明日、西山朋佳女流三冠の棋士編入試験第2局が行われる予定ですが、2024年10月3日に発売される、『将棋世界2024年11月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)では、9月10日に行われた第1局、高橋佑二郎四段戦の流れを、棋士たちの検討や感想戦の様子を交えつつ解説しています。本稿では、西山女流三冠の師匠である伊藤博文七段のコメント、対局当日の西山女流三冠と高橋四段の様子を抜粋してお送りします。
(以下抜粋)
意外だった、西山の〝即答〟
女性初の棋士誕生なるか?西山朋佳女流三冠の棋士編入試験が、いよいよ始まった。 およそ1ヵ月に1局のペースで5人の試験官(新人四段)と対局し、西山が3勝した時点で合格となる。試験官のメンバーと順番は次の通り。
【第1局】高橋佑二郎四段
【第2局】山川泰熙四段
【第3局】上野裕寿四段
【第4局】宮嶋健太四段
【第5局】柵木幹太四段
西山は、去る7月4日に東京「将棋会館」で行われた朝日杯将棋オープン戦一次予選で、午前の阿部光瑠七段戦に快勝し、規定の成績(よいとこ取りで10勝以上、勝率6割5分以上)を挙げ、受験資格をクリアした。午後の佐々木大地七段戦の終了後に、取材陣の前で受験の意向を表明した。
これには驚いた棋士も多い。即答を避け、師匠と相談しながら方針を決めたうえで、後日に連盟から公式発表するパターンが普通だ。しかし西山は、お昼休憩の間に決断し、すみやかに事務局の担当職員に意向を伝えている。 その日の夜、師匠の伊藤博文七段に電話をしたところ
「西山さんから先ほど連絡がありました。私の許可なく決めたことに恐縮していましたけど、日頃から『自分が引退してしまって伊達康夫一門の系譜が途絶えてしまうのが残念でしかたがないので、西山さんが棋士になって棋士系統図の私の名前の下に西山さんが入ってくれたらうれしい』と言っているので、決断してくれてよかった。西山さんは師匠孝行や」と喜んでいた。
大勢の報道陣に囲まれるも、西山は自然体
奨励会退会から3年。女流棋士転向で〝打倒福間〟に目標をシフトした西山は、タイトル争奪に余念がないが、消えかかっていた夢に再挑戦するチャンスが舞い込んできた。
対局の朝、世間が注目する一戦に多くの取材陣が集まった。この日は「特別対局室」で公式戦の対局が行われるため、本局はそれに次ぐ序列の「高雄」が対局室としてあてがわれた。大広間はこの一局だけである。上座には当然、試験官の高橋四段が座るのだが、西山の写真や映像を撮りたい報道陣はみんな高橋側からカメラを構えることになる。しかし、床の間と高橋のあいだのスペースが狭く、撮りづらそうだった。高橋は大勢の報道陣の圧を感じて落ち着かない様子。
一方の西山のほうはというと、意外なくらいに自然体。カメラを向けられるのは女流タイトル戦で慣れており、気負いというものは感じられなかった。
(西山朋佳女流三冠 棋士編入試験第1局「消えかけていた夢」/【構成】田名後健吾)
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