7月7日に投開票を迎える東京都知事選挙。さまざまなテーマで論戦が行われる中、特に公約として注目されるのが「子育て支援」です。

制度が充実しているといわれている東京都ですが、実際東京都の子育て世帯はどれくらい子育て費用の負担が減っているのでしょうか。東京都で現在行われている子育て支援や助成・給付金、サポート制度などをまとめました。

  • 令和6年6月時点での東京都の子育て支援情報まとめ

■東京都の子育て支援~助成・給付・サポート制度~

<助成・給付制度>

東京都では、不妊治療や不妊検査の費用、特別な環境に置かれた子どもや未熟児の医療費に対して、さまざまな助成・給付を行っています。

たとえば、「東京都特定不妊治療費(先進医療)助成」では、不妊治療における経済的負担を軽減するため、体外受精および顕微授精を行う際に、保険適用された治療と併用して自費で実施される「先進医療」に係る費用の一部が助成されます。

<018サポート>

018サポートとは、都内に在住する18歳以下の子どもに対し、1人当たり月額5,000円(年額6万円)を支給することで、学びなど子どもの育ちを切れ目なくサポートし、「子育てのしやすい東京」を目指すものです。

以下のいずれにも該当する子どもが対象で、所得制限はありません。

1.0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある方
2.2024年度中に都内に住所を有するまたは有していた方(原則)

<東京都出産・子育て応援事業~赤ちゃんファースト~>

東京都出産・子育て応援事業の「赤ちゃんファースト」は、子どもを産み育てる家庭を応援・後押しするために、妊娠届出や出生届出を行った妊産婦等に対し、育児用品や子育て支援サービス等を提供するものです。

具体的には、国の「出産・子育て応援交付金」を活用し、区市町村と連携して以下の経済的支援を実施します(※)。

1.妊娠時…対象となる妊婦1人当たり5万円相当
2.出産後…対象となる児童1人当たり10万円相当

妊娠時は国の「出産応援ギフト」5万円分、出産後は国の「子育て応援ギフト」5万円分に東京都独自で5万円を上乗せし、10万円分の経済的支援を実施します。

(※)2023年4月1日以降に出産される方向け

<子育て応援とうきょうパスポート>

「子育て応援とうきょうパスポート事業」は、東京都が、子育てを応援しようとする社会的機運の醸成を目的に展開している取り組みです。この事業では、企業・店舗等が、子育て世帯や妊娠中の方がいる世帯に対して、さまざまなサービスを提供しています。

子育て世帯や妊娠中の方がいる世帯には都からパスポートが交付され、本事業に協賛する企業・店舗等で提示することで、サービスが受けられます。パスポートの利用対象者は、都内在住の18歳未満の子ども(※)がいる、または妊娠中の方がいる世帯です。

(※)18歳に達した後、最初の3月31日を迎えるまでを対象とする

<ファミリー・サポート・センター>

ファミリー・サポート・センター事業は、子どもの送迎や預かりなど、子育ての「支援を必要とする人(依頼会員)」と「支援を提供したい人(提供会員)」が、地域で相互援助を行う仕組みです。センターは区市町村から委託等を受けた法人が運営しており、会員同士のマッチングや提供会員への研修などを行っています。

ファミリー・サポート・センターは、子どもの送迎(保育施設、学童クラブ、子どもの習い事など)や、子どもの預かり(冠婚葬祭や他の子どもの学校行事への参加、買い物・外出、短期間就労、保育施設の開始前や終了後)などに利用できます。

■東京都の子育て支援~医療関連~

<マル乳・マル子・マル青>

乳幼児医療費助成制度(マル乳)は、都内各区市町村内に住所のある6歳に達する日以後の最初の3月31日までの乳幼児(義務教育就学前までの乳幼児)を養育している方を対象にしたもので、国民健康保険や健康保険など各種医療保険の自己負担分を助成します。

義務教育就学児医療費の助成(マル子)は、都内各区市町村に住所のある義務教育就学期にある児童(6歳に達する日の翌日以後の最初の4月1日から15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者)を養育している方を対象にした制度です。

入院については国民健康保険や健康保険の自己負担額が助成され、通院(調剤および訪問看護を除く)については国民健康保険や健康保険の自己負担額から一部負担金(通院1回につき200円(上限額))を控除した額を助成します。

