beabadoobeeが語る成長とありったけの本音「音楽は私にとってマジでセラピー」

ビーバドゥービー(beabadoobee)が通算3作目となる最新アルバム『This Is How Tomorrow Moves』を発表した。2022年にサマーソニックで初来日を果たし、翌年にはテイラー・スイフトのUSツアーでオープニング・アクトを担当。今作は共同プロデューサーに巨匠リック・ルービンを迎え、米カリルフォルニア州マリブのシャングリ・ラ・スタジオで録音された。進境著しい「Bea」ことベアトリス・ラウスに、彼女と同じZ世代のライター・竹田ダニエルがインタビュー。カリフォルニアの光と闇、アーティストとして成長するための過程、そしてすべてを曝け出すことについて包み隠さず語ってくれた。

―音楽的にどのように進化を遂げてきたのか、アーティストとしての軌跡について話したいですし、人間関係やメンタルヘルスについてどう向き合ってきたのかも個人的に興味があります。まず、「Ever Seen」のMVを東京で撮影するついでにDYGLのNobuki AkiyamaとLuby SparksのErika Murphyから、東京で一緒に遊んだと聞きました。最高だね! 東京の滞在は楽しめた?

Bea:本当に最高だった! 人生の中でも最も楽しかった瞬間の一つだと思う。特にミュージックビデオを作っていると感じなかったほどでした。ただ東京や京都を走り回って撮影して、友達と遊んでいただけって感じ。カラオケにも行ったりして、日本のいろんな場所を経験できました。

―日本のファンもそう聞いてとても喜ぶと思う! このアルバム(『This Is How Tomorrow Moves』)がどのようにしてできたのか、制作過程について、そしてリリースが近づいている今の気持ちを教えてください。

Bea:いつもスタジオでアルバムをレコーディングする時には結構不安になるしストレスでもある、なんでかっていうともう曲は書けてはいるけど、どういう形になるかわからなくて。だし、スタジオでは周りにいる人を信頼しているのと、無理してまで不必要なことを言うこともないかなと思ってあんまり発言しないことが多いんだけど。でも、シャングリ・ラでの作業は初めて自分の仕事に自信を持てた時だったかも。今までの中でも最も健康的で、幸せでした。

最もエモーショナルになったのは楽曲を書いている時かな。ここ2年くらいの間、現実に立ち戻ってはまだそれに打ちのめされては成長をしてという繰り返しを経て、そのことについて書いてたからね。無理もないというか。これからリリースされるということを考えると、遠い先のことのようにも考えられるし、気づいたらあっという間なのかもしれない。今はもう楽しみすぎて、早くリリースしたくて仕方がない。最初は本当に緊張しかなかったけど、今はただただ楽しみって感じ!

―アルバムをリリースするにはいくつかの段階があると思います。リスナーに公開されてから、次はツアーで観客に聴かせますよね。テイラー・スウィフトとツアーをしたことが大きな話題になっていますが、このアルバムをツアーすることについてどう感じていますか?

Bea:本当に楽しみです。ツアーに対する考え方が変わったし、最高のものになると思う! 以前のツアーでは、家から遠く離れることと向き合う方法がよくわからなかったし、不健康なことをしてもはや自滅みたいになることも結構あった。今はもっとずっと健康的なマインドでツアーに出られるので、ライブで曲を演奏するのがとにかく待ち遠しい!

Photo by Jules Moskovtchenko

―ありがとうございます。個人的な経験やこのアルバムに影響を与えた音楽的な影響について教えてください。このアルバムにおいてカリフォルニアが大きなテーマになっているように感じるのと同時に、結構カリフォルニアの暗い部分も一つのテーマなのかなと思って。カリフォルニア出身者としていうと、あそこは非常に晴れやかでありながらもかなり憂鬱な場所でもあるよね。また、ご自身の恋愛・人間関係についてもかなりオープンに発信していますよね、その辺りを聞かせてください。

Bea:音楽的な影響としては、ビートルズがいつも私の中で大きな存在であり続けているし、このアルバムではそれがさらに明確になっていると思う。エリオット・スミスも常に影響を受けてきたけど、最近の作曲過程でいうとフィオナ・アップルが結構新しい影響を与えてくれました。もちろんソングライティングの技術は素晴らしいし、それに加えて、プロダクションスタイルに最も惹かれた。彼女のプロデュースをやった人の名前を忘れちゃったけど(ジョン・ブライオン)、その同じ彼はエイミー・マンの音楽もプロデュースしてるんだよね。エイミー・マンも大好き! 彼女も超大きな影響を与えてくれました。ソングライティングだけでなく、プロダクションスタイルもそう。彼女の音楽のピアノやオルガンの存在感をこのアルバムに取り入れたくて……って音楽的な影響の話し始めたら止まらないけど! パイングローヴも新しい影響源だったな。シャングリ・ラに入る前、それから制作中はパイングローヴに超夢中になってた。他にも色々あると思うけど、一旦思いつくものを共有するとそんな感じかな。

