お盆休みが終わりましたが、このあとも猛暑日が続く見込みだといわれています。まだまだ冷房の使用が欠かせない日が続きそうですが、長時間使用していると「頭痛」や「倦怠感」など身体の不調を感じる人も多いのではないでしょうか。この症状は「クーラー病」「冷房病」と呼ばれています。今回は「クーラー病」の予防や対策方法について愛晋会中江病院の中路幸之助先生にお伺いしました。
■クーラー病の症状は?
――クーラー病について教えてください。
夏場にクーラーが効いた部屋に長時間いると、体温調節がうまくいかなくなるなどして、身体にいろいろな影響が出てきます。このようなクーラーが身体に悪影響を及ぼす病気のことを総称して「クーラー病」と呼んでいます(もちろん、適切なクーラーの使用は熱中症の予防に重要です)。
「クーラー病」の原因として、「自律神経の失調」があげられます。その「自律神経の失調」を来す原因として、屋内外の大きな温度差があげられます。クーラーのよく効いた涼しい部屋と暑い屋外を何度も出入りしたりすることで、自律神経が疲弊し、そのバランス調整が出来にくくなります。クーラーの効いた部屋では、生理的に体温を維持するために血管が収縮し、一方で外の暑い環境では血管を拡張し熱が放散されます。このことが繰り返し行われることで自律神経が疲弊し、「クーラー病」が発症すると考えられています。このように、「クーラー病」は、「自律神経失調症」の一つであると言っても良いでしょう。
――クーラー病になってしまうと、どういった症状がでるのでしょうか?
自律神経の失調による症状のため、個人差があります。全身倦怠感、下肢の浮腫・しびれ、冷えや微熱、咽頭痛、鼻水、頭痛、咳などの感冒様症状、腹痛、嘔気、便秘・下痢などの胃腸症状など様々です。
クーラー病になると、四肢末端および内臓を含めた全身の血流が悪化し、身体が温まらず、加えて発汗しにくくなることで、疲労物質等が体内に貯留し、全身倦怠感や免疫力の低下を来すとされています。クーラーの設定温度の低い部屋で長時間過ごすと、室内の空気が乾燥しているため、上気道の粘膜が乾燥し、風邪に類似した症状が出現します。そして、乾燥によりバリア機能が低下した粘膜にウイルス・細菌が付着し感染症をおこして発熱などを認める場合があります。また、胃腸の機能は自律神経の支配を受けており、クーラー病により自律神経の調子が乱れると、同時に様々な胃腸症状を来すとされています。
――クーラー病にやりやすい人の特徴はありますか?
クーラー病になりやすい人には、痩せている方、高齢者、女性などの筋肉量が少ない人があげられます。筋肉は熱を産生して蓄える作用があり、筋肉量が少ないとクーラーによって身体が冷えやすくクーラー病になりやすいと考えられます。
また、糖尿病や脳血管障害などにより皮膚の感覚が低下している場合も考えられます。そのほか、日頃から冷え性や体温が低めの人(平熱が35℃以下)もクーラーで身体が冷やされることで、さらに体温が低くなりクーラー病になりやすいと考えられます。
■クーラーの使い方を工夫しよう
――予防と体調不良を感じたときの対策方法について教えてください。
予防と体調不良時の対策には、衣類で体が冷えることを避け、クーラーの使い方の工夫して、体を温めるなどがあげられます。
以下にそのポイントを示します。
【1】衣類で冷えを防ぐ
クーラーが良く効いた室内にいる場合は、ノースリーブや半そで・Tシャツのままでいると、冷気が直接皮膚に当たって体温が奪われてしまいます。春夏物の通気性のよい上着やカーディガンを羽織って、体の冷えを予防しましょう。特に下半身や足元は冷えやすいので、ブランケットや厚めの靴下を着用して冷えを防ぎましょう。
【2】エアコンの設定温度・風向きを調節する
クーラーの設定温度については、外気温マイナス5℃ほどで設定するのが良いとされています。部屋の大きさなどの状況にもよりますが、これ以上低くすると寒暖差が大きくなり身体に影響するため、できる限りこの設定にするように心がけましょう(例:外気温が30℃の場合は、25℃程度)。そして、クーラーの冷気が直接体に当たらないようにしましょう。エアコンの風向は水平か少し上向きに設定しましょう。もともと冷気は下にたまりやすいため、下半身や足の冷えも予防できます。またサーキュレーターを使用し、冷気を循環させるとさらに効果的です。
【3】お風呂にはいる(湯船につかる)
暑いからとシャワーで済ませずに、たまにはお風呂にはいることも大切です。ぬるめのお湯にゆっくりつかると、全身の血流が良くなり、クーラーによる冷えを改善できます。
【4】体を温める食材などをとる
暑い時期は、よく冷えた飲み物や冷たいかき氷をよく取りがちですが、たまにはスープなど、温かい食事を取ると、血流が改善されクーラーによる冷えが良くなります。また、生姜や漢方薬のニンジンなどは体を温める効果があり、こうした食材や薬剤を併用してみるのも良いでしょう。
【5】ストレッチや適度な運動をする
クーラーの効いた部屋で長時間過ごす時、屈伸運動などのストレッチを行って、筋肉を使いましょう。筋肉を使うことで熱を作り、体を動かすこと血流がよくなるので、冷えを抑えることができます。また、夕方から気温が下がる時間に軽いウォーキングを行うなどして足の血流を改善することで、体の冷えを改善できます。
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