第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は2回戦が進行中。9月21日(土)には藤井聡太JT杯覇者―佐々木大地七段の一戦が北海道札幌市の「札幌コンベンションセンター」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀のねじり合いから抜け出した藤井JT杯覇者が129手で勝利。ベスト4に進出を決め3連覇に向け前進しました。

王道の腰掛け銀

6年連続6回目の出場となる藤井JT杯覇者。最初の数回こそふるわなかったものの、2021年の準優勝を皮切りに2022年、2023年は2年連続での優勝を続けています。対する佐々木七段は今期が初出場。次世代を担う実力者として名が通っており、藤井JT杯覇者との間で戦われた昨年の2つのタイトル戦はよく知られるところです。

振り駒が行われた本局は両者の息が合って角換わり腰掛け銀に進展。後手の佐々木七段が飛車を動かして待機作戦を見せたのに対して先手の藤井JT杯覇者は単騎の桂跳ねで仕掛けました。先手が玉の堅さを、後手が玉の広さを主張して互角の中盤戦。定跡は早い段階で一区切りとなり、盤上は早くも力勝負の様相です。

終盤でギアチェンジ

局面は藤井JT杯覇者が自陣に打った控えの桂を合図に激しさを増します。中央に跳ね出したこの桂は「桂の高跳び歩の餌食」の要領ですぐに捕獲されてしまいますが、取られそうな桂の利きを生かして敵陣に銀を放り込んだのが藤井JT杯覇者渾身の勝負手。形勢は難解でも、飛車の入手を確実にして実戦的な指しやすさを得ました。

反撃を目指したい佐々木七段も手筋を連発して戦いは終盤戦へ。ともに玉が中央方面に逃げ出して捉えどころの難しい局面で藤井JT杯覇者が強みを発揮しました。じっと竜を回って後手に持ち駒の金を吐き出させたのが緩急自在の指し回し。結果的にこれが端緒となって佐々木七段の攻め急ぎを誘発することに成功しました。

優位に立った藤井JT杯覇者は正確な速度計算をもとに一転して攻め合いへ。直後の銀打ちが決め手でした。終局時刻は17時9分(15時55分対局開始)、最後は攻防ともに見込みなしと認めた佐々木七段の投了により藤井JT杯覇者の4年連続となる準決勝進出が確定しました。準決勝の対戦相手は広瀬章人九段と決まっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井JT杯覇者は局後「中盤は苦しいと感じるところもあったが粘り強く指せた」と振り返った(写真は第72期王座戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    藤井JT杯覇者は局後「中盤は苦しいと感じるところもあったが粘り強く指せた」と振り返った(写真は第72期王座戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)