トヨタ自動車の「ランドクルーザープラド」が15年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、「ランドクルーザー250」として生まれ変わった。同社によれば「原点回帰」と「生活実用」を掲げて作り上げた「ランクルシリーズの中核モデル」とのことだが、その完成度は。最上位グレード「ZX」で走りと使い勝手を確かめた。個人的なおすすめのグレードも紹介しよう。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    新しさとレトロ感がうまく融合した「ランクル250」。試乗車のボディカラーは「アバンギャルドブロンズメタリック」

エクステリアは「原点回帰」で走りは「進化」

まず、第一印象として大柄なボディに驚いた。ボディサイズはプラドとさほど変わらないものの、全体的に水平基調になった部分が多いからか、ずいぶんと大きく感じる。

エクステリアデザインは一見するとゴツゴツしていそうだが、クルマを一周してじっくり眺めると、角が面取りされていて造形は意外と滑らか。クラシカルなフロントフェイスがいいアクセントになっている。デザインだけ見ても、新しさ=進化と懐かしさ=原点回帰がうまく融合している印象だ。20インチ(ZXのみ)のタイヤも迫力満点!

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    先代モデルの「プラド」よりも全体的に直線基調なデザインとなった「ランクル250」

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    最上位グレードの「ZX」のみ20インチの大径タイヤを装着。その他のグレードは18インチタイヤだ

運転席に座ると視界はなかなか良好。車内は質感が高い。以前、新型の「ランドクルーザー70」に試乗したが、それとはまったくキャラクターが異なる。

例えばセンターコンソールの各種スイッチ類は、見た目も押した感触も安っぽくない。安価なクルマだと、スイッチを押したときにプラスチックの薄っぺらさ、安っぽさを感じることがある。ランクル70はよくいえばレトロだったが、若干の安っぽさを感じた。ランクル250のスイッチ類もほとんどがプラスチックではあるものの、質感は高い。車内が「高級感」でまとめられていて、「いいクルマ」に乗り込んだという気持ちにさせてくれる。もちろんシートの座り心地も極上だ。

  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • 内装はシンプルで質感が高い。運転席からの視界もかなり良好だ

  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • エアコンの調節スイッチは吹き出し口の下部にまとめられている。シフトレバーは握りやすい造形を採用。足回りの操作スイッチはシフトレバー近くにあって直感的に操作できる

エンジンを始動すると、2.8Lの直列4気筒ディーゼルエンジンが唸りを上げる。動力性能は最高出力204PS、最大トルク500Nm。アクセルを踏むとディーゼル特有の振動とともに滑らかに走り出し、踏み込めば一気に加速して、カラダがシートにグッと押し付けられた。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    ボンネットを開けるとトラックのようなエンジン音が響き渡る

パワフルなランクル250だが、日常生活での使い勝手を検証するため、オンロードを中心に走ることにした。

まず手始めに、丘の上に向かう途中にある坂がきつい住宅街に入ってみると、パワフルなトルクのおかげで低回転のままスムーズに走り抜けることができた。坂の途中の赤信号で停止し、青信号になって走り出す際も、車両重量が2,410kgもあるとは思えないほど軽々と坂を駆け上がっていく。エンジン音やロードノイズはそれなりに聞こえてくるが、ディーゼルということを考えれば抑えられている方だ。

  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • 運転席から左前方を見たときの視界。一見、ダッシュボードが分厚くて見にくい感じがしたが、シートポジションが高めだからか走り出すとまったく気にならなくなった

平坦なオンロードでは加速性能を試してみたが、そこでは若干のもたつきを感じた。高速道路で合流するようなシーンでは、アクセルを踏み込んでも思ったほど速度が上がらないなという印象。ディーゼルエンジンなら当たり前の加速感ではあるが、もの足りなさを感じたというのが正直な感想だ。オンロードを一気に加速していくシーンでは、もしかするとガソリンエンジンの方がスムーズなのかもしれない。

  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • トヨタ「ランクル250」
  • 「MODE SELECT」のダイヤルを回すとドライブモードを瞬時に変更できる。モードは「SPORT」「NORMAL」「ECO」の3種類。「SPORT」にするとディスプレイが赤くなり、エンジンの回転数もわずかに上がる

メインのパワートレインはディーゼルだが…

ランクル250のパワートレインはディーゼルエンジンとガソリンエンジン(2.7L直4、163PS、246Nm)の2種類。グレードラインアップはディーゼルが「ZX」(7人乗り、735万円)、「VX」(7人乗り、630万円)、「GX」(5人乗り、520万円)、ガソリンが「VX」(7人乗り、545万円)となる。

言うまでもなく、ランクル250のメインモデルはディーゼルエンジン搭載車だ。最上級グレードのZXには例えば、20インチタイヤ、電動リヤデフロック、プロジェクター式3眼LEDヘッドライト、12.3インチTFTカラーメーター+マルチインフォメーションディスプレイ、カラーヘッドアップディスプレイ、パドルシフトなどが標準装備となっている。ただ、これらの装備はあると便利だが、なくて困るということもない。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    7人乗りモデルであっても、3列目シートを倒せばラゲッジスペースは十分に広い

同じディーゼルで7人乗りの「ZX」と「VX」の価格差は105万円ある。それを考えると、VXはかなりおすすめだ。さらに現時点では、なぜかVXのみ有償オプションでヘッドライトを丸目型に変更できる(販売店スタッフによると、いずれZXも対応するかもしれないとのこと)。よりレトロ感を印象付けたいなら選びたいオプションだ。

ディーゼルで選ぶならVX、価格を気にせず装備を充実させたいならZXという選択がベストだ。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    「VX」グレードなら有償オプションで丸目のヘッドライトに変更できる。レトロ感があっておすすめだ

ガソリンエンジンもあり?

個人的には、ガソリンエンジンのVXもかなり気になる存在だ。スペックを見る限りはプラドのガソリンエンジンと変わっていないようだが、決して見劣りする性能ではない。

プラドのガソリンエンジンは力不足という意見もあるようだが、最新のランクル250の7人乗りボディと走りが味わえて、ZXよりも190万円(ディーゼルのVXなら85万円)も安価に購入できるとなれば、購入を検討してみる価値は大いにある。ガソリン燃料は軽油よりも高くつくし、燃費も悪い。ただし、長距離をあまり走らないのであれば、ガソリンモデルを選んでもディーゼルモデルより高くつくことはないといわれる。

さらに、高速走行時のエンジン音や振動はガソリンの方が少なくなる傾向にある。平坦な道なら走り出しは滑らかなことも多い。ディーゼルは定期的に排気ガスをクリーンにするための尿素水を補充しなければならないところが手間でもある。

オンロード走行や高速走行がメインで、林道や急な坂道を走る機会があまりないのであれば、ディーゼルはオーバースペック。そうなると、ガソリンエンジンのVXはかなり魅力的だ。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    例えばカラーヘッドアップディスプレイが標準装備となるのは「ZX」だけ。現時点では、その他のグレードにはオプション装備としても追加できないので、こうした装備がどうしても欲しければZX一択となる

ランクル250はクラシック寄りなデザインでトヨタがいうところの「原点回帰」をうまく形にできていると思う。それでいて走りはパワフルで、緩やかにアクセルを踏み込めばマイルドにも走れる。オンでもオフでも扱いやすい「生活実用」に最適な1台だ。ランクルシリーズの中核モデルとして、長く愛されるモデルになっていくだろう。

  • トヨタ「ランドクルーザー250」

    ランクルシリーズの中核モデルとして大幅に進化した「ランクル250」。実際に乗ってみると想像以上に使いやすいモデルだった