雑草と米ぬかだけで本当に野菜は育つ?

うちの畑では、刈った雑草をビニールマルチの代わりに野菜の根元などに敷いて使っています。マルチングは土の保湿・保温・雑草防除が主な目的ですが、雑草をマルチとして使うと、土づくりの効果も期待でき野菜の生育も良くなります。その上から米ぬかをまくと、さらに効果を感じられます。

うちの畑の様子。雑草を敷いて、たまに米ぬかをかけるだけでも十分に育つ

この方法を知ったのは、僕が自然農を実践する農家で研修を受けた時のことでした。そこでは20年以上、その畑に生えている雑草を刈って土の上に敷き、ときどき米ぬかをかけるという方法で土づくりをしていました。僕はそれだけで立派に野菜が育っているのを見て、とても驚きました。一般的な農業の常識からすると、栄養素の総量が足りないのではないかと感じたからです。
しかしその後、実際にうちの畑でも同様にやってみたところ、目に見えて土質が改善しました。作物の生育についても、少なくとも自給用であれば十分に育ちます。僕が畑づくりを教えている多くの生徒の皆さんにも実践してもらっていますが、初心者でも簡単にできるので、ぜひおすすめしたい方法です。 

なぜ雑草と米ぬかの組み合わせが良いのか

この雑草と米ぬかの組み合わせについてですが、相性が良い理由として以下の2つがあると考えています。

①栄養素のバランスが良い

植物の生育に欠かせない3大栄養素は、窒素・リン酸・カリウムです。雑草に含まれる栄養素は、主にカリウムや炭素。3大栄養素の1つが含まれてはいるものの、あまり栄養豊富な資材とは言えません。しかし米ぬかを加えれば、雑草だけでは不足しがちな窒素とリン酸を補給できます。

米ぬかには、野菜の生育にたくさん必要とされる窒素とリンが豊富に含まれています。特にリンは自然界の中でも貴重な栄養素なのですが、雑草はこのリンが少なくても成長できるようになっているので、もともと土壌にリンが少ない場合、雑草だけでの土作りではこれが不足する可能性があります。
うちの畑は火山灰土壌である黒ボク土に覆われています。黒ボク土の土地はリン不足になりがち。なぜなら、火山灰に含まれるアルミニウムやアロフェンという物質にリンが強く結びつき、水に溶けにくい「難溶性」の状態になってしまうため、野菜が吸収しやすい形のリンが少なくなってしまうからです。米ぬかには植物が吸収しやすい形のリン酸が含まれているので、栄養素のバランスが整いやすくなるのです。

雑草を敷いていただけで土はフカフカになる

②根圏微生物が増えやすい環境を作れる

雑草と米ぬかを合わせることで栄養素のバランスは整いますが、それでも一般的に考えると家畜ふん堆肥(たいひ)や化学肥料に含まれる栄養素に比べ、総量はかなり少なめです。そこを補ってくれているのが、微生物による働きなのではないかと僕は考えています。
 
特に大きいのが野菜と共生する根圏微生物の働きです。この根圏微生物は野菜の根にすみつき、野菜から炭水化物を得る代わりに野菜の養分吸収を補助します。また菌糸を伸ばすことで、野菜の根が届かない範囲や細かい隙間(すきま)などにもネットワークを広げて養分を集めます。さらに先ほど述べた難溶性のリンのような野菜が吸収しにくい栄養素も、微生物がこれを溶かして吸収することができるようになります。

たくさんの種類がある根圏微生物は、家畜ふん堆肥や化学肥料ではなく、雑草や米ぬかのような植物性の資材中心の土づくりをすることで数が増加することが分かっています。一方、化学肥料で土づくりをする場合は、すでに野菜に吸収されやすい形になった栄養素を投入することになるため、この根圏微生物の役割を奪ってしまい、数を減らしてしまうそうです。

