週1回にジムでランニングする筆者。コロナ禍でジムが休業した際は街中をランニングしましたが、それ以外はトレッドミルでしか走りません。
そんなインドア専用機の筆者のもとへ、フランスのアウトドアブランドのサロモンから初心者向け(これ重要!)「トレイルランニング体験会」の案内状が届きました。場所は高尾山。
初心者向けだし、高尾山で森林浴でもするかー、程度の軽い気持ちで電車に乗り込みました。
サロモンのトレランシューズで満面の笑み
GW前で花粉もようやく落ち着いた感があるし、楽しいハイキングをイメージする筆者ですが、当日はよもやの雨。
肌寒くさもあり、ちょっとどうなのよこれ、という少し落ち込み気分の筆者でしたが……。
拠点となる「Mt. TAKAO BASE CAMP」で筆者サイズのシューズを借りると、もうニッコニコになりました笑。モノ好きはこういうところありますよね。
こういう「過酷な環境で使われる高機能ギア」はいかにもな面構えで格好いいですね!
全地形対応「Contagrip」コンパウンド、2つのパーツで構成された独自のラグパターン、溝の深いトレッドが特長
スタート前のブリーフィングでは、サロモンのマーケティングマネージャーを務める石田道寛さんが次のように説明します。
「トレイルランニング(以下、トレラン)は非常に自由なスポーツだと思っています。例えば、マラソンの大会に出場したとして、途中でつらくなっても歩くのは少々気まずいですよね。でもトレランは下りの気持ちいいエリア、平坦で走りやすそうなところなど選びながら走ったり、登ったりできるところがロードランニングより自由だなと」
景色を楽しんだり、写真を撮ったりピクニック感覚で今回は楽しんでほしいと言うのでした。ここで幾つかトレランを行う上での注意点も共有。
まずはマナーとして「登山者さんとすれ違う時は走らない」。そして「天候の変化に対応できる装備や水、補給食」、「万が一の怪我に備える救急セット」などの装具をそろえるべきだと石田さんは言います。
ランニングベストに初めて触れる
今回は、前述のトレラン用シューズ以外にランニングベストと携帯ボトル「フラスク」を用意してもらえました。
初心者の筆者ですから、すべて見るのも触るのも初めて。特にベストは非常に特徴的なプロダクトですね。
ベストとバックパックが一体化した形状で、一般的な登山用リュックやバックパックと比較し、「優れたフィット感」「安定感」が山道でも揺れにくい仕様となっています。ポリエステル素材でかなり軽い代物で、背負うと体にくっつくような感触。
「背負うというより、着る感覚のモデルです。特徴として、普通のバックアップより高い位置でフィットします。実は肋骨の上で収まります」(石田さん)
なぜ肋骨なのか。石田さんによると、運動で疲れたり発汗したりしても骨は形状が変化しない。つまり、どれだけ激しく動いても同じフィット感を維持してくれるそうです。
確かにバックパックが不安定だと体のバランスも取りづらいですから、体との一体感が変わらないのは大事ですね。
また、本モデルは背中のポケット(密室)の形状が逆三角形で、上部に重い荷物を収納する設計。
重いものが上にあることで、体の軸への影響が少なく、見た目以上に軽く感じるみたいです。
そしてシューズは「アッパーに傷つきにくく、優れた耐久性と通気性を備えた『Matryx』というメッシュ素材」、「どんな路面でもしっかり噛んでくれて安定性を出すアウトソール」などが特徴だと言います。
いずれもサロモンの最新技術が採用されているようなので、機能性は折り紙つきのようですね。
これらの装備を着用し、いよいよ高尾山へ入るのでした。
高尾山を駆ける
普段はインバウンドの観光客や登山を楽しむ人で混雑している高尾山ですが、雨と低めの気温もあり、人影はまばら。
そのため、普段は走らない稲荷山コースで山頂に向かい、帰りは1号路で下山する行程でした。
この原稿を書いている時はあっさりと記載していますが、正直、当日はめちゃめちゃきつかった。
やはりトレッドミルで走り慣れている筆者には、傾斜を登るのは普段使わない筋肉を行使するので大変でした。
ただ、常に走っている訳ではなく、歩く時間も入れて調整してもらえたので、大変だけど「もう無理」とはならなかったですね。
また、今回は15人前後の参加者と走りましたが、石田さんの言うところの「自由に走る状態」なので、自分のペースを維持できるのも良かったのでしょう。
途中の景色や雨が降ったことによる山の中の匂いみたいなものを味わえるなど、これはこれで楽しいな、というのが走っている最中の気持ちで、終わって原稿を書いている今もそれは変わりません。
強いて挙げると、キツイのが木の階段でしょう。
先導してくれた、ガイド役兼ランニングのコーチの方も「階段だと自分のペースではなく、階段に合わせる形となりますね」と指摘していました。
ハイキングで歩く際には非常に良いのでしょうが、トレランにはやりづらいと筆者も思いました。普段は登山する方向けのコースなので、これは仕方ないでしょうが。
ちなみにガイド兼コーチでは、「登りはなるべく省エネを意識します。足を前に大きく踏み出すと戻すためのエネルギーが必要になるので、体の下に足を落とすように走ると体力を長持ちさせることができます」とのこと。
普段のジムでのランニングも、体の下を意識した足運びをしているので、トレラン時も自然とできており、そこは良かったのだろうなと今振り返りと思います。
下りはあっという間に終わる
続いて頂上からの下りです。
1号路は薬王院に参拝するための表参道となり、登戸打って変わって石畳の参道、舗装された広い道路なので「トレイル=未舗装の自然歩道」とは違います。
登山道のような走りにくさは無いのですが、逆にそれが怖さにもつながります。
つまり、スピードがどんどん出るのですよ、走りやすいから。スキーのダウンヒルのように、トップスピードで駆け下りていく感じでした。
筆者は臆病なので、なるべく速度を上げないよう足にブレーキをかけながら走っていましたが、これは間違い。
「下り道で足にブレーキをかけると、それで筋肉をすごく使ってしまうので、下に落ちるように走る。その際、かかとから着地するとブレーキになるのと、もしスリップするとそのまま後ろに転倒するので危ないです。なるべく前足部で着地し、体が不安定な時にかかとを使うのが良いです」(ガイド兼コーチの方)
もし次にトレランする機会があるなら、心に刻んでおきたいポイントですね。
意外と楽しめた
こうしてトレラン体験は終了。インドア専用機の筆者にしては楽しく最後まで走れたなという感想です。
普段の走り方をトレランにもある程度応用できたこと、下りは急勾配でも石畳や舗装された道路だったことも幸いしたのでしょう。
逆に前後とも山道だと、そうとう難儀したのではないかなと推測します。
ただ全体として、走ったり、歩いたりとペース配分を調整するトレランのスタイルは良かったですね。
加えてシューズの機能性に助けられた部分もあるでしょう。
履いたシューズはオールマイティーに対応するモデルで、登りのぬかるんだ山道、小石や枝が露出する地面はもちろん、濡れた石畳と傾斜の強い舗装された道路でもまったく不安を感じず走れました。
人が少なかったこともあり、静かな山の中を一人黙々と走る時間は得難いもので、スノーボードで朝一番のリフトで登り、誰もいないゲレンデを何も気にせず滑走する感覚に近かったですね。
日本や海外のトレラン事情
最後に国内外のトレラン事情も少し聞いてみました。まず石田さんに、どんな人が始めているのか聞きました。
――ハイキングやトレッキングからトレランに挑戦、ロードランニングからトレラン、どちらのパターンが多いのでしょう。
石田さん: どちらかというとロードランニングから入る人が多く、年齢でいうと20代が多い印象です。これはトレンド的な面があり、新しい、格好いいというファッションの流れで始めるようです。もちろんベテランのランナーもいますよ。あと男性でいうと少し前のキャンブブームのように、ギア、道具好きの方が始めるという面もあるかもしれません。
続いて、ちょうど日本に初めて来たという、サロモン マーケティングディレクターのMarion Blache(マリオン・ブラーシュ)さんにも話を伺いました。
――日本では20代が多いと石田さんから聞きましたが、ヨーロッパやアメリカでトレランを楽しむ人の年齢層はいかがでしょう。
マリオンさん: 昔からあるスポーツなので若い方もいますが、40歳以上のランナーも多いですね。
――実際に走ってみて、何か違いを感じましたか。
マリオンさん: 日本とヨーロッパは地形で似ている部分があり、シングルトラックという比較的狭い道を走る印象を持ちました。逆にアメリカは道幅が広く、数多くのさまざまなランナーたちが思い思いに走っていると思います。
今回のコースでは、薬王院やその山門を通り抜けて走りました。
ヨーロッパでは教会のような建造物は街中にあり、トレランのコースには通常無いので驚いたし、貴重な経験だったとも話すマリオンさんでした。
日本に住んでいると、山の中や海辺などに寺社仏閣があるのは珍しくないですが、確かに海外では異なります。そういう点でも、日本でトレランを楽しめるのは貴重なことなのかもしれませんね。
今回を機に、筆者もトレランを始める気持ちが少しだけ出てきました!