、ボカロカルチャー、J-POPの音像や価値観を刷新するライジングスターまで、各方面からユニークな顔ぶれが集結している。今年5月には国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」の開催を控えるなど、日本の音楽シーンが世界とのつながりを深めていくなか、若きイノベーターたちの躍動から明るい未来が見えてくるはずだ。(小熊俊哉)
最新号vol.30では全36ページの大型特集「Future of Music」をフィーチャー。バックカバーにはChevonを起用
Photo by Yukitaka Amemiya
「Future of Music」はグローバル連動企画。US版編集部は過去2年の「Future 25」でNewJeans(現・NJZ)、ペソ・プルマ、ドーチー、おとぼけビ〜バ〜、チャペル・ローンなどを取り上げてきた。今年はベンソン・ブーンなど4組が同特集号の表紙を飾る
Photo by Kanya Iwana
◆「Future of Music」日本版選出アーティスト
Chevon
救い、救われる。だから私の人生を歌う
Photo by Yukitaka Amemiya
ネットが影響力を持ちすぎた時代を、Chevonは逆行する。否、次に進むべき道を切り拓いている。そのライブは一度観れば誰もが心を鷲掴みにされてしまうもので、ChevonはSNSではなく現場で一人ひとりの人生を揺さぶって、急速に動員数を増やしている。そうして結成4年目にして、最もチケットが取りづらく、全国のフェスやイベントからオファーが絶えないバンドになった。「ルールを塗り替え、記録を塗り替え、音楽の未来を定義する、最もエキサイティングなアーティスト」として私たちはChevonを送り出す。(矢島由佳子)
※3月25日発売「Rolling Stone Japan vol.30」にインタビュー掲載
みんなのきもち
熱狂と衝動を生み出すトランスクルー
Photo by nate
2021年に東京のレイヴシーンに突如現れた〈みんなのきもち〉は、国内外でカルト的な人気を誇るトランス・パーティ・クルー/DJユニットだ。Boiler Roomへの出演をきっかけに全世界にその名前が知れ渡り、グラストンベリー・フェスティバル出演のほか、ベルリンの名門クラブ・ベルグハインでのパフォーマンスも高い評価を得た。トランスやアンビエントを中心に電子音楽の境界線を旅しながら、フロアに桁違いの熱狂を生み出す彼らは、シーンの全ての人に「生」の衝動を呼び戻す。(原田圭)
※3月25日発売「Rolling Stone Japan vol.30」にインタビュー掲載
kurayamisaka
日本のオルタナを世界へ、躍動する5人組
2022年に東京・大井町で結成。フジロック'24のROOKIE A GO-GO、NME「2025年注目すべき世界中の新鋭アーティスト100組」に選出されるなど、国内外で注目度が高まっている。バンドの創始者であるギタリスト・清水正太郎が手がける楽曲は、グランジや90年代オルタナギターロックに歌謡曲的なメロディが乗ることもあれば、ポストロックやシューゲイザーで押し切ることも。自らのルーツを変幻自在に落とし込み、5人の伸び伸びと躍動する演奏がその魅力を最大限にスパークさせる。(小松香里)
※3月25日発売「Rolling Stone Japan vol.30」にインタビュー掲載
夢限大みゅーたいぷ
バーチャルとリアルの「壁」を壊す
Photo by Mitsuru Nishimura
声優がキャラクターとして実際にバンド活動を行うスタイルの先駆けとなった人気コンテンツ「BanG Dream! (バンドリ!)」発の5人組、”夢(バーチャル)と現実(リアル)を飛び越える運命共同体(バンド)”と銘打つ夢限大みゅーたいぷ(通称:ゆめみた)は、Live2Dアバター(バーチャル)を使った配信活動と生身(リアル)でのライブ活動を並行して行う新しいタイプのバンドだ。国境どころか次元の壁も越えて世界に羽ばたかんとする彼女たちのカオスの根源に迫る!(北野創)
※3月25日発売「Rolling Stone Japan vol.30」にインタビュー掲載
HANA
社会に革命を起こす、ちゃんみなプロデュースの7人組グループ
社会の中で突きつけられた「No」に「No」を掲げる。そんなメッセージをもって始まった、ちゃんみながプロデュースするオーディション「No No Girls」には国内外から7000通を超える応募が集まった。そこから選ばれた7人で結成されたのが、HANAだ。HANAはガールズグループ界のみならず、社会に革命を起こす存在になるだろう。ちゃんみなが名曲「美人」をはじめとした数々の楽曲やパフォーマンスで、少しずつ世の中の価値観を動かしてきたように。そう言いたくなるのは、HANAに向けられている声援の色がすでに、これまでの類とは異なるから。誰かが決めた一定の基準に則ったものだけを「かわいい」「美しい」「かっこいい」と呼ぶのではなく、一生懸命に生きる人間の姿こそ「かわいい」「美しい」「かっこいい」ことをHANAは体現し、ファンはそこに歓声を上げている。孤軍奮闘してきたちゃんみなは、もう独りじゃない。彼女が起こしたポジティブなエネルギーはHANAとともにより強く、大きく、渦巻いていく。(矢島由佳子)
AKASAKI
TikTokでバイラル、高校生シンガーソングライター
〈夜の始まりさ Bunny Girl〉――そのキャッチーなリズムとフレーズは、瞬く間に広がっていった。2023年9月にTikTokを始めたAKASAKIが、2024年7月から「Bunny Girl」の一部を投稿すると、ショート動画が次々とバイラル。10月2日に配信リリースするとすぐに各チャートにランクインを果たし、現在はストリーミング再生数1億回を突破している。テレビ番組『EIGHT-JAM』の「プロが選ぶ年間マイベスト10曲」ではいしわたり淳治が「波まかせ」を選出し、「大人っぽい歌声が印象的で、メロディと言葉のセンスに非凡なものを感じます」とコメント。AKASAKIの歌声、メロディ、歌詞は日本らしい情景や歌謡曲などで歌われた古き良き情感を浮かび上がらせるもので、海外からのシティポップ人気が高い中、まだまだ世界へと広がっていくポテンシャルを持っている。この春に高校を卒業し、これから全国のフェスに出演するなど音楽活動をさらに加速させていく。(矢島由佳子)
Billyrrom
「風」のソウルでアジアを席巻、進化を続ける6人組
ビル・エヴァンス譲りの「流されないマインド」と、移動型民族・ロマ民族譲りの「自分たちの音楽をさまざまな場所から発信していく」という信念に基づいた、「トーキョー・トランジション・ソウル」を掲げるBillyrrom。メンバー全員が町田市出身で、ブラザーフッド感が強いのも特徴だ。2024年発表の1stアルバム『WiND』は「Walk in New Direction」の言葉通り、これまでの代名詞であるアシッドジャズ由来のダンサブルな曲調に加え、スケール感のあるプログレッシヴ・ロックなどの幅広い楽曲を収録し、新たな方向性を提示してみせた。Spotify「RADAR: Early Noise 2025」に加えて、中国・NetEase Cloud Musicの新人音楽賞にも選出。台湾のバンド・Wendy Wander(溫蒂漫步)とはコラボ曲も発表していたが、2025年はすでに3月に韓国のフェス、4月に中国のフェスへの出演が決定し、本格的なアジア進出の一年になりそう。東京を起点に、どこまでトランジションしていけるか?(金子厚武)
▼INTERVIEW
Billyrrom、「風」の時代に台風の目となる6人が語る自信と挑戦
CLAN QUEEN
抜かりない総合アートで世界観を構築
