第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、7回戦計6局の一斉対局が10月17日(木)に各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた羽生善治九段―近藤誠也七段の一戦は108手で近藤七段が勝利。5勝1敗の白星先行として上位キープに成功しています。
現代調の矢倉戦
羽生九段2勝4敗、近藤七段4勝1敗で迎えた本局はリーグ戦中盤の山場。両者13度目の対決となった本局は先手の羽生九段が矢倉を志向、後手の近藤七段が雁木囲いに組む定跡形に落ち着きました。先手の矢倉囲いは6筋の歩を突いていないのが現代的な工夫で、後手に仕掛けの争点を与えない意味合いがあります。
本格的な戦いを前に順位戦らしいジリジリとした長考合戦が続きます。早繰り銀の要領で飛車先突破を目指した羽生九段に対して、近藤七段は軽快な角のさばきで応戦。駒の取り合いが一段落した局面は形勢互角で、堅さで優る先手の矢倉囲いと広さを誇る後手玉のどちらに先に手がつくかが焦点になっています。
踏み込みが奏功
難解な終盤戦を抜け出したのは後手の近藤七段でした。羽生九段が後手の守りの金を狙ったところ、残り時間10分になるまで考えて攻め合いに踏み込んだのが勝利を呼び込む決断の一手。序盤で築いた8筋の拠点が目いっぱい働いており羽生九段の玉は見た目以上に危険な形になっていました。終局時刻は23時16分、最後は自玉の寄りを認めた羽生九段が投了。
終盤を振り返ると羽生九段としては直前のと金を外す手が緩手になった形に。近藤七段は鋭い踏み込みで攻め合い一手勝ちを読み切りました。これで近藤七段は5勝1敗と暫定2位をキープしています。一方敗れた羽生九段は2勝5敗の苦しい星取りとなって残留に目標を切り替えます。注目の8回戦は11月7日(木)に各地の対局場で予定されています。
水留啓(将棋情報局)