第2局:対藤井戦ついに初勝利 伊藤七段、前例の少ない将棋を見事に切り抜ける

  • 第9期叡王戦五番勝負第2局、89手で伊藤七段が勝利した(提供:日本将棋連盟)

伊藤七段が藤井聡太に挑むこと13局目の本局。藤井叡王の角換わり△3三金型早繰り銀に対して、自陣に馬を引き付け手厚く指す伊藤七段。たくさんの駒がぶつかる難解な将棋を抜け出したのは、伊藤七段でした。

(以下抜粋)

攻め方いろいろ

  • 第3図

第3図の場面で先手玉への迫り方は多岐にわたり、感想戦でも多く時間を割かれた局面でもあった。

まず①△4七銀は、▲4一銀△4二玉(△同玉は▲6三馬が王手馬取り)▲6三馬△4六角に、▲7六金と飛車を取った手が幸便。②△4五銀は▲同銀△2八角成▲3四銀△8九飛▲7九歩に、△8七歩成なら▲3三銀成~▲4五桂と殺到して、先手がよさそう。

3番目の手として③△2七銀(参考図)が検討された。

  • 参考図

▲同飛△同桂成▲7六金△8七歩成▲7九金△2九飛なら後手もやれそうだが、参考図から▲2四歩が入るかが難しく、△同歩なら▲2七飛と取る手や、▲6三馬と入ってどうか。お互いがいつでも飛車が取れる形だけに、難解極まりない。

実戦は④△6六飛▲同歩に△8七歩成と踏み込んだが、結果的によくなかった。 「明らかに(先手玉が)広くなってしまった。どれか勝負できる順が発見できなかった」と藤井。

藤井の連勝止まる

先に飛車を切ってから△4五銀と打ったのが第4図。

  • 第4図

先手にとって決めどころだが、匠の技で寄せの網を絞っていく。

▲4五同銀△同桂▲同馬△2八角成の瞬間が一瞬甘く、玉のコビンを攻める▲4四歩が痛打になった。△4四同歩なら▲3四馬と潜り込み、△3三金と抵抗しても、▲2三銀△同金▲4三銀から後手玉を下段に落としていけば、寄り筋になる。

△4七飛の攻防手にも、伊藤は慌てなかった。既に一分将棋に入っていながらも、馬を攻防に利かしながら確実な寄せで収束した。

  • 投了2図

投了2図からは△7三玉と逃げても、▲7四歩△同玉▲8六桂△7三玉▲6五桂までの即詰み。

タイトル戦初勝利の伊藤は「早い段階から前例の少ない将棋になり、午前中から激しい展開でしたが、午後に入ってから一手一手、選択肢の広い局面が続いて非常に難しい将棋だったかなと思う」。 一方の藤井は、「こちらから動いていくような将棋だったが、伊藤七段に手厚く受け止められて、最後はきっちりカウンターを合わされてしまった」と振り返った。

(将棋世界2024年7月号より 第9期叡王戦五番勝負第2局 伊藤、13局目の初勝利―無双 藤井の連勝止まる―/【記】編集部)

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