第83期順位戦C級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、4回戦全17局の一斉対局が9月3日(火)に各地の対局場で行われました。このうち、関西将棋会館で行われた出口若武六段―黒田尭之五段の一戦は162手で黒田五段が勝利。ライバルの4連勝を阻止して3勝1敗の白星先行としました。
相掛かりの振り飛車戦?
開幕3連勝の出口六段、2勝1敗で追う黒田五段ともに負けられない一戦。両者のこれまでの直接対決は出口六段の4戦全勝と偏りがあります。出口六段の先手番で始まった本局は相掛かりに進展、後手の黒田五段がひねり飛車の要領で飛車を転換したことにより後手陣は三間飛車の石田流の形に合流します。
居飛車を主戦場としつつ、時には振り飛車を採用することもある黒田五段。ここからの手順は軽快を極めました。敵飛のいなくなった2筋から飛車を成り込んだのが実戦的なさばきの手順。形勢は難解ながら、絶えず攻めの手番を握る黒田五段にとって不満のない中盤戦のわかれに落ち着きました。
勝負分けた合駒選択
先手陣内での攻防が続きます。味よい銀打ちで飛車の捕獲に成功した黒田五段はこれで攻めが切れないことが確定。暴れるしかない出口六段が二枚桂のパワーで猛追しつつ下駄を預けた直後がハイライトとなりました。黒田五段が一間竜の王手で迫った局面で出口六段は合駒の種類を問われています。
結果的には出口玉が上部に脱出した際に玉周りへの利きが残る桂合いが正着でした。実戦で選ばれた銀合いも手堅い選択に見えましたが、数手後に指された黒田五段の玉立ちが格好良い決め手。これで先手から駒を渡さず詰めろをかけるのが難しくなっています。終局時刻は21時59分、最後は自玉の詰みを認めた出口六段が投了。
持ち時間を残していた出口六段としては最終盤での二択の結果が勝敗に直結してしまったのが悔やまれる形に。対出口戦5戦目にして初勝利を挙げた黒田五段は敗れた出口六段と並んで3勝1敗の成績となりました。なおこの日の結果を受けC級1組の全勝者は飯島栄治八段はじめ4名に絞られています。
水留啓(将棋情報局)