ビーバドゥービー作成のプレイリスト「This Is How Tomorrow Moves」。上述のアーティストのほか、チボ・マット、マルーン5、ペイヴメント、コリーヌ・ベイリー・レイなども収録

Bea:個人的な経験としては、前作『Beatopia』を掲げてツアーしたり、フェスもいっぱいやっていて、ここ2年はアメリカ、特にカリフォルニアでかなり長い時間を過ごしました。アメリカにしばらく行かないと、結構アメリカっていう国のことを頭の中で美化しがちなんだけど、いざ戻ると毎回厳しい現実に直面するというか。うわ、めっちゃ家から遠いじゃん、慣れ親しんでいる場所からめっちゃ遠いじゃん、ってね。何カ月も休みなくツアーが続くと、それもある種の恐怖になってきて、健康的なスケジュールを自分で見出せずに苦しむ経験が「California」という曲では描かれています。何カ月も休みなくツアーがあって、例えばショーが5回連続休みなく続いたりするわけ。結果としてそれがめちゃくちゃメンタルヘルスにも、精神的にも身体的にも響いていることがわかって。だから「California」という曲は、その問題と向き合って解決していく過程について歌っている感じかな。

曲を書くとき、「リリースされたらどうなるんだろう」ってことはあんまり考えないようにしていて、自分のためだけに曲を書くように意識していて。制作中に人生で何かにぶち当たっている時は100%それについて書くし、脆弱でリアルであることは絶対に避けられないんだよね。最終的には、これめっちゃ常套句だけど、音楽は私にとってマジでセラピーだから。

時々、自分の脳みそが私に何を伝えたいのかわからなくなる時があるけど、そういう時に曲を書くと、全部理解できるようになったりする。それに、弱さを吐き出すというのは、私に似た人たちが音楽を聴いてくれるっていうのを知ってるから、とても大事なことだと思う。私と同じ年齢だったり、もっと若かったり、それで似たような悩みを抱えている。だから私の音楽に共感してくれる人が絶対にいるっていうことを考えると、制作している時はすごく安心する。

「成長」を後押し、リック・ルービンとテイラーからの学び

―インターネットがあらゆる物事を大袈裟にしてしまったり、他人のパーソナルなことに足を踏み入れてしまいやすくなったりする問題について過去にお話しされていましたよね。これはメンタルヘルスともすごく関連性のある話だと思って。パーソナルな関係性をファンとも持ちやすいのと同時に、例えば新たな音楽的なアプローチに驚くファンもいるかもしれない。どのようにして音楽的に、商業的に、数字的にここまでの「成長」と向き合ってきたのか、そしてファンの期待とご自身の成長とのバランスをどうやって保ってきているのか、とても興味があります。

Bea:やっぱ「昔と同じ」にずっとしがみつくのって無理だよね。成熟して成長するためのごく自然な過程であると理解しなきゃいけない。自分の過去の楽曲も大好きだけど、それから私は超いろんな音楽を聴いてきてるし、歌も演奏も超いろんな経験を積んできている。ミュージシャンってそうやって成長するものだよね、って。それに抗うことはできないし、その変化を受け入れられない人がほとんどだってことも納得しなきゃいけない。

でも、心の底では……マリブを出る前にリック(・ルービン)が私に言ったことを思い出すんだけど。私はとにかく、自分と同じくらい、みんなにもこのアルバムを好きになってほしい!っていう気持ちがあったんだけど、リックは何回も「君はこの作品が好きか?」と聞いてきた。「もちろん」と答えたら、「じゃあそれがすべてだ」と言われて。それを心に留めておいて、何回も自分に言い聞かせないといけないことだと思うようになった。自分が一生懸命アルバムを作ったのなら、すべてがバランスが取れた感じになる。もうそこまで来たら、誰がどう思うかとか、リリースすることに対する恐怖もなくなっていくというか。それを自分に言い聞かせながら、できるだけ「普通の生活」をするように心がけてる。もうずっとSNSに張り付いてるし、SNSも大好き! だけど、何事もやりすぎは超悪いし、実際一歩外に出てみると、ネットで書かれてることなんてまるで存在しないみたいな気持ちになる。だから最近はそれを意識してるし、外が晴れてるとそれはやりやすいと、胸を張って言えるよ。なんせロンドンは最近ずっと雨だから、気分もちょっと悲しくてね。でも今日は久々に晴れたから最高! SNSの狭い空間から抜け出しやすくなる。

―そういう意味で、カリフォルニアでのレコーディングが何か作品に変化を生んだりしましたか?

