デロイト トーマツ グループは、日本企業における役員報酬の水準や株式報酬制度等の導入状況、役員指名、コーポレートガバナンス領域も含めた中長期的な企業価値向上に資するトピックを包括的に調査した「役員報酬サーベイ(2024年度版)」の結果を10月25日に発表した。同調査は2024年6月~7月の期間、上場企業1,116社(うちプライム上場企業655社)および非上場企業159社を対象に行われた。
JPX日経インデックス400企業におけるCEO・社長の報酬総額(中央値)をみると、2024年は113,247千円と、前年の107,427千円から5.4%増となった。
2021年から時系列でみると、3年連続での上昇であり、報酬水準の見直しや株式報酬導入等の制度改革が実施された結果とみられる。CEO・社長の報酬水準(標準額)を引き上げた89社の理由をみると、「ベンチマーク企業の報酬水準上昇を踏まえた見直し」(58.4%)が最も多く、「役割・責任範囲の拡大による見直し」「業績状況を踏まえた水準の見直し」(いずれも24.7%)が続いた。
トップエグゼクティブの報酬に採用されている指標は、「営業利益」が、短期インセンティブ報酬(42.7%)、長期インセンティブ報酬(40.1%)ともに最も多かった。短期インセンティブ報酬では「当期純利益」(29.4%)が続き、売上や利益をKPIとすることが一般的とな。長期インセンティブ報酬では、「ROE」(23.8%)が続いた。
また、資本コストや株価を意識した経営に伴い、株主価値を捉える指標の採用が徐々に増えてきており、「TSR」が7.6%(前年比+2.9ポイント)、「EPS」が2.7%(前年比+0.1ポイント)であった。
近年の気候変動対応や人的資本経営の要請に伴い、ESG指標を役員報酬評価に採用する企業も年々増加している。短期もしくは長期インセンティブ報酬のいずれかを導入し、それら報酬にESG指標を連動させる企業割合は、プライム上場企業で23.9%(前年比+6.5ポイント)、売上高1兆円以上の企業では63.9%(前年比+2.8ポイント)に達した。大手企業を中心に、役員報酬を介したESGに対するコミットメントが仕組み化されてきたといえる。
採用が多いESG指標は「従業員エンゲージメント」80社、「CO2排出量」67社、「女性管理職比率」56社、「GHG排出量」50社と、気候変動および従業員関連指標が先行している。
2023年3月期より、有価証券報告書において人的資本に関する戦略並びに指標・目標の開示が求められており、企業の取り組み・開示に、投資家やステークホルダーからの関心が高まっている。人的資本経営の取り組み・検討を実施している(完了含む)企業は70.0%(893社)で、前年(60.5%)より9.5ポイント上昇。
一方、検討・計画に着手できていない企業は24.9%(前年31.0%)であり、中でもグロース上場企業および非上場企業は、その割合が過半数におよんでいる(それぞれ51.5%、58.0%)。
人的資本経営の検討・取り組み内容は、「業務のデジタル化推進」(4.1点)や「時間や場所にとらわれない働き方の施策立案」(3.7点)、「ハイブリットワークの推進」(3.7点)が先行する結果であった。一方、CHRO(最高人事責任者)の設置やリスキル(いずれも2.1点)は依然として未対応企業が目立つという。
また、人的資本経営の検討・取り組みを進める企業における人的資本経営の課題としては、「経営戦略実現に資する人材の確保・育成」(48.4%)、「社員のエンゲージメントレベルの向上」(39.1%)、「経営戦略と人事戦略の連動」(38.3%)が挙げられた。