飯田氏は、2021年に『ドラゴン桜』を手掛けているが、東大専科という少数の生徒たちがメインであり、学園ドラマという意味では特殊な作品だった。「正直、今回のような学園ドラマは、僕自身初めてだったので、多少不安もあったんです。それは同世代が多いですし、仲良くなるのはいいのですが、ちょっと緩んでしまう可能性があるのでは……と危惧していたんです」。

しかし飯田氏の不安は杞憂に終わった。「確かにすごくみんな仲良くなっているのですが、まったくなれ合いがない。最初は引き締めるためにちょっと厳しい感じでいこうかなと思っていたのですが、そんな必要がなかったです」。

そこには顔合わせのとき、飯田氏が生徒役の俳優たちに「この作品を踏み台にしてください」と声を掛けたことが影響しているのかもしれない……と推測する。

「実は今回、松坂さんにオファーしたとき、『孤狼の血』(18年)という作品が自身の分岐点になったと話していたんです。そして『御上先生』が第2の分岐点になると言っていて、言い方を選ばずに言うなら『御上先生』を踏み台にしてステップアップしたいと話していました。僕ら制作の役目は作品を成功させることですが、役者さんが作品を起点にしてステップアップできたと言ってくださることって、とてもうれしいんです。その言葉を松坂さんから聞いて、生徒役の俳優さんにも同じことを言いました」。

飯田プロデューサーは、「この作品を踏み台にしてください」と若い俳優たちに話したことで、「手を抜こうが、だらけようが全部自分に返ってくる。少しでも俳優として進歩したいのなら、自然と作品にどういう風に向き合えばいいのか、おのずと理解してくれたんだと思います」と語っていた。

学園ドラマの醍醐味の一つは、生徒役の俳優たちの最初と最後の表情の変化を楽しむこと。その意味で、しっかりとオーディションを勝ち抜き参加した若手俳優たちがこの作品をどう踏み台にしていくのか、最後まで見届けたい。

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