EXILE CUP 2024 東海大会を制した山室山フットボールクラブ [写真]=Kaz Photography

 四方を緑の山々に囲まれ、中央を木曽川が流れる岐阜県八百津町。風光明媚な町にある八百津蘇水公園多目的グラウンドで、株式会社LDH JAPANが主催する小学4年生~6年生によるフットサル大会「EXILE CUP2024」の東海大会が行われた。大会には岐阜県を始め愛知、三重、静岡の4県から計52チームが参加。9月に愛媛県今治市で行われる決勝大会進出を目指し、熱戦を繰り広げた。

 8月18日に行われた東海大会のゲストは、橘ケンチさん(EXILE/EXILE THE SECOND)と砂田将宏さん(BALLISTIK BOYZ)。開会式では小学生の時にこの「EXILE CUP」に出場したという砂田さんが、「優勝はできなかったけど、仲間と一緒に戦ってすごく楽しかった。みんなも大人になった時に、この大会を思い出してもらえるように全力で応援します」と宣言。「目一杯楽しんでください」と、子どもたちを激励した。

 続いてEXILE TETSUYAさんの監修のもと日本サッカー協会が開発した「クラッキ!ダンス」でウォーミングアップ。EXPG STUDIOのEPIインストラクターRikaさんのポイントを押さえた指導で、楽しく体をほぐすことができたようだ。

 予選リーグは4チームずつ13ブロックに分かれたリーグ戦。各ブロック1位の13チームと、2位の成績上位3チームが決勝トーナメントに進出できる。

 気温30度を超える暑さの中で始まった予選リーグ。今大会最初のゴールはなんと開始10秒にも満たない時間で生まれた。シュートを決めたのは山室山フットボールクラブ(松阪市)の綾絆人(あやはんと)くん。相手のキックオフから脇啓翔(わきけいと)くんがボールを奪うと、前線でパスを受けた綾くんがしっかりゴールを決めて先制。その後もゴールラッシュで14-1の大勝を収めた。

 チーム全員で盛り上がっていた名森サッカースポーツ少年団(安八町)も印象的だった。ゴールを決めればみんなで喜びのダンスを踊り、ミスをしても「ナイス!OK!いいチャレンジだった」と、常にポジティブな声が飛び交う。加藤義尉(よしやす)コーチは「今日、子どもたちは大好きなサッカーをやりに来たので、失敗しても楽しんでほしいと思っている」と、厳しい言葉を封印。伸び伸びとプレーした選手たちは見事に3連勝で決勝トーナメントに進出した。

「女子のワンチームで試合できる機会が少ないので、こういう大会は非常にありがたい」と言うのはJUVEN.FC.FLOR(岐阜市)の田口孝コーチ。JUVEN.FC.FLORは過去になでしこリーグにも選手を輩出したことのある名門チームだ。今回は4年生と5年生だけで試合に臨み、体力差を補うために必ず2人でボールにアタックするなど粘り強い戦いを見せた。その姿にはゲストの砂田さんも「すごく良いチーム」と感心しきり。惜しくも勝利をつかむことはできなかったが、第3試合では自ら得た直接FKを決めるなど奮闘した5年生の寺島櫻良子(さくらこ)さんは、「チャレンジはできた。将来はなでしこジャパンの谷川萌々子選手のようになりたい」と、夢を語ってくれた。

 予選リーグ最終戦でドラマのような試合をしたのは郡上八幡FC(郡上市)だ。「2試合目で負けちゃったので、2位通過するためには大量得点するしかなかった」(武藤陽空くん)という状況のなか、シュートを決めてもすぐにボールを拾い、センターサークルにボールをセット。7分ハーフの試合でなんと20ゴールを奪い、ギリギリで決勝トーナメント進出を決めた。「がけっぷちで、みんなが声掛け合って頑張ったことがうれしい」と、佐藤保則監督もほおを緩めた。

