東京商工リサーチは1月24日、「学習塾」業績動向調査の結果を発表した。調査は、同社の企業データベース(約400万社)から、日本産業分類(細分類)の「学習塾」を対象に、2023年度の業績(2023年4月期~2024年3月期決算)を最新期とし、5期連続で売上高、利益が判明した396社を抽出、分析した。
売上高は微増、利益は減少
全国の主な学習塾396社の2023年度の売上高は5,431億円(前期比1.0増)、最終利益は297億円(同3.8減)で、増収減益だった。コロナ禍の影響を受けた2020年は減収に転じたが、その後は緩やかに増収をたどり受験産業の強みを垣間見せている。だが、運営コストの上昇に加え、教員などの人手不足等で人件費上昇が重なった2023年度の最終利益は前期を下回った。
売上高5億円未満が約8割
売上高別では、1億円未満の233社(構成比58.8%)が最も多かった。次いで、1億円以上5億円未満の86社(同21.7%)、10億円以上50億円未満の35社(同8.8%)と続く。5億円未満が全体の約8割(同80.5%)を占め、一部の大手学習塾と地域や専門性に特化した中小・零細規模に二分化した構造になっている。
売上高 増収が徐々に落ち込む
2023年度の売上高増減は、増収161社(構成比40.6%)、減収145社(同36.6%)、横ばい90社(同22.7%)だった。2022年度の増収は188社(同47.4%)で、2023年度は6.8ポイント減少した。増収企業が減収企業を上回るが、その差は縮んでおり注意が必要だ。2023年度の売上高伸長率は、0~5%未満が157社(同39.6%)で最多だった。▲5~0%未満が62社(同15.6%)、10~100%未満が55社(同13.8%)と続き、100%以上は4社(同1.0%)にとどまる。
損益別 黒字企業が約7割
最終損益は、黒字が270社(前期290社、前期比5.0%減)で、構成比は68.1%だった。前々期の293社(構成比73.9%)から構成比は5.8ポイント低下し、黒字企業は減少している。一方、赤字は126社(同31.8%)で、前々期の103社(同26.0%)から5.8ポイント上昇した。ジワリと黒字企業が減少している。
業歴別 50年未満が9割超
業歴別は、最多が10年以上50年未満の302社(構成比76.2%)だった、次いで、50年以上100年未満の68社(同17.1%)と続く。業歴50年未満が327社(同82.5%)と8割以上を占めた。100年以上の企業は1社だった。
従業員数別 100人未満が8割超
従業員数別は、5人未満が最多の177社(構成比44.6%)で、次いで10人以上50人未満が77社(同19.4%)、5人以上10人未満の62社(同15.6%)と続く。従業員数100人未満の中小企業が343社(同86.6%)と8割を超えた。一部の大手企業と多数の中小・零細企業に二分化した構図が鮮明になった。
資本金別 1億円未満が9割超
資本金別は、1百万円以上1千万円未満が177社(構成比44.7%)、1千万円以上5千万円未満が122社(同30.8%)だった。資本金1億円以上は、27社(同6.8%)にとどまり、個人企業も含む資本金1億円未満が369社(同93.1%)を占めた。資産背景に乏しい中小・零細事業者が多数を占めているのが特徴だ。
売上高ランキング
売上高ランキングトップは、公文教育研究会(大阪府)の470億7,400万円(前期比2.5%増)。次いで、早稲田アカデミー(東京都)312億8,200万円(同7.1%増)、ナガセ(東京都)281億900万円(同4.3%減)と続き、上位5社の売上高が全体の約3割(27.8%)を占めた。上位企業は、ブランド力の強化と合格実績で生徒を集め、AIやタブレットなどを活用した演習プログラムなどを充実し、競争力を高めて業容拡大を図っている。
学習塾の倒産・休廃業
2024年の「学習塾」の倒産は53件、休廃業・解散は195社で、合計248社が市場から撤退した。2023年まで10年連続で市場撤退企業数を新設法人数が上回り、学習塾は新規参入が増え続け、競争が一層激しくなっている。倒産件数の増加とともに、休廃業・解散が一気に増勢に転じたことは、経営体力に劣る中小・零細事業者の苦境を示しており、この傾向はさらに強まる可能性が高い。