Bea:うん、ロンドンのせわしなさとかストレスとか不安とか、全てから離れることができた。私は、特にめっちゃFOMO(取り残される不安)がある方だけど.....例えばハロウィンの時期にはLAでたくさんのパーティーがあったけど、人生で初めて、「あのさ、あのパーティに入ろうと思えば入れるけど、でも今私たちがいる場所が最も入りづらい特別な空間じゃない? ここから出る理由なくない?」ってなって、FOMOは1ミリも感じず、音楽に完全に没頭できた。それはかなり助けになったと思う。

この投稿をInstagramで見る beabadoobee(@radvxz)がシェアした投稿

―日本のファンは、リック・ルービンとのコラボレーションについて興味があると思います。彼は業界の大物ですからね。

Bea:本当にスピリチュアルな体験でした。マジで、最初にシャングリ・ラに行ったときは、いろいろな噂を聞いていたのもあって、「本当に来るのかな〜」なんてうっすら不安にも思っていて。でも、実際にきてくれたし、彼に会えない日が何日かあったとしても絶対に戻ってきてくれて、言うべきことがあれば言ってくれるし、何もなければ私たちの好きにやらせてくれた。それはアルバムにとってもすごく良い効果をもたらしてくれた。だって最終的には自分と自分が作るものを信頼してるし、リックと共同プロデュースしてくれたジェイコブ(・バグデン)も彼自信を信用しているし、私も彼を信頼している。だからリックは決して過干渉ではなかったけど、いっぱいアドバイスや知恵を共有してくれたり、「え、これいるかな?」って思うようなメモとかも私ていたりするけど、でも実際にその通りにやってみると、もう全然違ってくるし、最初に疑ったこと自体が馬鹿みたいに思えてくるわけ。

―具体的な例をいくつか教えていただけますか?

Bea:例えば「One Time」は、元々はシンプルなベースラインだったんだけど。それと一個、私たちとしてはこれでいいじゃんっていうコードがあったんだけど、リックはそれをどうしても変えたくて、変えないとめっちゃ気持ち悪くなるとか言って。「どういうこと?」とか思ったんだけど、1日かけて新しいベースラインを探ってみて、その例の一個のコードをリフに変えたら、それだけで曲を急に昇華させたし、超面白くなったの。「This Is How It Went」みたいな曲に関しては、リックは曲の背景も全部知ってるし。だって、私あのスタジオでほぼ1カ月半生活していたから、全部の曲の裏のストーリーを彼に伝えなきゃいけなかったし。それで彼は、あの曲のブリッジは超エモーショナルでどストレートで、アルバムの中で最もリアルな場面だって言うことを知ってて。そしたらリックは、ギターを全部そこでミュートして、ストリングスだけでアカペラで歌えって言ってきて、最初は「音楽が全部消えたら、大袈裟すぎない?」て思ってめっちゃ怖かったんだけど、いざやってみたらすごく理屈が通っていたし、超いい意味で芝居がかったの。そういった瞬間は本当に助かった。

―その経験は、他のアーティストとコラボすることに対する見方を変えたりしましたか?

Bea:特にプロデューサーと仕事をする時に対する意識が変わったと思う。強いて言うなら、自分のソングライティングや自分が作る音楽に対して自信を持つべきだっていうことがよくわかった。今作は確かにコラボレーションではあったけど、その中でも自分の選択に対しては自立した決断ができていたし、自分の意見も常に聞いてもらえていると感じました。そういう意味では、ロンドンでも作れたようなアルバムだとは思った。たくさんの人とコラボレーションすることは今でもちょっと抵抗があるけど、今回の経験を通して、何に関しても「機会があったらやってみるべき」ということに気づけた。で、そのことについては「Beaches」という楽曲で歌っています。

―成長についてよく言及していますよね。テイラー・スウィフトのファンとして、彼女とのツアー経験や得た知恵についてお聞きしたいです。

Bea:一つ学んだのは、3万人とかの超大勢の前で失敗しても、10人の前で失敗しても、実はあんま変わらないってことかな。クソ失敗しても次の日に起きてる頃にはまるで何も起きなかったかのようだし、失敗はそんなに大したことないってわかったとう意味ではあのツアーを通してかなり自信がついた。意外とみんな気づかないんだよね。それと、テイラーの曲のブリッジに対する執着はとっても興味深かった。個人的にはブリッジは今までそんなにこだわっていなかったくて、「はいはいこれからmiddle eight(真ん中の8小節)の時間ね、とりあえず何かぶちこんでおけばいいんでしょ」みたいな感じだったんだけど、ブリッジだけで曲をあんなに変えられるんだ、っていうことをテイラーの生演奏を通して学べたし、このアルバムを書いているときにもすごく意識したことだった。ていうことで、テイラー・スウィフトありがとう!

