実際に取材が始まると、竹迫は最初からすべてをさらけ出してくれたが、金子さんは心を開いてくれるまでに時間を要したという。それでも、「“金子さんの素の部分を撮りたいんです”と重ねてお願いしたら、その熱意を買ってもらいました」(蜂谷D)と思いが通じた。

2人とも、蜂谷Dを信頼して密着を受けていたのがうかがえるエピソードがある。

「密着期間中、僕に初めて子どもが生まれたんですけど、竹迫さんが“僕に捧げる”と言って、“妄想彼女のみいちゃんが犬との子どもを作る”というネタを作ったんです。それが、めちゃくちゃダメ出しされていたので、こちらにも責任があると思って、ちょっと申し訳ない気持ちになりました(笑)」

「金子さんの舞台の脚本を読ませてもらったら、ご自身がドキュメンタリー番組に密着されている私小説のようなストーリーになっていて、僕をイメージしたディレクターも出てくるんです。まさに取材を受けている実体験から書いていました」

  • 蜂谷時紀ディレクター

夢がない人よりも、全然幸せそうに見えた

2人に長期密着することで、どんな人柄を感じ取ったのか。金子さんについては、「背が高くて存在感があるんです。前編の銭湯のシーンで、“見ている目線や好きなものが違うから面白い”と言われていましたが、存在が面白くて、ポジティブな感じがありました」と印象を語る。

一方の竹迫は、いつも周囲に芸人仲間や友人がいるのが印象的で、「めっちゃいい人なので、友達も多いんです。借金の原因は、後輩におごっちゃうということもあって、昔ながらの芸人さんという感じがあります」という。

図らずも、堅実で真面目な金子さんと、芸人仲間と飲み歩いて恋愛に浮かれてしまう竹迫という対照的な2人が主人公に。それでも、「2人とも、とても人間臭いんですよね。落ち込んだり、喜んで元気になったり、喜怒哀楽がすごくあって、人間味がとてもあるんです」と魅力的な共通点があった。そして、「どんなにお金がなくても、夢に向かっている人は心まで貧乏ではないんだと感じました。夢がない人よりも、全然幸せそうに見えたんです」と強調する。

そんな彼らへの密着取材を通して、感化される部分もあったのだそう。

「彼らのすごいところは、夢に全賭けして“やる!”と決めているところですよね。辞めてしまう人がすごく多い業界の中で続けている姿を見て、頑張ってほしいという気持ちもあるし、自分も制作者として全然未熟ですが、改めて頑張って続けていきたいと思うようになりました」

それだけに、「彼らが今の部屋を出る時は見たいと思います。その時は夢を諦めて田舎に帰るのか、売れてもっと良い家に住むのかということになるはずなので、2人とも売れてほしいですね」と願った。