yowa(Vo)、AOi(Gt)、マイ(Ba)の3人による新世代ユニット、CLAN QUEEN。緻密、かつ、大胆不敵に構築された高密度なミクスチャーロックの数々に共通するのは、ダークにして深淵な世界観。そして、その世界観の奥行きと深みをいっそう大きなものにしているのが、ミュージックビデオやアートワーク、ライブの映像演出をはじめとした各クリエイティブだ。それぞれの制作はメンバー自身が手掛けていて、そうした既存のバンド観に捉われないアクションの一つひとつが、3人が標榜する”アートロック”の進化・拡張へと繋がっている。聴覚だけではなく、視覚をも鮮烈にジャックする各クリエイティブは、言語の壁を越え、海の向こうへとリーチし得る大きなポテンシャルを感じさせる。ライブにおける没入体験も特筆すべきもので、2025年は、即完が続いていたワンマンの会場の規模が拡大。大型フェスへの出演も次々と決まっている。(松本侃士)
▼LIVE REPORT
CLAN QUEEN、WWW Xで送り届けた壮大で深淵な総合芸術
CVLTE
未来へ突き進むサイバーラウドロック
国境を越えてワールドワイドな支持を得ている昨今のラウドロック勢だが、中でも北海道から世界へと飛び出したCVLTE(カルト)はその筆頭だろう。海外バンドが来日するたびにオープニングアクトを務め、昨年リリースしたアルバムでもオーストラリアのラッパー・サイプラス、アメリカ発のビューティ・スクール・ドロップアウトといったバンド、ハイパーポップ・アーティストのrouri404など幅広い面々とコラボレーション。海外のフェスにも積極的に出演し、怒涛の勢いで世界のファンの心をつかまえている最中だ。ボーカルのaviel kaeiはアルゼンチンにもルーツがあり、そのバックグラウンドはサウンドや映像、活動スタイルなどバンドの美学に大きな影響を与えている。最新作『realitYhurts.』は、エレクトロニック・ミュージックを基軸にサイバーな美意識を具現化。特定のジャンルに収まりきらない感性は、昨今隆盛するY3Kトレンドとも共鳴する新たな解釈を提示している。(つやちゃん)
f5ve
異次元サウンドを届けるドリーム・エージェント
「チカチカチカチカチッカチカ~♪」という妙に頭から離れないフレーズに聞き覚えはないだろうか? パラパラダンスやデコトラをフィーチャーしたMVのインパクトもあって、2024年、SNSでバズったその楽曲「Underground」を歌っているのが、LDH所属のガールズグループ、f5ve(ファイビー)だ。メンバーは、E-girls/Happinessでの活動で知られるKAEDE、SAYAKA、RURI、MIYUU、iScreamとしても活躍中のRUIの5名。エグゼクティブプロデューサーを務める世界的プロデューサーBloodPop®の視点、いわば”海外から見たJ-POP観”を踏まえつつ、A. G. Cookらを制作陣に迎えることで、K-POPとはまた違った角度の先進的かつキャッチーなダンスポップを生み出している。3月にはキラキラと蠢くシンセがハイパーな新曲「Magic Clock」を届けたばかりで、あらゆる次元の夢を叶える”ドリーム・エージェント”として活動する彼女たちのポジティブパワーが世界を席巻する日は近そうだ。(北野創)
▼INTERVIEW
f5veが語る、東京発の異次元サウンドを支える姿勢「ありのままでいることの素晴らしさ」
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沖縄から世界へ。海外フェスにも出演する3人組
2020年結成、沖縄を拠点に活動する3人組。seigetsu(Vo)はR&B、ソウルミュージックを、shun(Gt)はUKロック、シューゲイズ、グランジを、o-png(PC)はクラブミュージック、ヒップホップをルーツにし、グローバルトレンドをしっかりと捉えた上で、確固たる美意識を持ちながら新たなポップスを生み出している。1stシングル「Lucy」から話題を集めたが、インディロックとビートミュージックが交差するビート、シンセリフ、歌声はどの作品においても非常に心地良い。海外からの注目も高く、すでに韓国、シンガポール、台湾、モンゴルのフェスに出演した実績がある。2024年11月、東京・渋谷WWWにて行われたワンマンライブのフロアには年齢も人種も様々なオーディエンスが入り混じっていて、多幸感溢れるパーティができあがっていた。o-pngは美術系の大学にてデザインを専攻しており、彼が手掛けるアートワークも重要なシンボルになっている。(矢島由佳子)
