企業・団体が出題するテーマに対して、高校生チームが課題解決に挑むアイデアコンテスト『第10回マイナビキャリア甲子園』が開催された。今大会には、過去最多となる1万人以上が参加。Creation部門では、生命保険協会を代表して出場した「質疑応答独占」チームが見事に優勝している。
企業の担当者は、どのような思いで高校生たちの活躍を見守ったのだろうか? 『第10回マイナビキャリア甲子園』の協賛企業のひとつ、生命保険協会の担当者にコンテストの裏側について聞いてみた。
■コンテストに参画した理由とは
話を聞いたのは、生命保険協会 企画部の水越新さん。普段の業務では、生命保険業に広く関係する施策やデジタル化、データの利活用に関する対応を検討する会議体の運営や、保険教育・金融リテラシーの向上に関する取り組みなどを進めている。マイナビキャリア甲子園では、応募者の審査、協賛に関する会員会社への周知などを担当した。
――『第10回マイナビキャリア甲子園』に参画した理由について教えてください。
高校生にとって「生命保険」は、存在は知っていても、その役割や重要性についてはあまり理解できていない、ということが少なくありません。しかし早い段階からライフプランなどを踏まえたリスクに対する自助努力の重要性を学ぶことは、その先の長い人生において、とても役に立ちます。
そこで生命保険協会では、若い世代に対しても金融リテラシーの向上に向けた各種取り組みなどを行っています。マイナビキャリア甲子園には2019年より参画していますが、生命保険にあまり馴染みのない若者に”学びの場”を提供することで、生命保険の仕組み、生命保険事業への理解を促進できるのではと期待しています。
■テーマに込めた想い
――今年、生命保険協会が設定したテーマは『ITの発達による10年後、その先の社会を想像し、その社会において生命保険協会が提供すべき新しい価値を提案せよ』でした。このテーマには、どんな想いを込めましたか?
生命保険会社においても、刻一刻と変化する社会状況を踏まえたビジネスを考える必要があります。生命保険会社がお客さまに提供しているのは「安心」ですが、社会の変化によって、今後お客さまが必要とする「安心」にも変化があるかもしれません。お客さまに「安心」を提供し続けるためには、10年後、その先の社会において生命保険会社が果たす価値について考える必要があります。
特に、近年のITの発達・変化は目を見張るものがあります。そこで、これを踏まえた生命保険会社の新しい価値について、高校生ならではの自由で斬新な考えを期待したいとの想いから、今回のテーマを設定しました。
――マイナビキャリア甲子園、そして高校生に期待していたことは?
まずは「生命保険」「生命保険会社」について興味をもって調べてほしい、知ってほしい、という気持ちがありました。高校生という早い時期から”将来の備え”について考えるきっかけを作ってほしいと思いますし、生命保険を身近に感じてもらいたい。また保険会社の社会的意義の大きさ、事業領域の広さも同時に感じてほしいと思いました。
将来を担う若い世代だからこそ、10年後、その先の社会における課題を高校生自らが発見し、考えてもらう時間を作れたら良いなと思いました。特に、デジタルやITがより身近になっているデジタルネイティブな高校生だからこそ、生命保険会社が将来抱える”答えのない難しい課題”に、斬新なアイデアで解決策を提案できるのでは、と期待しました。
――実際に参画してみて、いかがでしたか?
高校生たちの将来に対する「想い」に触れることができました。身近な経験をもとに10年後、その先の社会における課題について想像し、自分たちの思い描く将来・世界観はどうやったら実現できるのか、仲間たちと繰り返し検討したことが伝わってくる提案が多く寄せられました。なにより高校生たちが仕上げた提案のレベルの高さには、終始、驚かされました。
もっとも10年後の社会変化について、これまでの変化の延長として直線的に捉えている生徒や、今ある課題に対する解決を提案する生徒も一定数はいたと感じています。提案自体は練られているものの、テーマと整合していないアイデアもあり、もったいない気持ちにもなりました。実現可能性というビジネスコンテストの評価軸とテーマを整合させることの難しさがあったのでしょう。
■どのようにアイデアを磨いた?
――高校生とは、どのようにアイデアをブラッシュアップしていきましたか?
生命保険協会を代表する「質疑応答独占」チームの2人とは、リアルの対面での意見交換を通じてアイデアをブラッシュアップしていきました。ミーティングでは内容の深掘りをメインに行いましたが、2人がその提案に対してどれだけの想いをもって検討してきたか、それを10分間という短い発表時間にいかに凝縮させたか、その熱意が伝わってきて感動しました。
そんなことから、決勝大会では2人の想いがより明確に会場に伝わるように(大人が定型にはめないように)気を付けました。2人が思い描く世界観、届けたい「安心」に近づけるような提案を行い、プレゼンを具体化し、ブラッシュアップを図っていきました。
――高校生とのやり取りの中で、印象的だったエピソードがあれば教えてください。
決勝大会まで残り1週間という時期、「質疑応答独占」の2人は期末試験が重なっていました。決勝大会に向けた提案資料の作成に割ける時間がなく、厳しい状況だったと想像します。しかし決勝大会の当日、2つの提案資料を提示されて「どちらの資料で挑むか悩んでいます」と相談されたんです。
忙しい時期にも関わらず、複数の提案資料を作成して、直前まで納得いくものをすり合わせようとする2人の熱量、その姿勢には驚かされるばかりでした。実際、想いがより強く伝えられる提案を選択し、決勝大会で見事に優勝する、という快挙につながりました。
■コンテストを振り返って
――コンテストを終えて今、どのように総評しますか。
本コンテストに参加してみて、改めて高校生の提案のレベルの高さに驚きました。特にCreation部門で「質疑応答独占」チームの優勝が発表されたときは、本大会に懸けてきた2人の強い想いが報われたように感じ、担当者としても非常に嬉しく思いました。
本コンテストには、高校生が自ら課題を発見し、解決することを通じて「社会」そのものを変える力があると感じています。はじめは高校生が「生命保険」について考える契機になれば、と思っていましたが、むしろ高校生の発想力や提案内容に、私たちが生命保険について改めて考えさせられるばかりでした。
生命保険協会のテーマに応募して下さった高校生の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。このような大会に参画させていただき、本当にありがとうございました。