海外市場開拓が遅れている要因について、雨無Pは「海外とコネクションを持ち、映画祭の企画マーケットへの参加、海外PRをつけることを考えるプロデューサーが日本には少なすぎる」とも分析する。
どういう映画祭を周り、どんな企画マーケットで、どんな形で、海外で興行をするか。海外の助成金を使う、海外のスタッフを呼ぶ、資金を海外から引っ張る、配給する劇場を増やす――そうした思考の出発点を持つ人が少ない。その背景には、これまではドメスティックな力、日本市場だけで良しとしていた業界にも問題がある。重松氏はそこに課題を抱き、ドメスティックな考えに陥っていない雨無Pに目をつけた経緯もある。
フジテレビ編成時代に月9ブームを起こし、「国際ドラマフェスティバル in TOKYO」の実行委員長も務めた重村一氏は、14年前の第19回JAMCOオンライン国際シンポジウムで、日本のドラマの海外進出が進んでいない問題の本質を「欧米をはじめとして放送局と制作プロダクションは分離されているケースが主流の放送制作体制にあって、日本は50数年の歴史で、テレビ局が制作と放送を一元化して行う体制が維持されてきた。(中略)もし、制作プロダクションが著作権や番組販売に関する権利を自分の意に沿う形で所有していれば、海外への番組販売や、海外との共同制作などは、現状以上に促進されていたのかもしれない」と語っていた。
これについて「g」の重松氏は「一元化しているのに、実際の制作は制作会社が行っているのが問題」と現状を付け加え、「なのに権利はテレビ局が保持している。ゆえに制作した人に権利が渡らず、それを持って海外進出できなかった。重村さんの言葉の裏にはそういったニュアンスがあるのではないかと思います」と推察した。
『SHOGUN 将軍』の成功は「第一歩に」
こうした多くの課題が潜む中、『SHOGUN 将軍』の成功も受け、雨無Pは「日本の独自性を生かした作品作りは今後の海外マーケットへ向けての第一歩になりそうです。そもそも日本は職人気質で練り込んで作るのが得意。そうした歴史的な性質や建造物をロケーションで生かしたり、そうした文化や風景を生かす。時代劇もそうですが『ブレードランナー』的な取り扱い方(※)もあるはず。グローバルな配信プラットフォームの拡大により、世界に見られることが作品の幅も広げるのでは」と語る。
(※)…『ブレードランナー』の劇中には、日本語の看板・広告が多数登場する
過去にドメスティックに成功したがゆえにさまざまな課題を抱えてしまった日本の実写映像業界。そのメソッドに触れてこなかった雨無Pのような若手が、今の状況をどう生かしていくか。邦画、テレビドラマの今後の世界展開に期待したい。
●雨無麻友子
1994年東京都生まれ。青山学院大学在学中に映画祭を主宰し、17年にLDSへ入社、映像事業部でドラマ・映画のプロデュースに携わる。退社後、スタジオねこを立ち上げ、20年11月にプロデュース作品・本広克行監督映画『ビューティフルドリーマー』が公開。その後も多くの映画・ドラマ作品を手がける。近年の作品としては、『トークサバイバー!』(Netflix)、『量産型リコ』(テレビ東京)、『旅するサンドイッチ』(同)、映画『ジャパニーズスタイル』、『生きててごめんなさい』など。12月29日には中京テレビのオリジナルドラマ『迷子のわたしは、諦めることもうまくいかない』が放送される。