パリで長野県の食の魅力を発見|Soirée découverte de la préfecture de Nagano

パリで最も注目されているレストラン「NARRO」。そのシェフを務めるのは竹田和真(ちくだかずま)だ。予約なしではランチすら難しい人気店で、その勢いは1年でパリに3店舗を展開するまでに成長している。最新店舗の「Calice」は、オープンキッチンを備えたワインバー的なスタイルでオープンした。

【画像】特別な夜を彩る、長野県出身の3人のシェフの共演によるスペシャルなメニュー(写真16点)

竹田シェフは長野県の白馬出身。この縁から、長野県が力を入れているフランス市場への展開において、時折コラボレーションを行ってきた。これまで、長野の食材を使った期間限定のフレンチメニューを提供する「長野フェア」のようなイベントが開催されてきたが、今年は一味違った形での取り組みが行われた。それが「Calice」を舞台にした「Soirée découverte de la préfecture de Nagano:長野県の魅力発見の夕べ」である。

今回のイベントには、竹田シェフに加え、パリで活躍する二人の日本人シェフが参加した。信濃町出身「レストランTOWA」の大草真シェフと、東御出身「レストランÉtude」の山岸啓介シェフだ。長野県出身の3人のシェフによる共演は、まさに特別な夜を彩るものとなった。さらに、長野県庁からもスタッフが企画に参加し、長野県全体としてこのイベントに力を入れている様子がうかがえた。

当日のメニューは、食前のアミューズに始まり、二品の前菜、魚料理、肉料理、プレデザート、そしてデザートまで続くフルコース。すべての料理は長野の食材を活かし、3人のシェフがそれぞれの個性でフレンチとして仕立て上げた。味はもちろんのこと、見た目の美しさにも感嘆の声が上がった。

さらに、この「Calice」には新たに天才シェフ・パティシエの赤澤かおりが加わったことも忘れてはならない。竹田シェフの料理の締めくくりを、感動的なデザートで飾る彼女の腕前は評判だ。この日も、長野産の栗鹿の子を使ったモンブランを披露し、特別な夜にふさわしい一皿を提供した。

料理に合わせたペアリングドリンクとして登場したのは、長野の日本酒。それぞれの料理に合わせ、特別なセレクションが提供された。たとえば、以下のような組み合わせだ:

・アミューズ3品(ナメコとご飯の朴葉包み焼き、イノシシ肉のリエット 四川山椒風味、そば粉のガレット 野沢菜とフレッシュ山葵クリーム添え)には、日本酒の発泡酒「渓流 マウンテンダンス スパークリング」。

・前菜の信州和牛のカネロニ、戸隠そばには、繊細な甘い香りが魅力の「narai kinmon」。

・魚料理のスズキ 信州味噌のサヴァイヨンソースには、GI長野認定の「大信州 金紋錦」。

・肉料理の備長炭でグリルしたイベリコ豚や、長野の郷土料理をアレンジしたナスのタルティーヌには、「渓流 朝しぼり」。

・デザートには、20年熟成の「黒松仙醸 Vintage1998」が登場。

料理だけでなく、日本酒のペアリングも絶妙で、長野の魅力を存分に味わえる内容だった。

当日、Caliceを埋め尽くした客の多くは現地フランス人。その中には、フランス料理界の権威「エスコフィエ」に認定されたシェフもおり、彼らもこの料理を絶賛していた。

日本が大好きなフランスだが、日本酒はまだそれほど定着していない。日本のウィスキーはヨーロッパで高く評価され、普通のスーパーでも手軽に購入できるほど人気が高いが、日本酒はまだ発展途上だ。このようなイベントを通じて、日本酒の楽しみ方を直接体験してもらうことで、その魅力がさらにフランス人に伝わったのではないだろうか。

長野出身のシェフたちが、長野の魅力をフランス料理で表現したこの特別な夜に参加できたことは幸せだった。そして、この取り組みに続き、日本各地がそれぞれの地域の伝統や文化をフランスで紹介し、日本の素晴らしさがさらに広まることを願わずにはいられない。

Calice / ワインビストロ食堂バー / Paris

https://www.calicerestaurant.fr/ja/

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI