猛暑日が続き、熱中症への注意が呼びかけられています。最近ではコロナも流行していますが、頭痛や発熱といった症状は熱中症や夏風邪とも共通していて見分けるのは難しいもの。そこで青山メディカルクリニック院長の松澤 宗範先生に夏の体調不良の特徴や対処法についてお伺いしました。

■夏は体調を崩しやすい季節

――夏の体調不良として多い症状にはどのようなものがあるのでしょうか

松澤宗範先生:夏の体調不良にはさまざまな症状が見られますが、特に発熱、疲労、睡眠不足、食欲不振、胃腸の不調、頭痛、動悸・息切れ、めまいや立ちくらみなどが特徴的です。猛暑の中、屋内外の温度差が大きい環境を行き来することで自律神経が乱れ、循環器や消化器、呼吸器など全身の臓器に影響を及ぼします。このため、体が適切に機能しなくなり、体調不良が引き起こされます。

――なぜ夏は体調を崩しやすくなるのでしょうか

松澤宗範先生:夏の暑さは睡眠にも影響を与えます。暑くて眠れず、睡眠不足に陥ることで日中の疲労が回復できず、体調が悪化しやすくなります。睡眠不足は免疫力の低下にもつながり、さらに体調を崩しやすくなります。

冷たい食べ物や飲み物を摂り過ぎることも、夏特有の体調不良の原因となります。冷たいものを多く摂取すると胃腸が冷え、消化器の機能が低下して下痢を引き起こすことがあります。消化器の機能が低下することで、必要なエネルギーやビタミンが不足し、全身のだるさや疲労感が顕著になります。

また、水分や塩分の不足による脱水も夏には起こりやすいです。長時間の直射日光や暑さの中での運動によって過剰に汗をかくと、体の水分とともに塩分やミネラルも失われ、脱水状態になります。脱水が進むと頭痛やめまい、立ちくらみが起こることがあります。これらは熱中症の症状の一つであり、特に高齢者や子供、肥満の人、持病のある人はリスクが高いため注意が必要です。

■熱中症、コロナ、夏風邪の症状の特徴

――熱中症、コロナ、夏風邪のそれぞれの症状の特徴を教えてください

松澤宗範先生:夏に多い体調不良として、熱中症、コロナウイルス感染症、夏風邪の症状の特徴を理解することが重要です。

■熱中症

熱中症は、高温環境において体温が急激に上昇し、体温調節がうまく機能しなくなることが特徴です。通常、人体は発汗や血流の調整によって体温を一定に保つ仕組みを持っていますが、極端な暑さや湿度の中ではこれらの調整機能が追いつかなくなることがあります。

その結果、体温が42℃を超えるような高体温が持続し、体内の機能が正常に働かなくなります。この状態が続くと、強い喉の渇きや意識障害、めまい、吐き気、筋肉のけいれんといった深刻な症状が現れます。体が適切に冷却されないまま放置されると、臓器不全や脳障害などの重大な合併症を引き起こすリスクがあります。

また、熱中症は体力のある若年層だけでなく、高齢者や子供、持病のある人にとっても非常に危険です。これらの人々は体温調節機能が弱いため、より早く深刻な症状に陥る可能性があります。

■コロナウイルス感染症

コロナウイルス感染症の主な症状には、発熱、強い倦怠感、持続する咳、のどの痛み、鼻水、味覚・嗅覚障害などがあります。これらの症状は、一般的な風邪やインフルエンザの症状と非常によく似ていますが、特に味覚・嗅覚障害が特徴的です。多くの患者は、食べ物の味が感じられなくなったり、匂いが分からなくなったりします。この特徴は、他の呼吸器感染症とは異なるため、診断の一助となります。

初期症状としては、発熱が見られることが多く、日常的な活動を行うのが困難になるほどの疲労感を感じることがあります。持続する咳は、ウイルスが呼吸器系に感染し、炎症を引き起こしていることを示しており、しばしば乾いた咳が特徴です。

症状が重篤化して呼吸困難を引き起こすこともあります。これは、肺に炎症が広がり、肺胞に液体がたまり、酸素の交換がうまくいかなくなるためです。呼吸困難は、肺炎や急性呼吸窮迫症候群の兆候であり、緊急の医療介入が必要です。高齢者や基礎疾患を持つ人は、これらの重症化リスクが高いため、特に注意が必要です。

また、コロナウイルス感染症は、感染者の一部に長期間にわたる後遺症を引き起こすことも報告されています。これには、長引く倦怠感、集中力の低下、息切れ、関節痛などが含まれます。これらの後遺症は、日常生活の質を大きく低下させる可能性があり、回復後も医療やリハビリが必要となるケースがあります。

■夏風邪

夏風邪は、高温多湿を好むアデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスなどによって引き起こされることが多いです。夏風邪の特徴的な症状として、体温の変動があります。通常、体温が42℃を超えることはありませんが、1日の中で体温が上がったり下がったりします。

加えて、その他の症状としては、喉の痛み、鼻水や鼻づまりも一般的な症状であり、軽い咳も夏風邪の症状の一つです。倦怠感もよく見られる症状であり、体全体がだるく、疲れやすくなります。また、消化器系の症状も見られることがあり、腹痛や下痢が発生することがあります。これは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが腸管に感染することで生じる症状です。

発疹も夏風邪の特徴的な症状の一つで、特にコクサッキーウイルスによる感染では手足口病として知られる発疹が見られます。夏風邪は一見すると軽い病気のように思われがちですが、ウイルスの種類や個々の健康状態によっては深刻な合併症を引き起こす可能性があります。