――宮川さんの主戦場でもあるバラエティでも、新しい技術が開発されてきましたよね。最近は見られないですが、『イッテQ』の“キラキラ編集”(※)もその一つだったと思います。

(※)…ロケ中に思わず口から出てしまったものをキラキラに加工することで、映像ごとカットせずに面白さを残すことを可能にした編集

スタッフさんが、新しい自分を作ってくれるんですよ。自分で自分の面白さをアップデートするってなかなか難しいんで、“キラキラ”とか作ってもらえるのは、すごくありがたいですね。

――「アカーン!」とか「うまーい!」といったフレーズでエコーが入るのも、そうですね。

面白いなと思ってくれたら、それがどうやったら生きるやろと考えてくれてエコーも入れてくれたんですよね。

――お笑い界に目を向けると、新しい芸人さんが次々と世に出てきますが、そこでの技術の進化も感じますか?

それは感じますよね。1年目で、もう技術が高いなと思いますもん。僕らの頃なんて憧れで入ってきた素人でしたから、ほんまにプロになれんのか?って感じでしたけど、今の子は意識が高いから、もうネタが出来上がってる。僕らは5分くらいのコントやってたんですけど、その中のボケなんか10個もないくらい。振りがあってゆっくり進んで落とすみたいな作り方でしたけど、『M-1(グランプリ)』なんか見てたら5秒に1回はボケてますから。

もし、今の若い子らの書いたネタで僕にツッコミをやってくれって言われても、速すぎて無理やなと思います。僕なんてツッコミの言葉に魂を乗せたいんで、それをするにはボケの数が多すぎますから。

  • 宮川大輔

番組での立ち位置変化「自分が前に出なくても…」

――番組での博士のように、「先を越された!」と嫉妬を感じる相手はいらっしゃいますか?

やっぱりコンビ解散して1人になってからは、舞台に立つみんなには誰にも勝てへんと思いますよね。でも、この世界で長いことやってたら、ロケで何を言おうか、ディレクターさんが思ってることと一緒のことを頭に思い浮かべられるようになったというのがあります。それに、若い子らがゲストに来たら「こうやって持っていこう」「こうやってあげたらいいかな」とか考えるようになって、自分の役割が変わってきた感じもありますね。自分が前に出なくても、この子らが面白くなって有名になる手助けになれればって思うようになってきました。

――この前、ナインティナインさんを取材したら、『ぐるナイ』がスタートした時に吉本印天然素材のメンバーの人たちが悔しがっていたと振り返っていましたが、実際に宮川さんはいかがでしたか?

ムカついてましたね(笑)。でも、そうなるのは分かってたんです。あの2人というか特に岡村(隆史)はプロ意識が高くて、「行ったんぞ!」みたいな感じだったんで。僕らは18歳でワーキャー言われて、学校の延長みたいな感じでワーワーやってるのが楽しかったんで、プロ意識というのがあんまり芽生えてなかったんですよ。

――「先を越された!」とはまた違う感じですか。

越されるんじゃなくて、ずっと先を行ってるんですよね。

――とは言え、先ほどおっしゃっていたディレクターさんとの意思疎通というところを武器に持って、違うステージでのご活躍があると思います。この番組は日テレ日曜夕方の放送で、土曜の夕方に『青空レストラン』、日曜の夜に『イッテQ 』もあって、“週末の日テレに宮川大輔あり”といった感じです。

いやいや、そんなことないですけど(笑)、日テレさんにはお世話になってますね。

夢は「子どもの頃見てました」と言われる共演

――この番組では様々な技術者や研究者の方が登場しますが、そんな皆さんへ伝えたいことはありますか?

進化のスピードが昔より速くなってる気がして、本当にいつもすごいなって思ってます。その中に、皆さんの思いとか人間味とか、メッセージとかも乗っかってると思うんで、「こんなん作りたいけど、なかなかできないわ」と苦労されても、熱い思いで作り上げてほしいですね。それで、人間とか環境とかのいろいろな未来を助けていただきたいなと思います。

――新年度に入りましたが、この番組を見てそういった技術者・研究者を目指す人が増え、裾野を広げることにもなるのではと期待します。

「子どもの頃に『博士』見てて、出れました!」って言われたらうれしいですよね。今の博士の設定が何歳か分かんないですけど(笑)、白髪でお茶の水博士みたいになっても番組が続いていて、そういう人に出会いたいです。『イッテQ』とか他の番組でも、「子どもの頃見てて、一緒にお仕事できました」って感動して言ってくれると本当にうれしいんで、それぐらいの番組になりたいですよね。そのためには、1回1回の積み重ねだと思うので、スタッフさんと力合わせて、飽きないような番組を作っていかなあかんなと思います。

●宮川大輔
1972年生まれ、京都府出身。91年に星田英利と「チュッパチャップス」を結成し、お笑いユニット「吉本印天然素材」に参加。99年にコンビを解散すると、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)で注目を集め、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)では「お祭り男」として人気に。現在は『博士は今日も嫉妬する』『イッテQ』のほか、『満天☆青空レストラン』(日本テレビ)にレギュラー出演する。