▼INTERVIEW
hyunis1000
ビートとラップで言葉を躍動させるアーティスト
神戸をベースに活動する2000年生まれのラッパー/ビートメイカー、hyunis1000(ヒョンイズセン)。相方ratiffと結成したNeibissというラップ・デュオのメンバーとしても知られる。ラッパーでありながらヒップホップの枠を超えて電子音楽、ダンスミュージックのシーンを自由に行き来し、2022年にはイギリス・ロンドンを拠点とするアンダーグラウンド・パーティー「Keep Hush」の京都編にも出演。ライブパフォーマンスを行った。近年ではバイレファンキやレゲトン調のトラックをみずから制作した上で、軽々とラップもこなすスキルの高さを見せ、自身の趣味趣向をフットワーク軽く音楽に落とし込む天才だ。Red Bullが日本のヒップホップシーンにフォーカスして企画したマイクリレーのシリーズ「Rasen」にも参加するなどラッパーとしても注目されており、日本語を打楽器がごとく解釈し、音と意味で作る言葉遊びの自由さが魅力のアーティストだ。(MINORI)
KAIRUI
繊細で幻想的なボカロ・エレクトロニカ
いま、ネットカルチャーの一番おもしろい部分が交差する場所に立っているのが、ボカロPのKAIRUIだ。2021年に処女作「空想」を発表し、2022年の初EP『海の名前』が耳の早いリスナーの間で話題になったその作風を端的に説明するなら、プリズマイザーなどのエフェクトを加えたボカロの声が独特のノスタルジーを呼び起こすグリッチーなエレクトロニカ。そこにメランコリーな旋律とロマンチックな歌詞が合わさることで生まれる幻想的な世界観の引力はすさまじく、老舗ネットレーベルのMaltine Recordsからリリースされた1stアルバム『星の私』はRate Your Musicのランキング上位に食い込むなど海外でも評判に。ボカロ曲だけでなく、星宮とと、WaMiといったシンガーとのコラボ曲を発表しているほか、2024年からは新進気鋭のクリエイティブチーム・PROTOCOLLONに参画。レトラや夜羽咲クロネといったVTuberに楽曲提供を行うなど、近年はクリエイターとしても注目を集めている。(北野創)
luv
親密かつスタイリッシュなフューチャーソウル新世代
全員2003年生まれ、関西出身/在住で、メンバー4人が現役大学生の5人組。シティポップのリバイバルが起きた2010年代の国内バンドシーン、90年代のアシッドジャズやネオソウル、その双方から影響を受け、スタイリッシュで親しみやすい、2020年代的なポップバンド像を目指す。中心人物のHiynはソロアーティスト「ミヤケ武器」としても活動し、過去にはWEST.に提供した「膝銀座」がTikTokでバズを起こすなど、現代的な作家としての顔も持っている。メジャーデビュー曲「Fuwa Fuwa」が台湾のバイラルチャートでトップ3入りを記録したのに続き、結成からの最初の集大成となったミニアルバム『Already』からのリードトラックで、”銭湯ダンスチューン”としても話題の「Send To You」は香港や韓国も含めたアジアの各地でバイラル中。3月にはSXSWへの出演も果たし、この年代から海外にアピールできるのは2010年代との大きな違いだと言えよう。(金子厚武)
▼INTERVIEW
luvが語る 2020年代のバンドならではの上昇曲線、アシッドジャズやネオソウルへの愛情
Mei Semones
ジャズ、ボサノヴァ、日米のルーツを繋ぐ声とギター
日本人の母をもち、ブルックリンを拠点とする芽衣シモネス。バークリー音大でジャズとギター演奏を学んだ24歳の彼女は、親友のジョン・ローズボロと共にポスト・ボサノヴァを追求しつつ、マスロックさながらの変拍子も巧みに操る。さらに驚かされるのはマジカルな歌唱表現だ。日系アメリカ人としてのアイデンティティに向き合い、日本語と英語をまたぐ歌詞に、素朴な声質と卓越したリズム感が組み合わさることで、邦楽/洋楽の枠を超えた新時代のポップスを開拓している。昨年リリースのEP『かぶとむし』はレッチリのフリーに絶賛され、台湾のElephant Gymともツアーを廻った。今年5月に発表される初のアルバム『Animaru』は、持ち前のアルペジオ、ストリングスを織り交ぜたバンド演奏、詩情豊かなメロディなど、あらゆる面でスケールアップを遂げた傑作となっている。この夏にはフジロック出演も決定しており、飛躍の一年となるのは間違いないだろう。(小熊俊哉)