ビーバドゥービーのInstagram(@radvxz)より引用

―へー、おもしろ! 社会全体、そして音楽業界におけるアジア系の人たちの活躍を応援する動きが出てきていますよね。(アジア系ミックスである)レイヴェイとコラボをしたり、ご自身もフィリピン系アーティストのレプリゼンテーション(表象)について語ってきましたが、このムーブメントについてどう思いますか? カテゴライズされることにエンパワメントを感じますか、それとも制約を感じますか?

Bea:両方かな。時には単なる女性アーティスト、または単なるアーティストなのにな、って思うこともあるし。なんで「女性」ってわざわざつけるかというと、音楽業界における私たちに対する様々な不平等なことがまだまだ存在するということが見えるから。人種に関してもないわけじゃなくて、議論がとても大切だと思う。自分が子供だった頃は、フィリピン系、もしくは東南アジア系の女の子でロックミュージックをやっている人をずっと見たかったし。そういう存在がいなかったからこそ、今もこうして活動を続けるインスピレーションにもなっている。だってそもそも、この活動もジョークで始めたし、それで急に注目され始めて、続けたほうがいいのか、やめて保育園の先生になったほうがいいのかもわからなくなっちゃって。でも他の様々な素晴らしいアジア系のアーティストがどんどん活躍しているのを見て、レイヴェイみたいに最高の音楽を作っているのを見て、めちゃくちゃモチベーションになったし、アジア系のアーティストがこうやって活躍するのが「タブー」じゃないんだって知れるだけでもとっても嬉しかった。今となっては私たちみたいな人はたくさんいるし、人種や出身という壁よりも先のことが見えるようにはなったけど、「私みたいな見た目のアーティストがまたいるんだ」って知ることだけでも、ある意味安心するんだよね。

―ビーバドゥービーの美的世界観やメイクのスタイルは、若いアジアの女の子たちに超人気だしね!あなたがロールモデルとなっているのはめちゃくちゃ最高だと思う。

Bea:確かにね!

「みんな私のこと嫌いなの?」というトラウマとの戦い

―あと2つ質問があります。今回のアルバムで聞かれるのが特に楽しみな曲、もしくは逆に怖い曲はありますか?

Bea:えー、怖い曲? めっちゃある(笑)。家族と際どい会話をしなきゃいけなくなるような曲もあるし、それは嫌だな……あとは過去の経験から言うと、アーティストだから曲をリリースするわけだけど、曲をリリースすることに怒る人とかさ……アーティストなのに……圧倒的に「This Is How It Went」は考えるだけでリリースがマジでめっちゃ怖いし超不安。「Tie My Shoes」はすごく重い曲で、もはやライブで演奏できるかもわからないな。「The Man Who Left Too Soon」もそうだね。すごく楽しみな曲は、怖いけどリリースがワクワクする、みたいな曲。純粋にリリースするのが楽しみなのは「Beaches」と「Real Man」かな。うーん、でもやっぱ正直に言うと全部リリースするのが楽しみ!

―アルバムの中だと、特に「Girl Song」という曲が気になりました。女性のあり方や女性の怒り、フィオナ・アップルの再評価とかと合わせて興味深い曲だと思って。

Bea:「Girl Song」は、ただただ超絶重い曲だね。アルバムの他の曲では全部ちょっとずつ希望とか許容みたいなものが散りばめられているんだけど、この曲だけはもう自分の見た目に対して絶望から抜け出せない瞬間について書いた曲。あれを書いたときは、思い返せば生理の1週間前とかだったから、まあどういう感じの曲になるか想像がつくよね。すごく自分を曝け出した曲だし、バラードなんだよね。実は自分史上初のバラードで、それもちょっと怖いんだけどさ。

―面白いですね。一部のファンはバラードやソフトな曲を求めているようだけど、結構今回はそこから離れてるんだね。

Bea:私は意外とバラードのリクエストはあまり見ないんだけど、代わりにロックサウンドを求めてくる人がめっちゃ多い。マジで黙ってくれよって感じなんだけどさ。ロックのBeaがまた聴きたい! ロックミュージック作ればいいじゃん!ってね。てか音楽って色々あるんだけど?みたいな。マジで、一つのジャンルに固執するのなんて、想像しただけでつまんなくない? そんなのするわけないじゃん!

