今回の放送では、気象研究者の立花義裕(たちばな・よしひろ)さんがゲストに登場。今年の夏の異常気象や地球温暖化について伺いました。
◆ゲリラ雷雨が急増している理由
原:今日のゲストは、気象研究者で三重大学生物資源学研究科教授の立花義裕さんです。
玉川:「羽鳥慎一モーニングショー」でよくお会いするんですけど、一対一じゃないからいつも深くは聞けないんですよね。本日はよろしくお願いします。今年の夏は猛暑、ゲリラ雷雨ですけども、なぜこんなことになっているのでしょうか?
立花:まず、ゲリラ雷雨についてですけども、今年は観測史上一番雷が多いんですよ。そもそも、なぜ雷が鳴るのかを説明します。地面が非常に温かくて上空が冷たいとき、軽い温かい空気と重たい冷たい空気が混ざるわけです。上昇気流が起こって雲ができるのですが、さらにプラスして水蒸気がいっぱいあるとゲリラ雷雨になりやすいんです。まずここまでが基本です。
玉川:暑いというのが重要なんですか?
立花:暑いだけだったらそこまでゲリラ雷雨にはならないんですよ。雷が鳴る重要な要素は水蒸気です。その水蒸気がどこから来るのかというと、海からです。今年は日本周辺の海、特に関東周辺の海はめちゃくちゃ温度が高いんですよ。
原:それはなぜですか?
立花:まず、地球の温暖化で日本の海の水温が高くなっています。猛暑によって温度が上がるのは陸だけじゃなく海も同じなんですね。加えて、黒潮という熱帯からやって来る海流が、今年はぐにゃぐにゃ蛇行して関東の南にぶつかっているんです。そこから房総半島に回って東北地方まで行っているんですね。
玉川:いつもは違うということですか?
立花:そうです。黒潮はいつも八丈島(伊豆諸島に属する有人島)あたりに流れているんですよ。だいぶ南です。暑いことと水蒸気量が増えている、この2つの条件が整っているのは過去にありませんでした。
◆地球温暖化は他人事ではない
玉川:なぜ今年の黒潮は蛇行しているのでしょうか?
立花:最近、黒潮がゆっくり流れているんです。ゆっくり流れるとふらつくんです。
玉川:川の流れと同じ理屈ですね。山に近い急流はまっすぐだけど、海に近くなって流れが緩やかになると蛇行する。では、なぜ黒潮は流れが遅くなったのでしょうか?
立花:まず、黒潮はなぜ流れるかのお話をしますね。黒潮の上に吹いている風が海流を引っ張るんです。
玉川:海流って勝手に水が流れているんじゃなくて、空気に引っ張られて流れているんですね。
立花:はい。海流は気象で起こっているんです。なぜ黒潮が遅いかといいますと、引っ張る風も近年遅いんですよ。
玉川:風というのは偏西風ですか?
立花:そうです。昔は偏西風という気流が日本付近に強く吹いていて、海流も強く流れていたんですね。だから偏西風も黒潮も真っすぐ流れていたわけです。
原:なぜ偏西風はゆっくりになってしまったのでしょうか?
立花:偏西風の場所が日本よりも北になったからです。偏西風は真ん中付近が強く吹くのですが、それが日本よりも北に上がってしまったと。また、偏西風は赤道と北極の温度差が大きければ大きいほど強く吹きます。
玉川:赤道と北極の関係って南北ですよね。偏西風は東西の流れですけども、どう関係するのでしょうか?
立花:南と北の部屋で温度差があると、窓を開けると風が吹き込んできますよね。そうすると玉川さんがおっしゃるように、偏西風は赤道から北極にかけて風が流れるはずですよね。ところが地球は西から東に自転をしているので、南から北に動く気流は東の方向に流れていくんですよ。
玉川:なるほど! 南北の温度差によって偏西風が遅くなる理由がわかりました。では、なぜ南北の温度差が小さくなったのでしょうか?
立花:温暖化です。まず、地球上のどこもが同じように温暖化しているわけじゃないんですよ。世界で一番温暖化している場所は北極なんです。
玉川:つまり、地球温暖化で北極が暖かくなり、それによって東京でゲリラ雷雨が起こっているということですか?
立花:そういうことですね。北極の温暖化というのは、今まさに起こっているゲリラ雷雨の一因です。ですので、北極の温暖化というのは他人事ではないわけです。
<番組概要>
番組名:ラジオのタマカワ
放送エリア:TOKYO FM
放送日時:毎週木曜 11:30~13:00
パーソナリティ:玉川徹、原千晶
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/tamakawa/