▼INTERVIEW
Mei Semonesが語るジャズ、ボサノヴァ、J-POPの融合「これこそ私が望んでいた音楽」
梅井美咲
溢れ出る好奇心でジャンルを飛び越える鍵盤奏者
4歳からピアノ、6歳から作曲を始め、現在23歳の梅井美咲は常に未知を求めて、言葉では表現できない感情を探して、音楽という名の旅を続けている。高校生のときに「BLUE GIANT NIGHTS」で上原ひろみやケンドリック・スコットと共演し、菅野咲花との歌ものユニット・haruyoiではコンポーザーを担当。昨年末にオペラシティでピアノソロのリサイタルを開催したかと思えば、こちらも気鋭の才能である北村蕗とのユニット・°pbdbではドラムンベースに接近。今年2月にはブラック・ミディの中心人物、ジョーディー・グリープの日本ツアーに参加して、松丸契らとともに怒涛のインプロを披露してみせた。溢れ出る好奇心でカテゴライズを軽々と飛び越えていく梅井。以前取材をした際には、「フランク・ザッパのドキュメンタリーを見て、自分の音楽に嘘をついちゃいけないと改めて思った」と話してくれた。現在ソロ・アルバムを制作中で、当然のようにジャンルレスな作品になる模様。(金子厚武)
muque
次の国内メインストリームの音像を予感させる
2022年5月結成、福岡在住の4人組バンド。2022年発表「my crush」、2023年発表「456」、2024年発表「Bite you」など、なによりも「楽曲の力」で着実に人々の心を掴み、今年の『バズリズム02』の「今年コレがバズるぞ!2025」では見事1位となった。muqueの楽曲は、グローバルトレンドを吸収し新たな掛け合わせによる発明を得意とするtakachi(Dr)のトラックと、自身のネガティブな部分もさらけ出しながらリスナーの手を取るAsakura(Vo)の歌詞とメロディから誕生し、そこにプレイヤビリティの高いKenichi(Gt)とLenon(Ba)の音が乗る。その音像と歌が、普段J-POPやJ-ROCKを愛する人からK-POPや洋楽を聴く人までを取り込んでいる。そもそもtakachiとKenichiはラウド系バンドを組んでいた過去があり、ライブでは音源のエモーショナルな印象を何倍にも増幅させた熱量高いパフォーマンスを展開。そのライブは多くの人を魅了し、昨秋のツアーは全公演ソールドアウト、東京・恵比寿LIQUIDROOMで追加公演を行うほどの人気っぷりである。(矢島由佳子)
なかむらみなみ
海外のプロデューサーとコラボ多数のラッパー
一度聴いたら癖になる表現力豊かなラップと元ホームレスというハードな経歴を持つ、藤沢市辻堂出身のなかむらみなみ。ラッパーのKamuiと結成したヒップホップユニット「TENG GANG STARR」としてキャリアをスタートさせ(現在は活動休止中)、その後はTREKKIE TRAX CREWらとともにソロ活動を積極的に行っている。UKを拠点に活動するプロデューサーとの共作も多く、2020年より共作を多く発表しているUKファンキーの最重要人物・Roskaを始め、Salute、Hodgeなどの楽曲に参加。交流が深いラッパーONJUICY、mezzとともに『ASIA TOUR 2024』と称して台湾でもライブを行った。最近ではインフルエンサー・とうあへの楽曲提供でも話題に。日本を飛び出してアジア、UKのクラブシーンで活躍する彼女の今後の動きには注目したい。(MINORI)
Pablo Haiku
多様なサウンドで「バンド」の枠組みを刷新