高校生等医療費の助成(マル青(あお))は、都内各区市町村内に住所のある高校生等(※)を養育している方を対象にしたもので、入院については入院時食事療養標準負担額のみ負担します。通院については、通院1回につき最大200円まで負担します(調剤と訪問看護については負担はない)。

(※)高等学校の就学期(15歳に達する日の翌日以後の最初の4月1日から18歳に達する日以後の最初の3月31日)にある方を指し、高校在学中か否かを問わない

<身体障害児の自立支援医療(育成医療)>

身体障害児の自立支援医療(育成医療)は、保護者が東京都に住所のある18歳未満の児童で、身体に障害のある方、または、現存する疾患が、当該障害または疾患に係る医療を行わないときは、将来において障害を残すと認められる方で、手術等によって障害の改善が見込まれる方が対象となります。

医療保険各法による医療給付を優先し、その残りの額から自己負担額を控除した額を助成します。原則として治療費の1割が自己負担額となり、入院時の食事療養費は自己負担です。

ただし、区市町村民税(所得割)が23万5,000円以上(平成19年7月1日施行)の世帯の方は、原則として対象外(※)です。なお、医療費助成が受けられる医療機関は、全国の指定された指定自立支援医療機関(育成医療)となっています。

(※)「重度かつ継続」の障害に該当する場合は、経過措置(2024年3月31日まで)により対象となる

<未熟児の養育医療>

未熟児の養育医療は、東京都に居住する未熟児で、入院して養育を受ける必要があると医師が認めた乳児(0歳児)が対象で、医療保険を適用した場合の患者自己負担額が助成されます(家族の収入に応じて費用の一部負担あり)。

対象となる未熟児は、以下の通りです。

1.出生時体重が2,000グラム以下の乳児
2.1以外の乳児で、生活力が特に弱く、「対象となる症状」に掲げるいずれかの症状を示す乳児

・対象となる症状

1.けいれん、運動異常
2.体温が摂氏34度以下
3.強いチアノーゼなど呼吸器、循環器の異常
4.繰り返す嘔吐など消火器の異常
5.強い黄疸

<小児慢性特定疾病医療費助成>

小児慢性特定疾病医療費助成は、小児慢性特定疾病にかかっている児童等について、健全育成の観点から、患児家庭の医療費の負担軽減を図るため、その医療費の自己負担分の一部を助成する制度です。

次の2つの要件をどちらも満たす方が対象者となります。

1.申請者が都内に在住(住民登録がされている)している満18歳未満の方
2.小児慢性特定疾病医療支援事業の対象疾病にかかっており、かつ、別に定める認定基準に該当する方

対象疾病およびその認定基準については、「児童福祉法第6条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める小児慢性特定疾病及び同条第2項の規定に基づき当該小児慢性特定疾病ごとに厚生労働大臣が定める疾病の状態の程度」(厚生労働省告示第475号)により一定の基準が設けられています。

<結核児童の療育給付>

結核児童の療育給付は、保護者が東京都の市町村(八王子市および町田市を除く)に住所のある18歳未満の児童で、結核にかかっている方のうち、その治療のため医師が長期の入院を必要と認めた方が対象となります。

なお、特別区や八王子市、町田市は各区市で実施していますので、お住まいの区市に問い合わせてみましょう。

■東京都の子育て支援~学校関連~

<私立高校等の授業料支援>

授業料の一部を助成する「私立高等学校等授業料軽減助成金」については、2023年度までは世帯年収約910万円未満の世帯が対象でした。しかし東京都では、2024年度から、申請により所得に関わらず私立高校等の授業料負担を軽減することができます。

対象者は都内在住で私立高校等に在学する生徒の保護者等で、都内私立高校平均授業料相当額である48万4,000円を上限に支援します。

<私立中学校等の授業料10万円助成>

東京都では、私立中学校等の授業料を年10万円まで助成する支援制度について、2024年度から所得制限を撤廃しました。これまでは世帯年収目安約910万円未満の世帯が対象でしたが、所得制限がなくなったことにより、助成対象者は倍増の約7万1,000人となります。

<高等学校等就学支援金事業>

高等学校等就学支援金事業は、都立学校(都立高等学校、都立中等教育学校の後期課程および都立特別支援学校の高等部)に在学する生徒を対象に、最大36ヶ月(定時制および通信制の課程においては48ヶ月)にわたり、国が授業料を支援する制度です。

支給額は、授業料相当額です。また、都内に在住し、所得制限により就学支援金の対象外となる世帯は、東京都の授業料免除制度に申請することで、授業料等が免除されます。

■東京都の子育て支援~企業や都全体としての取り組み~

<こどもスマイルムーブメント>

「こどもスマイルムーブメント」とは、企業やNPO、大学・学校等の幅広い主体の連携により、「チルドレンファースト」の社会を創出する東京都の取り組みです。「子どもの目線を大切にした取り組み」を推進し、子どもを大切にする社会気運の広がりを目指します。

このムーブメントには、企業やNPO、大学・学校等のほか、著名人や東京都、区市町村、経済団体、労働団体も参画し、それぞれの強みを活かした活動を展開することで社会全体への浸透を図っています。

たとえば、東京都の取り組みとしては、ゴールデンウィークのイベント(こどもの日スペシャル)開催や「こども・子育てお悩み相談室」といった特設ページの開設などがあります。

<子供が輝く東京応援事業>

「子供が輝く東京応援事業」は、公益財団法人東京都福祉保健財団による事業です。社会全体で子育ての応援を進めることを目的として、都の出えんおよび都民等からの寄附による「東京子育て応援基金」を活用し、NPO法人等が取り組む、結婚、子育て、学び、就労までのライフステージに応じた事業に対し、助成金を交付します。

里親支援や多胎児支援、学習支援、ひきこもり支援、就労支援など、少子化の要因を解消するための幅広い取り組みが対象となります。

<働くパパママ育業応援奨励金>

「働くパパママ育業応援奨学金」は、公益財団法人東京しごと財団が実施する奨励金で、男性の育業や育児中の女性の就業継続を応援する都内企業等を支援するものです。

対象となる事業者は、都内勤務の常時雇用する従業員を2名以上かつ6ヶ月以上継続して雇用し、都内で事業を営んでいる企業等です。奨励金には4つのコースがあり、奨励されている育業に関する取り組みを実施することで、25万円〜最大410万円の奨励金が支給されます。

■東京都の子育て支援~生前からの支援~

<プレコンセプションケアに係る取り組み>

「プレコンセプションケア」とは、性や妊娠に関する正しい知識を身に付け健康管理を行うよう促すことです。東京都では、若い世代がプレコンセプションケアに興味・関心を持ち、取り組むきっかけになるよう「TOKYOプレコンゼミ」や「妊娠・出産前のヘルスチェック」を行っています。

「TOKYOプレコンゼミ」は、生活習慣や妊娠成立に関する知識についての講座が受講できるもので、妊娠・出産をこれから考える都内在住の18〜39歳の方(パートナーの有無は問わない)を対象に、月1回程度、都内各所にて開催されています。

「妊娠・出産前のヘルスチェック」は、「TOKYOプレコンゼミ」を受講し、検査のことを正しく理解したうえで、希望する方が受けられるものです。都が指定する検査のうち、個人の状況に応じて医師と相談して実施した検査等の費用が助成されます。

<妊娠高血圧症候群等の医療費助成>

「妊娠高血圧症候群等の医療費助成」は、東京都の市町村(八王子市および町田市を除く)に住所があり、対象疾病にかかっている方で、認定基準を満たし、医療機関に入院して治療を受ける必要のある方を対象にした助成制度です。

対象疾病は、妊娠により入院医療を必要とする次の疾病およびその続発症が対象です。

1.妊娠高血圧症候群およびその関連疾患
2.糖尿病
3.貧血
4.産科出血
5.心疾患

なお、本助成を受けるには、下記の1および2の両方の認定基準を満たす必要があります。

1.申請する疾病について、「認定基準」に定める症状に該当すること
2.次のアまたはイのいずれかに該当すること

ア 前年の所得税額が3万円以下の世帯に属すること
イ 対象疾病の治療について、入院見込期間が26日以上であること
(退院後の申請の場合は、実際の入院期間が26日以上)

<卵子凍結に係る費用の助成>

「卵子凍結に係る費用の助成」では、加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を助成します。

対象者は、東京都に住む18歳から39歳までの女性(採卵を実施した日における年齢)で、卵子凍結を実施した年度は上限20万円が助成されます(次年度以降、保管に係る調査に回答した際に、1年ごと一律2万円(2028年度まで実施)を予定)。

■今後の子育て支援にも強い関心が集まる

東京都にはすでにさまざまな子育て支援制度がありますが、都知事選を通して改めて注目度が高まっています。さらなる子育て環境の改善が望まれているようです。