見かけの栄養素の総量が普通より少なくても、こうして根圏微生物が仲介してくれるため、吸収効率が良くなり野菜が育つのではないかと考えています。
 

使う雑草の種類について

イネ科雑草の枯れ草は土をフカフカにするキャプション>

雑草にもたくさんの種類がありますが、大きく分けると硬い草と柔らかい草に分かれます。硬い草とは、繊維質が多く硬くて分解の遅い草のことです。基本的にはイネ科雑草や多年生雑草のセイタカアワダチソウ、カラムシなどがこれにあたります。硬い草は比較的栄養分が低めですが、分解が遅いので土を保湿・保温するために被覆する資材として、または痩せている土を団粒化しフカフカにする資材として向いています。柔らかい草とは、イネ科以外の一年生雑草のほとんどが該当しますが、柔らかくて分解の早い草です。比較的養水分が多く、栄養素を土壌に補給する資材として向いています。

僕は、その土地を肥沃(ひよく)にするために必要な種類の雑草が生えると考えています。痩せた土地では繊維質の硬い草が生えやすく、これらは土の素材としてとても適していて、土を団粒化させることで物理性を向上させます。土が団粒化し、さまざまな土壌生物が生きられるようになると、次第に土は肥沃になり、柔らかい草が生える環境に遷移します。そうすると養分が土壌に供給されるようになり、さらに肥沃な土壌になっていきます。ですので、あまり深く考えずにその土地に生えている雑草をその土地に返してあげるだけでも、自然と土づくりができるのです。

雑草の種について

柔らかい雑草は土が肥沃なところに生えやすい

雑草を畑に入れることで、その種が畑に落ちてしまい雑草が増えることになるのではと心配する人も多いと思います。確かに厄介な草の種を畑に入れないに越したことはありません。しかし、雑草は種が落ちればすぐに芽を出すわけではありませんし、その土地の環境に合っていなければ繁茂することもありません。先ほど述べたように、土づくりが進むと肥沃な土地にしか生えない柔らかい草が増え、強害雑草と呼ばれるような硬い雑草は生えにくくなります。ですので、雑草の種を気にし過ぎず、まずは土づくりを進めることを優先に考えた方が結局は楽になると考えています。

雑草を積んで米ぬかをかけるだけで土づくり

雑草を積んで米ぬかをふりかけ、かき混ぜた後の様子

これから野菜を植え付ける場合も方法はいたって単純で、立てた畝の上に雑草をたくさん積み上げて米ぬかをかけるだけです。雑草は30~40センチほどの長さに切ります。雑草に落ち葉などが混ざっていても大丈夫です。土の上に刈った草を10~20センチ以上の高さを目安に重ねていきます。米ぬかは最後に草の上にまいていくか、草の中に混ぜ込みます。目安としては1平方メートルあたり、400〜500ccほどあるとよいです。一度にたくさんの量をかけなくとも、手に入る度に少しずつかければそれでOKです。米ぬかをふりかける際のコツとしては、塊にならないように全体に均等にまいていくことです。ご飯にふりかけをかける時のように、おいしそうにふりかけてあげましょう。雑草を土に敷くと虫が湧くのではないかと質問されることがありますが、基本的に刈った雑草をエサとするような虫は、土づくりを早めてくれる分解者ですので、むしろ歓迎すべきものと思います。

野菜を植える際は穴をあけるように雑草をよけてから植えていきます。野菜の根元は風通しを良くするために、雑草を薄めに敷きます。雑草を積んでからすぐに植えてもよいですが、土づくりの効果が表れるまでは1カ月以上はかかりますので、種まきをする1カ月以上前から準備しておくとよいでしょう。基本的には収穫の終わった畝の野菜を片付けた後すぐに、畝の上で雑草を積んでおくと、雑草が生えるのを抑制すると同時に土づくりができるのでおすすめです。

今のうちにたくさん雑草を集めておこう

夏時期は敵のように思える雑草ですが、土づくり効果のとても高い資材です。うちでは地域清掃で出る雑草をまとめてもらってくるほどです。面倒な時はただ雑草を山のように畑の隅に積み上げ、たまに米ぬかをかけるだけで、勝手に堆肥化されていきます。ぜひたくさんの人に有効利用してもらえればと思います。