―Pitchforkみたいなメディアからの批評と、ファンからのフィードバックは、どっちも別問題だと思うんだけど、どう向き合ってますか?

Bea:もうね……どっちもマジで死にたくなる! しかも、必ずついてくることだしね。でも自分がアルバムを好きならそれでいいって、みんなに言われるし、普段から一生懸命そう考えるようにしてるけど、それでもやっぱり影響されないって言ったら嘘になる。特に不正確なことを言われると辛い。「Beaがロックやめちゃった!」とかね。いや、普通に8月16日(※当初のリリース予定日、実際は8月9日に前倒しで発表された)まで待てよ、そんなおおごとじゃないからさ、みたいな。あとは、一番傷つくし、ちょっと悲しいのは、「昔の音楽が恋しい」って言われること。え、だって、昔の曲ってそこに存在してるじゃん?ってなるんだよね。聴くためにそこにあるじゃん、て。もうその曲を作った自分には戻れないし、同じような曲調の曲を20曲作るわけないんだしさ。結構きついときあるんだよね。でも、さっきも言ったように、一歩でも外に出て太陽を浴びたり、友達と出かけてスマホを見なかったりすると、え、やば、全部マジでどうでもいいじゃん、ってなるんだよね。

―全員を喜ばせることはできないし、全員の意見が重要というわけじゃないしね。

Bea:いやマジでそう。マジでそうなんだけど、どうしても人に好かれたいっていう気持ちが強くて。てか、これも幼少期のトラウマからきてるわけなんだけど(笑)、常に「えーなんでみんな私のこと嫌いなの?」とか、一生気になっちゃうんだよね。その気持ちとずっと脳内で戦ってる。

―超わかる! このインタビューは日本向けなので、特にアジアや日本のオーディエンスに対して、あなたのアルバムがどのように受け入れられることを期待していますか?

Bea:好きになってもらえて、共感してもらえたらいいな。正直、何よりも、私のことを気にかけてくれて私の音楽を聴いてくれるだけでも超感謝してる。日本は私の中でもとっても大切な場所で、まあアジアの国は割とどこでもそうだし私は日本人じゃないんだけど、毎回日本に行くたびに、どこか不思議とホームのような気持ちになってくるんだよね。早くライブするのが楽しみすぎる!

Photo by Jules Moskovtchenko

―最後に、今、何を一番楽しみにしていますか? また、何に一番不安を感じていますか? 実は同じことかもしれないけど。

Bea:面白い質問だね。アルバムが出たら、自分をもっと理解できるようになってたらいいな。それに、誰がなんて言ってて、どう思ってるかとか、アルバムがリリースされた後になのが起きるかとか、そういうごちゃごちゃしたことにあんまり引き摺り込まれないといいな。不安な気持ちと同時に楽しみな気持ちが混在してる感じだけど、ただただ今の幸せが続くといいなって思う。

―今の回答は、音楽家としてのキャリア全体にも当てはまると思いますか?

Bea:そうだね。今は色んな意味ですごく居心地が良いし、バランスも取れてるし、お家にいつもいられるのも最高。だからアルバムがリリースされるとどうしても発生するギラギラキラキラみたいなことに急いで巻き込まれすぎないといいなって。

―「成長」について話を伺ってきましたが、音楽家として、また人として成熟する中で、最も大事にしているのは何ですか?

Bea:一番大切なのは、失敗から学ぶ教訓だね。アルバムを一言で表すと、それに尽きる。

―その経験について本当はもっとお話を聞きたいけど、時間が足りないね。

Bea:いやマジで、失敗について話すには丸っともう1日必要だよね!

―あなたとあなたの音楽に特別さえを与えるのは、地に足をつけたリアルな側面と、人としての生活を大切にしていることだと思います。忙しいスケジュールの中でも楽しんで過ごせることを願っています。これからのご活躍をお祈りしています。

Bea:ありがとう!

ビーバドゥービー

『This Is How Tomorrow Moves』

配信中:https://beabadoobee.ffm.to/thisishowtomorrowmoves

国内盤:2024年8月16日発売

歌詞対訳・解説付/日本盤ボーナス・トラック収録

CD予約:https://virginmusic.lnk.to/bd_TIHTM