 決勝トーナメントの対戦カードを決める抽選会では、ゲストの橘ケンチさんが「負けたチームのためにも頑張ってほしい」と激励。実際に予選リーグ以上に熱のこもった試合が繰り広げられた。

 決勝トーナメントで最も大きな声援を受けていたのは、地元の八百津FC Jrスポーツ少年団(八百津町)。昨年もベスト16に進出し、今大会は決勝トーナメントでの1勝を目標に臨んだ。しかし、対戦相手のFC LASELVA(笠松町)に4得点を奪われ、目標には届かず。八百津FC Jrスポーツ少年団のGK水野良春くんは「負けちゃったけど、最後までみんなで頑張れた」と大粒の涙を流し、母の愛さんに「よく止めたね。頑張った」と励まされていた。

 準決勝では神戸SS U12(神戸町)と山室山フットボールクラブ(松阪市)、そして美濃加茂コヴィーダJFC(美濃加茂市)とUNICO MIE(桑名市)が対戦。どちらも岐阜県のチームと三重県のチームが決勝進出を争う形となった。

 お互いにボールをしっかりつなぎ、レベルの高い試合運びができていた神戸SS U12と山室山フットボールクラブの対戦は、前半に1点、後半に1点を奪った山室山フットボールクラブが勝利。神戸SS U12はシュートがポストを直撃するなどチャンスもあったが、相手の体を張った守りの前に涙を飲んだ。もう一方の準決勝、美濃加茂コヴィーダとUNICOの対戦は、0-0のままPK戦に突入。後攻の美濃加茂コヴィーダJFCの3人目、キャプテンでGKの祖父江岳(そぶえがく)くんが、決めれば勝利という重圧の掛かるPKを思い切りよく決め、決勝に進んだ。

 頂上決戦にたどり着いたのは、試合前に「楽しんで勝とう」と全員で声を掛け合った山室山フットボールクラブと、円陣を組んで「切り替えを早く」と確認し合った美濃加茂コヴィーダJFC。試合はこの暑さの中でもパスワークが冴えた山室山フットボールクラブが主導権を握る。開始3分にこぼれ球に詰めて先制すると、相手の守備を完全に崩して前半のうちに2点を追加した。美濃加茂コヴィーダJFCはハーフタイムに「まだ終わってない、行けるよ」と祖父江くんが大きな声を出してチームメートを勇気づけ、後半も粘り強く戦ったものの、セットプレーから決定的な4点目を奪われて勝敗は決した。

 最後まであきらめずに攻撃を仕掛けた美濃加茂コヴィーダJFCの戦いぶりを見守った橘ケンチさんは「本当にいい試合だった。これまでのEXILE CUPの中で一番暑くて厳しかったと思うけど、子どもたちのエネルギーには驚かされるばかり。この暑い一日が思い出と共にみんなの心に残って、好きなことを追求していくきっかけになってくれればうれしい」と、頑張った子どもたちに思いを寄せた。

 4-0で東海王者に輝いた山室山フットボールクラブのキャプテン寺下旺志郎(てらしたおうしろう)くんは、「みんなが一生懸命走って、声を出したこと」が優勝の要因だったと語りつつ、「体調に気をつけて、自分たちのできることを精一杯練習からやって、全国大会でもビビらずに自分たちらしさを出したい」と、これからの準備が大切だと語った。

 また、チームを率いた西村隼人コーチは、「EXILE CUPに初めての参加で、全国の舞台も初めてだけど、大舞台に強い子ばかりだし、緊張して縮こまったらもったいないので、楽しんで自分の持つ120%の力を出してほしい」と語った。

 表彰式を終えた選手たちは、笑顔で橘さんや砂田さんと記念撮影。砂田さんは「初の全国大会でも自分たちらしさを発揮して、さらに成長して強くなってほしい」と、東海代表として全国に挑む山室山フットボールクラブにエールを送った。

文=斎藤 孝一 写真=Kaz Photography