香取慎吾主演のドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~ ※FODで見逃し配信)の最終回が、きょう20日に放送される。

今作は、ある不祥事で退社に追い込まれてしまった元報道番組のプロデューサー・一平(香取)が、再起を図るため政治家を目指し、その戦略として亡くなった妹の夫と子どもたちと同居し、ニセモノの家族=“ホームドラマ”を演じることを決意する…という物語。

一平が大江戸区長選挙への出馬を表明したことで、現区長の長谷川(堺正章)と対立することになるのだが、その争いの中で一平は長谷川のパワハラ動画を突然に暴露してしまう。ドラマ後半に待ち受けていた「選挙編」がどのように締めくくられるのかはもちろん、今作にどんな終止符が打たれるのか、さらに混沌となってきた――。

  • 『日本一の最低男』主演の香取慎吾 (C)フジテレビ

    『日本一の最低男』主演の香取慎吾 (C)フジテレビ

安易な成敗方法に邪念がよぎらなかった理由

前回の展開はとにかく衝撃だらけであった。まずクライマックスに相応しいラスボス的存在の長谷川との直接対決に始まり、そこから一平のかつてのパワハラ疑惑が噴出。そしてそのパワハラを受けたとされる相手・野上(ヘイテツ)が今では暴露系動画配信者となっており、そこから当事者同士が生配信で対峙(たいじ)するというそれぞれの展開が繰り広げられた。

描き方によっては全てが台無しになってしまいかねない“大技”の連打だったが、物語を盛り上げるためだけのギミックでも、世の中を客観視できているという体(てい)を見せるだけの揶揄でもなく、“今”をしっかりと批判しながらどうすれば解決できるのか…それは“対話”ではないかというシンプルでありながら明快な導きも与えながら、見事にエンタテインメントとして昇華させ、視聴者の心に“クリティカルヒット”させたのだ。

しかし、さらなる衝撃は最後の最後に残っていた。それらの大技が放たれた大ラスに、“長谷川のパワハラを生配信で晒(さら)す”という手法に出た。これまで様々なドラマで何度見たかもしれない“悪事の暴露を生中継”という手垢にまみれた悪者の成敗方法を、まさかのカタルシスに変えてしまったのだ。

なぜ何度も見られ、安易な成敗方法と思われていた“暴露の生中継”が、邪念がよぎらないほどに爽快だったのか。それは当然、意外性あふれる展開や、丁寧な作劇、それを見事に体現した俳優陣と演出によるものなのだろうが、そういった巧さを頭によぎらせないほど、“感情が揺さぶられた”ということに他ならない。

生きづらさばかりを感じ取ってしまう昨今、政治を物語の中で扱うからには、ただの絵空事であってはならない。ドラマとリアルが地続きであることを視聴者に体感させ、“感情を揺さぶる”ことに成功しなければ、何も動かないリアルのむなしさばかりが残ってしまい、“今のドラマ”として見る価値がないからだ。それを成功させるだけの力強さが今作にはあり、それが最終回前で爆発したのだ。

大風呂敷、期待感、希望が美しく収められる1時間

そんな衝撃と興奮の前回を経ての最終回だが、圧倒的な相手と選挙戦を繰り広げるという大風呂敷や、これまでどんなエピソードでも視聴者を決して裏切らなかった期待感、そしてもしかしたら現実の世界も変わっていくのではないかという希望、それらが見事に1時間で美しく収められている。

前回の“暴露の生中継”だけで一件落着してしまうような展開には持ち込まれないし、これまでの“家族”を用いて感動ドラマへすげ替えてしまうということもなければ、山積した問題の数々の消化不良も起こさない。きっとあなたが期待する…いや想像している以上の物語になっているはずだ。

間違いなく言えるのは、『日本一の最低男』というこのタイトルに大きなドラマチックが隠されており、それが分かったとき涙なくしては見られないということ。今作の北野拓プロデューサーが語る「香取慎吾の新しい代表作」と言っても過言ではない仕上がりだ。

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