――田中監督からご覧になって、生田さんはどんな座長でしたか?

田中監督:すごく現場を明るくしてくれる方だったので、助かりましたね。僕がけっこう人の顔色を気にしいで、本当はもう1回やりたいけど、怒ってしまいそうだからやめておこうとなってしまうタイプなんですけど、すごくこだわらせてもらって、作品のクオリティを上げることに集中させていただけたのはありがたかったです。

――生田さんなら何でも受け入れてくれると思えたということでしょうか。

田中監督:そうです! 冒頭、坂田の頭から血が流れるところを撮ったんですけど、あまりにもいい血の流れ方をしていたので、ずっと撮っていたんです。回しっぱなしで。いい画だなと思いながらずっと見てたら、いつの間にかすごい時間が経っていて。それも超大変だったと思います。

生田:息を止めてますからね(笑)。床に倒れて、頭から血が流れて、床に血の海が広がっていくんですけど、なかなかカットがかからないんですよ!

田中監督:『スラムダンク』で桜木が背中を痛めて、これ以上やったら選手生命に関わるということで交代させられるんですけど、安西先生が「君のプレイを見ていたかったからだ」「あと少しで一生後悔するところでした」って謝るんです。その思いです(笑)。「いい血の流れだなあ、もっと見ていたい。あ、ごめんなさい。カット!」みたいな。

――監督が見惚れるほどのシーンに。

田中監督:素晴らしかったですね。

生田:確かに、スタッフとの連携もうまくいって、血の広がり方がものすごくきれいでした。僕も心の中で「うわ、めっちゃうまくいってる!」と思って、「だからカットかけないんだな」って(笑)。

田中監督:事前のシミュレーションで、別の場所で助監督さんがやってみたりしていたんですけど、あそこまでうまくいったことはなかったので。

――監督は、また生田さんとタッグを組むとしたらどんな作品を作りたいですか?

田中監督:ラブコメやりたいので、ぜひラブコメでご一緒できたらうれしいです。

生田:『メランコリック』を見ていても、男女のシーンとかすごくぐっとくるシーンがたくさんあって、銭湯で2人で話しているシーンとかけっこう好きなので、今ラブコメと聞いて確かにと思いました。

――生田さんはラブコメへの意欲はいかがでしょうか?

生田:呼ばれればぜひ、馳せ参じます!

■生田斗真
1984年10月7日生まれ。1996年にNHK Eテレ『天才てれびくん』に出演後、ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07)や『魔王』(08)などで注目を集める。2011年、映画『人間失格』(10)、『ハナミズキ』(10)でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、ブルーリボン賞新人賞を受賞。そのほかの代表作に、映画『土竜の唄』シリーズ(14、16、21)、『予告犯』(15)、『グラスホッパー』(15)、『彼らが本気で編むときは』(17)、『友罪』(18)、『告白 コンフェッション』(24)、ドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(15)、『俺の話は長い』(19)、『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(21)、『鎌倉殿の13人』(22)、『警部補ダイマジン』(23)、Netflixシリーズ『さよならのつづき』(24)などがある。今年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』にも出演中。
■田中征爾
1987年8月21日生まれ、福岡県出身。日本大学芸術学部を中退後、映画を学ぶために渡米。帰国後は舞台の演出と脚本執筆をしながら映像作品を製作。2019年、監督・脚本を務めた初の長編映画『メランコリック』が、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞ほか、世界各国で数々の賞を受賞する。今年2月21日に映画『死に損なった男』が公開。

ヘア&メイク/豊福浩一(Good) スタイリスト/前田勇弥