これといったストーリーはなし。フリーターの3人組が深夜、ファミリーレストラン「ビッグボーイ」でダラダラとユルい会話を繰り広げる“だけ”のドラマ『THE3名様』。今年は初の連続ドラマ『THE3名様Ω』(全24話)がFODで配信され、劇場版第2弾『映画 THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~』が30日に公開される。

2005年にDVDリリースから始まった同ドラマがなぜ、19年たった今も連ドラ化・映画化されるほどの需要を持っているのか。同映画のプロデュース・監督を務める森谷雄氏に話を聞くうちに、「原作者との蜜月関係」「原作への愛」というキーワードが見えてきた――。

  • 『映画 THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~』プロデュース・監督の森谷雄氏

    『映画 THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~』プロデュース・監督の森谷雄氏

きっかけは主演陣の3人「この漫画面白いんですけど」

普通に考えれば「画がもたない」…過去に制作会社でドラマ企画などに携わっていた筆者の経験では、コミック『THE3名様』はそう言われ、実写化しようとすれば難航する。なにせ物語という物語が存在しない。ファミリーレストランでフリーターの3人がただしゃべっている“だけ”の映像作品を「誰が観るのか」「誰がお金を出してDVDを買ったり借りたりするのか」という疑問が制作責任者に浮かぶのは当然だ。

だが、『THE3名様』はその常識を打ち破った。DVDシリーズは2010年まで13本を数え、いわゆるDVDカルチャーのトップを走り、2022年に突如、復活。それも劇場版であり、1週間限定公開だったはずが、新宿バルト9では5週間も公開されるほどのヒットを得た。この企画が動き始めたきっかけを、森谷監督はこう語る。

「主演陣の佐藤隆太さん、岡田義徳さん、塚本高史さんの3人からコミックを見せられたんです。お3方は僕が初めてプロデュースした映画『ROCKERS』(03年)に出演しており、その打ち上げで3人から“この漫画面白いんですけど、今ここに僕ら3人いますよね”と言われたのが入り口。でも僕は、その申し出を放ったらかしにしていたんですよ(笑)。その2年後、僕がプロデューサーとして携わったフジテレビ月9枠のドラマ『東京湾景~Destiny of Love~』で佐藤さんと再会。僕が“まだやりたいと思っていますか?”と尋ねると“もちろんです!”と。“じゃあやろうか”と企画がスタートしました」

監督には『SMAP×SMAP』『ココリコミラクルタイプ』などを手がけた構成作家・福田雄一氏を起用した。つまり福田雄一氏を“監督”にするという入り口にもなったのだ。そしてこれが10作品以上も続くほどの大ヒットに。

「3作品ほど撮った頃、YouTubeが出てき始めたのです。(1シチュエーション、ユルい展開、ショートストーリーである)本作はYouTubeに向いているのではないかと言われ始めたので、実際にYouTube用に撮り下ろし、英語字幕までつけて配信したら相当に相性が良かった。(今も続けられているのは)SNS全盛期到来という時代背景とうまくマッチした結果かもしれません」