第83期順位戦C級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は3回戦に突入。8月5日(月)には片上大輔七段―藤本渚五段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の雁木を駆使した藤本五段が111手で勝利。2勝1敗として白星先行としました。

2敗目は許せない

片上七段2勝0敗、藤本五段1勝1敗で迎えた一戦は早くも昇級に向けた大一番。30名以上で3つの昇級枠を争うC級1組では年度によって8勝2敗の好成績でも昇級に届かないケースがあります。さて本局、先手の藤本五段が雁木囲いに組んだのは想定された作戦。

雁木戦法は自ら角道を止めるだけにやや消極的と見られており、特に先手番で指す場合は千日手への警戒も欠かせません。実戦は後手の片上七段が右四間飛車の攻撃陣を敷いて先攻、あくまで守勢の藤本五段は自玉を深く囲って迎撃の姿勢を示します。

流れ断ち切った歩の手筋

中央での競り合いが続いたのち、藤本五段がリードを奪ったのは夕食休憩に入る直前のことでした。交換で手にした角を敵陣深くに打ち込んだのが素朴ながら厳しい飛車香両取り。藤本五段としては相手の攻め急ぎを誘って反撃を得た形で、こうなると自玉の堅さが光ります。

受けてばかりでは勝てないと見た後手も反撃を開始、片上七段が飛車取りに銀を打ち込んだ局面が本局のハイライトでした。パッと目につく飛車を逃がす手は後手に猛攻を許し危険。このタイミングで飛車取りを手抜き、後手玉の守りの要である金頭へのたたきの歩で再び反撃に転じたのが藤本五段の充実ぶりを示す好手でした。

昇級戦線に踏みとどまる

なんとか山場を乗り切った藤本五段は一転して軽妙手の連続で敵玉攻略に乗り出します。玉頭への垂れ歩で陣形を乱したのが決め手で、これにより直後の飛車打ちが痛打に。終局時刻は21時45分、最後は自玉に有効な受けが無いことを認めた片上七段が投了を告げました。

これで勝った藤本五段、敗れた片上七段ともに2勝1敗に。全体を振り返ると中盤で優位に立った藤本五段が後手の反撃に苦しみつつも、たたきの歩一発で悪い流れを断ち切った格好です。本局を除いたC級1組3回戦16局の一斉対局は本日8月6日(火)に各地の対局場で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤本五段は局後「踏みとどまって(たたきの歩を)打てたのがよかった」と手ごたえを口にした(写真は第37期竜王戦6組ランキング戦決勝のもの 提供:日本将棋連盟)

    藤本五段は局後「踏みとどまって(たたきの歩を)打てたのがよかった」と手ごたえを口にした(写真は第37期竜王戦6組ランキング戦決勝のもの 提供:日本将棋連盟)