東京藝術大学・音楽環境創造科で出会った森飛友・永田風薫・足立新による3ピース、Pablo Haiku。デジタルディストリビューション「FRIENDSHIP.」のオーディションで、ゲスト審査員に迎えられたmabanuaらの推薦もあり、2021年に「park」でデビューを飾った。ビートミュージックをバンドで表現し、歌とラップを交えてリリカルかつポップに表現した楽曲はザ・ストリーツやhard lifeに通じる雰囲気があるが、オルタナ色強めのギターをはじめ、ライブはよりアグレッシブな側面が出て、UKロック的なスケールの大きさを感じさせるのも魅力的。最新曲「youre my」は「JR SKISKI」のCMソングに大抜擢され、このキャンペーンで全編英語の楽曲が起用されることは初めて。loverかfriendかfamilyか、関係性を限定しないリリックからは多様性を尊重する現代的な視点も感じられる。すでにJ-WAVEの「TOKIO HOT 100」で上位にランクインするなど、感度の高い早耳リスナーが注目。(金子厚武)
ピラフ星人
発表する楽曲が次々とバイラル、新たなラッパーの登場
ユーモラスでポップなリリック、独特の間やリズムを織り交ぜたフロウによってMCバトル界隈でキャラ立ちし評価を高めてきたピラフ星人。シーンで活躍する新世代の筆頭として、キャップとサングラスというビジュアル面を含め、子どもたちからも圧倒的な人気を得ることに。自らをネタラッパーと称していたピラフ星人だが、なんと2024年にバトルMCを引退しアーティストとしての活動に舵を切った。早速2025年1月には待望の1stアルバム『Dream Taxi』をリリース、3月には初のワンマンライブを開催と、勢いある展開を見せている。すでに昨年から「knock knock」や「ピラピー」といったヒット曲を連発しており、実現したい夢にVTuber・ピーナッツくんとの共演を掲げる。「ピラピー」では歌詞でもピーナッツくんへの愛を歌っているが、持ち前のキャラクターと中毒性を生むラップスキルがますます合わさることで、夢が実現する日も近い?(つやちゃん)
reina
アンニュイさと芯の強さを併せ持つR&Bシンガー
東京をベースに活動する、クリエイティブレーベル/コレクティブ「w.a.u」を代表するシンガーであるreina。2023年にはAPPLE VINEGAR -Music Award-にノミネートされ、今年2025年にはSpotifyが注目の新進アーティスト10組を選出するプログラム「RADAR: Early Noise 2025」に選出されるなど、着々と人気と実力を獲得している注目の存在だ。ディアンジェロやエリカ・バドゥなどが所属するソウルクエリアンズに大きく影響を受け、抜け感のある柔らかいR&Bを軽く乗りこなすような、アンニュイさと芯の強さを両立させた歌声が魅力的。これまでに、さらさやVivaOlaなど気鋭のアーティストと多く共演し、2025年にはラッパーのSkaaiとコラボレーションするなど、東京の音楽シーンを静かに牽引する存在である。(MINORI)
▼INTERVIEW
reina、さらさ、Skaaiが語る、インディペンデント・アーティストの矜持
REIRIE
”かわいい”を更新し続ける感性
フェアリーで物語性のあるムードを醸し出す”新しい少女趣味”とも言えるスタイルがトレンドを先導するようになって久しいが、黒宮れいと金子理江によるREIRIE(レイリエ)は、そのガーリーな潮流を最も繊細に表現しているユニット。二人の間に流れる親密さが、現実とファンタジーの境界を曖昧にするような神秘性を纏い、バンドサウンドからハイパーポップまでを甘く可憐な世界へとエディットしていく。rurumu:やchlomaといった国内ブランドの衣装とともにコーディネートされる世界観は海外への訴求力も高い。もともと二人が所属していたグループ・LADYBABYはグローバルでの支持が厚かったため、ファンベースがすでにあるぶんREIRIEも世界進出の大きな可能性を秘めている。実際、今年に入りすでに台北と上海にて公演を成功させたばかり。アイドルに憧れられるアイドルとして、”かわいい”を更新し続ける感性はリリースしたばかりのEP『Twinning Fate』に凝縮されている。(つやちゃん)
S.A.R.
