2番目に注目されたのは20時19分で、注目度73.65%。蔦重が駿河屋市右衛門(高橋克実)に相談を持ちかけるシーンだ。

錦絵作成の資金調達に呉服屋から入銀を募ることを思いついた蔦重だが、思うように入銀は集まらなかった。悩む蔦重は駿河屋の軒先にいた義父の市右衛門に意見を求める。すると市右衛門は、名の通った女郎がいないこと、蔦重自身に知名度がないことが原因ではないかと助言した。さすがは海千山千の経営者である。すでに入銀が集まらない理由を見抜いていたのだ。

現実を突きつけられた蔦重だったが、そこに西村屋与八(西村まさ彦)が蔦重を訪ねてきた。何と蔦重の錦絵発行に手を貸したいというのだ。西村屋は名の通った錦絵の版元である。西村屋が関わっているとなれば、呉服屋の反応も変わるだろう。さらに自分の店で蔦重の錦絵も取り扱いたいという。

蔦重は渡りに船とばかりに西村屋の提案に飛びつき、2人はそのまま駿河屋をあとにした。市右衛門はあまりに虫の良すぎる話に裏があるのを感じとるが、何も言わず静かに店の奥へと消えていった。

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即座にいかさまを見抜いた様子

このシーンは、信頼関係を築きつつある蔦重と市右衛門に視聴者の注目が集まったと考えられる。また、直後に登場した西村屋に警戒の視線が集まったと考えられる。

斬新なアイデアと抜群の行動力で『吉原細見』の再編と『一目千本』の刊行を行った蔦重ですが、商売人としての実力はまだまだ低く、歴戦のつわものである市右衛門にアドバイスを求めた。そんな蔦重にとって西村屋の申し出は魅力的なものだったが、あまりにもタイミングの良すぎる話に、市右衛門は即座にいかさまを見抜いた様子だった。

SNSでは、「西村屋が登場した時点で駿河屋は怪しんでいるな」「駿河屋市右衛門の人を見極める力がすごい」「親父さまの眼力」と、市右衛門の洞察力に称賛が集まる一方、「西村屋が西村まさ彦さんだった時点で怪しさ満点だったね」「西村屋、登場のタイミングからすでにフラグが立ちまくっているな」と、西村まさ彦のうさん臭さも注目された。ツンデレの極みである市右衛門であるから、蔦重がだまされると分かっていながら、これも社会勉強のうちと黙って成り行きを見守ることにしたのだろう。なんとも奥行きのある人物だ。

西村屋与八は蔦重とともに活躍した錦絵の代表的な版元で、西村屋は3代目まで続いた(※今回の西村屋は初代。ちなみに2代目は鱗形屋孫兵衛の次男)。屋号は「永寿堂(えいじゅどう)」という。鈴木春信、鳥居清長、勝川春章、歌川豊春など当時の著名な絵師たちの作品を多く刊行した。錦絵と出版の発展に大きく貢献した西村屋は物語のキーパーソンとなりそうだ。

西村屋与八を演じる西村まさ彦は、今回、「西村」つながりで話題になっていますが、実は2017年の宮崎あおい主演のNHKドラマ『眩~北斎の娘~』でも西村屋与八を演じている。西村は、故・田村正和さん主演の『古畑任三郎』(フジテレビ)で今泉慎太郎役を演じ大きく知名度を上げた。大河ドラマは1996年『秀吉』、2016年『真田丸』、2020年『麒麟がくる』に続いて4度目の出演。西村屋与八は錦絵というジャンルを確立したやり手事業家なので、今泉くんとは似ても似つかない。