第74期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は二次予選が進行中。7月30日(火)には第1ブロックの豊島将之九段―西田拓也五段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、四間飛車から独創的な構想を披露した西田五段が108手で勝利。難敵を下してリーグ入りまであと1勝としました。
西田流の押さえ込み策
本二次予選は6名からなる3つのトーナメントを勝ち抜いた3名が挑戦者決定リーグ戦に進むもの。豊島九段は本局から、西田五段は岡部怜央四段に勝っての登場です。後手となった西田五段は四間飛車を採用、雁木を左右反転させたような囲いに玉を収めたのが最初の工夫でした。
西田五段の独創的な指し手は続きます。先手の居飛車穴熊に向かって右側の金銀を力強く上がったのがそれで、先手の攻め駒を押さえ込みつつ端からの穴熊崩しを見込んでいます。これを見たSNS上は「すごい陣形」「これは森門下の系譜」と盛り上がりを見せました。
観戦者あ然の穴熊攻略
右玉の要領で玉を自陣三段目に上がったあと、左辺に出払っていた飛車を9筋へ大転回したのが「西田オリジナル」完成の合図でした。戦力を端に集中させて穴熊を直接襲ってしまえば居飛車からの2筋攻めの厳しさも緩和されます。ここから西田五段の独り舞台が始まります。
豊島玉がなんとか穴熊の定位置からはい出したとき、銀打ちの犠打で再び危険地帯に誘ったのが穴熊攻略の決め手。駒得しながら先手先手で攻めが入る形になっては後手優勢がはっきりしてきました。終局時刻は16時35分、最後は自玉の詰みを認めた豊島九段が投了。
独自の穴熊攻略を炸裂させた西田五段はこれで一次予選から数えて王将戦6連勝。次戦で自身初となる挑戦者決定リーグ戦入りを懸けて同門の高田明浩五段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)