重層的かつ多様な世界観を持つオルタナティブ・クルー
メンバーそれぞれが専門学校や音楽大学で出会ったsanta、Attie、Imu Sam、Eno、may_chang、Taroで構成されたオルタナティブ・クルー。ソウル、R&B、ヒップホップ、ジャズなどをベースに、ジャンルやバンドという形態に縛られない自由な音楽性を追求している。活動は音楽制作に限らず、映像やアートワークなども自身らで手掛け、多角的に世界観を表現。歌詞はそのほとんどが英語で構成され、ソウルフルで鮮やかな歌声も合わさり、国外からの注目も熱い。今年1月に開催したワンマンライブはソールドアウト。数々の国内大型音楽フェスティバルに積極的に参加するほか、トヨタ自動車のWEB CMの音楽を担当、ボーカルのsantaが冨田ラボの新メンバーとしてシングル「the birds of four」に参加するなど、勢いを増し続ける注目のクルーだ。(MINORI)
吉乃
覇道を突き進む「歌い手」の筆頭格
音楽シーンにおいてさらに存在感を増している”歌い手”の中でも、七色のパワフルボイスで強烈な個性を発揮しているのが、クラウドナイン所属の吉乃。自身のルーツであるボカロ楽曲のカバーを中心に名を広げ、2024年夏にZeppツアーを成功させた彼女は、同年秋のメジャーデビュー以降も人気ボカロPとタッグを組み、ナナホシ管弦楽団が提供したフリーキーな高速ロック「ODD NUMBER」、てにをは製のダークなエレクトロスウィング「なに笑ろとんねん」といったテクニカルかつ豪快な楽曲を次々と発表。変幻自在なボーカルにより歌い手の筆頭格として注目を集めている。その歌声に宿る豪胆さ、1stアルバムのタイトルを『笑止千万』と銘打ち、獅子志司が書き下ろしたオリエンタルなロック「我が前へ倣え」で覇道を突き進む覚悟を歌う気概に、世界にリーチする可能性を感じずにはいられない。(北野創)
▼INTERVIEW
吉乃が語る『笑止千万』の手応え、重みのある表現を手に入れた新境地
揺らぎ
国境も時代も超越して「寄り添う」シューゲイザー
2015年結成の4人組。Miraco(Vo)の趣向が強く反映され、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやシガー・ロスからの影響を消化した2016年の初期作『nightlife』で、国内シューゲイザー・シーンの新たな顔役として海外からも注目を集め、代表曲「night is young」はSpotifyでの再生回数が350万回を突破。すでに台湾や韓国でもライブを行い、日本ではジャパニーズ・ブレックファストやI Mean Usの来日公演でゲストアクトを務めるなど、ボーダーレスな活動を展開している。結成10周年となる今年1月に発表した新作『In Your Languages』では、Kntr(Gt)がソングライティングの主軸を担い、シューゲイザーやアンビエントの音響的な側面も残しながら、60年代のオールディーズや70年代のプログレッシヴ・ロックも内包したよりソングオリエンテッドな作風へと深化。国境も時代も超越して聴き手に寄り添うことができるであろう、インディーロックの傑作となった。(金子厚武)
▼INTERVIEW